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第9話【ララの思いとセジュの想い、そして初めての街散策】

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「全く失礼しちゃうわ。私これでも200歳近いんだから幼女は無いと思うけど」

 街に出かけたララはセジュに不満を言いながら歩いていた。

「うん。そうですね。だけどララちゃん達ドラゴン族の平均寿命って何歳くらいかな?」

「大体だけど千年くらいかな」

「でしょ。なら200歳なら1/5くらいよね。
 この世界の人間の寿命は60歳くらいだから1/5だと12歳になるよね」

「だからララちゃんの人間年齢が10歳でもおかしくないと思わない?」

「その理屈だとそうかも知れないけど。こんな子供じゃあ何にも出来ないじゃないの」

 ララがふて腐れているのを見てセジュは微笑みながら伝えた。

「確かに子供では出来ない事も多いと思いますが子供でなければ出来ない事や子供だからこそ出来る事、楽しい事、嬉しい事も一杯あるのよ」

「私達精霊は生まれた時からその存在が無くなるまでずっと同じままなの」

「それは何百年かも知れないし、何千年かも知れない。
 ただ、マスターやご主人様が自分達の役目の終わりを告げた時がその時なの」

「普通の人間を主人に持つ精霊達は主人が亡くなった時に精霊界に戻るか、後継者に引き継いで人間界ここに残るかを選択するけど、私の場合は少し複雑でマスターはそれこそララちゃんが会った創造神様からスカウトされてこの世界にきたから本人が望まない限り私達精霊みたいに歳も取らないし、病気もしない」

「唯一、事故や怪我とかがあるけどどうやら命に関わるレベルの事態は安全装置が働くみたいだから結局は大丈夫らしいの。
 まあ、本人は試してみる勇気はないから自分から危険な事はしないと言っているのですけど……」

「つまり、今のマスターは創造神様へ頼んで契約解除しない限り、いわゆる【不老不死】と言う状態が永遠に続くのよ」

「!?不老不死・・・」

「だからマスターは街の人々と交流はしても家族にはならない、いえ、しないの。
 だって、その時はいいけど相手はどんどん歳を取っていくけど自分は全く老いないのよ。
 そんなのお互い耐えれないと思うの。
 そんな中で私達精霊はマスターと共に生きれる唯一の存在だったの」

「そんな時ララちゃんみたいに永遠ではなくとも千年といった長い時間共に過ごせる存在が現れたらマスターも嬉しくなって色々としてあげたいと思ったのよ。
 少し言動にデリカシーや配慮が足りない事もあるけど基本的には優しいマスターなんですよ。
 だからララちゃんもマスターと仲良くしてくれると私も嬉しいな」

 セジュはそう言うとそっとララの手をとって優しく微笑んだ。

「そ、そう言う事なら暫く居てあげてもいいわよ。
 ……どちらにしても仲間が見つからない限り私も独りぼっちなんだから……」

 ララは手は繋いだまま、プイとソッポを向いてボソッと呟いた。

 セジュは後の呟きには気がつかないふりをして声をかけた。

「マスターの話はこのくらいにして、買い物でもしてみませんか?」

「私、お金なんか持ってないわよ」

「大丈夫。さっき出かける時にマスターから預かってきたから心配しなくていいわよ」

 そう言いながらセジュはララの手を引いて市が立っている区画へ向かった。

   *   *   *

「いらっしゃい!ドムドムの串焼きどうだい?パルムの実入りパンもあるよ!
 錬魔士様れんましさま焼きは焼きたてが最高だよ!
 今女性に人気のタピカ入りドリンクなんかオススメだよ!」

 街の市場は活気に溢れていた。店には食べ物を売る店主の呼び込みの声が響いていた。
 他にも武具店、薬屋、雑貨屋、ギルド、酒場などララにとって見たことのない世界に戸惑いながらも目を輝かせていた。

「ララちゃん。何か気になる物はあるかな?」

「えっ!?私?どれも初めて見る物ばかりだから何がどうなのか分かんないよ」

 ララがそんな事を言っていると、店先から声がかかった。

「セジュさんじゃないですか、錬魔士様はお元気ですか?先週作って頂いた薬のおかげで足の状態も良くなってまたこうして店に立つことが出来るようになりましたよ」

「本当にありがとうございました」

 この街ではタクミの事はもちろんセジュ達精霊達のことも知らない人は居ない存在だった。

「今日は可愛いお連れ様がいらっしゃるようで、こちらのお嬢さんはお知り合いで?」

「ああ、ロイクさん元気になって何よりですと言いたいですが、私先日まであちらの世界に戻ってまして不在時の情報共有がまだなんです。
 薬はマスターが錬金されたのですね」

「おお、そう言えばお薬を頂いたのはミルフィさんでしたね。
 これは失礼しました。
 実は先週食材の仕入れの時に魔物に襲われて足をやってしまいまして、錬魔士様にお願いして傷薬を作成して頂きました」

「それは大変でしたね。大事がなくて何よりです」

「この娘はマスターのお知り合いの娘さんでララと言います。
 当面うちの工房に住み込みで錬金術の勉強をする事になりましたの。
 困っていたら助けてあげてくださいね」

「おう、もちろんですよ。
 錬魔士様の関係者を邪険に扱う不届き者はこの街にはいやしませんよ!
 私からも仲間内に話をしておきますね」

「お嬢ちゃんよろしくな。
 こいつは挨拶がわりだ是非食ってみてくれ!」

 そう言うと店主はドムドムの串焼きとタピカドリンクをふたりに差し出した。

「すみません。本当によろしいのですか?」

「いいって事よ!錬魔士様のおかげで自分だけじゃなく、この街の人々が笑って暮らせるんだからな」

 豪快に笑う店主にララは戸惑いながらお礼を言った。

「ありがとうおじさん」

「はは、いいって事よ。
 でも俺はこの間20歳になったばかりなんだから出来れば【お兄さん】と言って欲しかったな」

(私から見れば20歳なんて赤ん坊同然なんだけどセジュお姉さんの顔を潰す訳にはいかないよね)

「うん分かった!ありがとうお兄ちゃん!」

 ズキューン!!!

「おっおう!これもこれもこれもコイツも持って行ってくれ!!」

 結局ララは両手に持ちきれない程の食材を貰って帰る事になった。

(なるほど、これが子供にしか出来ない事なのね。
 この姿も以外と役に立つという事が分かったから、どんどん貢いでもらおうかな)

 少しの勘違いと黒い内面を覗かせながらニコニコと店主に手をふりながら工房に戻るララとそれを少し心配そうに見守るセジュだった。
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