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本編

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「こちらに、ドレスが」

「うわぁ!」
 
 シチリアに戻った私たちを待っていたのは、完成したドレスだった。隣にはルベリオス様用の服。

「ご両親が予定した夜会は明日・・でございます」

 すごいなぁすごいなぁと服を眺めていた私。しかし、その束の間の歓喜は不穏な言葉を告げた使用人さんによってぶち壊され。

「明日?」

「はい」

「明日なの?」

「はい」

「冗談でしょう?」

「いいえ?」

「アイリーン、諦めろ」

 そっとルベリオス様に抱き寄せられながら、私の心はナーバスになっていた。

「ローン様には会いたくないなぁ」

 辺境にも噂はやってくる。ローン様は私のせいで傷心になり、さまざまな女性と関係を持っていると。

 なぁにが傷心だ! とは思ったが、いや、ムカついたけど。

「うん、行くわ」

 とっちめないと気が済まなくなってきたわ。

 相手ができたら婚約破棄するってちゃぁんとこの耳で聞いた。
 よくよく考えてみれば、ルベリオス様がいるのに別の男と婚約しているのも嫌だ。

「そうだ! ルベリオス様、私に魔法をかけられますか?」

「できるがなぜだ?」

 未だに私をバカにする奴らをアッと驚かせてやろうと思ってね!

「くふふふふふ」

「アイリーン?」

「あ、すみません」

 変な笑いになっちゃった。でも、いきなり私が痩せたらみんなどんな反応をするんだろう?

「うふふふふ」

「どうしたのだ?」

「いえ、ちょっといいことを思いつきまして」

 こしょこしょと耳元で考えた計画を告げた私に、ルベリオス様の口角がだんだん上がっていった。

「それは面白いな」

「できますか?」

「あぁ、できるぞ」

「では!」

 ハイタッチをした私たちは明日に備えて早く眠りにつくことにした。

「うふふふふ……」

 楽しみで仕方がない。ローン様、首を洗って待っていてくださいね?

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