お前らなんか好きになるわけないだろう

藍生らぱん

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第一章 賽は投げられた

010 回帰不能点 ~秋月大雅視点~

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★★注意★★
 流血表現があります。


*****

『痛い!』

いっちゃんの悲痛な叫び声に、ハッと我に返って手を離した。
『苦しい・・・やめて・・・』
苦しげに呻いて、どんどん顔色が悪くなっていく、いっちゃん。

助けなきゃ!

オレはいっちゃんの足にしがみ付いていた春くんを引き剥がし、次に右腕にしがみ付いていた朱夏ちゃんを引き剥がした。
いっちゃんの組の先生が首にしがみ付いている枢くんと、腰にしがみ付いている玄斗くんを引き剥がそうとしていたけれど、全然剥がれない。
「いっちゃんが死んじゃうよ!」
「誰か!」
「いっちゃんを助けて!」
いっちゃんの組の子たちが口々に泣き叫んでいた。
異変に気付いた他所の組の先生達もやって来て、何とか二人を引き剥がした。

枢くんと玄斗くんは牙を剥き出しにして、ふーふーって荒い息を吐いてた。
口に血がいっぱい付いていた。

いっちゃんの首とか肩とか、彼方此方に噛み付かれた跡がいっぱいあって、血だらけだった。

いっちゃんは救急車で病院に運ばれて、それ以来、幼稚舎に戻って来なかった。

オレ達五人は定期的に病院で様々な検査とカウンセリングというのを受けさせられた。

オレは、いっちゃんを護りたかった。

いっちゃんがオレ達のこと苦手なのは気付いていた。
それでも側にいたかった。

だって、いっちゃんはオレの「運命の番」だから。

初めていっちゃんと目が合った時に確信したんだ。
それなのに、いっちゃんはオレを番と認識してくれなかった。
おまけに枢くん達まで自分がいっちゃんの運命だと騒ぎ出した。
護りたかったのに、日に日に枢くん達の行動はエスカレートして、オレ達の目の前から、いっちゃんはいなくなってしまった。

俺達は、大人達を安心させるためにカウンセリングを上手くかわした。

五人で協力して、大人達の目を盗んで捜した。
協力し合うのは見つけるまで。

見つけた後は・・・

ヒトリジメニシテ、カクシテ、トジコメテ・・・


捜しても捜しても見つからなかったのに、突然、姿を表した。
岩永理事長に渡された外部新入生たちの身上書。
記憶の中にある『いっちゃん』と同じ色をもった三人の少年。
顔もそっくりで、本人か、その血縁者の可能性が大きいと思った。

入学式の日、三人を目にした途端、俺は絶望した。
いっちゃんじゃ無い、もう一人の「運命の番」の存在に。

でも同時に、身上書の小さな写真では気付けなかったホンモノを見つけることができた。

もう一人の運命を凌駕する唯一。

俺の、灰色の王子様・・・
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