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第24話【王女殿下への料理指導と国王陛下の思惑 その二】
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「ちょっと待ってください。一体どういう事か説明をして貰えますか?」
「お父様!それは今言うべき事ではなかったはずではありませんか?」
『ちょっと待て。国王陛下の言葉も爆弾発言だがメイシス王女殿下も否定しないのは何故だ?』
「えーと、メイシス王女殿下。今の国王陛下の言葉の意味は分かってるのですよね?」
メイシス王女は頬に手をあてて恥ずかしがりながらもはっきりと答えた。
「はい。もちろん分かっております。そもそも今回の件をお父様に進言したのは私ですので」
『ますます訳が分からなくなってきたぞ』
「ちょっと待ってください。メイシス様は第三王女殿下と言う立場ですよね?
普通王家に属する王女様は国内の有力上級貴族や他国の王族に嫁ぐことが殆んどですよね?
それを私みたいな貴族でもない平民に嫁ぐなどと許される事ではないと思いますが……」
「いや、錬魔士殿は一貫して叙爵を拒否してきたではないか。
普通あれだけの功績をした平民は国が叙爵して貴族となって貰ってるがお主が断るので無理を言わないでおっただけじゃが……」
「うっ。まあ確かにそんな事もあったかもしれないですが、私は貴族になるつもりはありませんので」
「それに、平民とはいえ錬魔士殿の名前をしらぬ国民は殆んど居ないくらいの知名度じゃから文句を言う者などいないはずじゃよ」
『やばい。雲行きがどんどん悪くなってきたような気がするぞ』
僕はどう切り返したらこの場面を切り抜けられるかを頭の中でシミュレーションしていった。
「分かりました」
「おお!それでは!」
僕の言葉に国王陛下が喜びの声をあげた。
「国王陛下。早とちりをしないでください。僕が「分かりました」と言ったのは「家庭教師を引き受ける」と言う事です。婚約に関してはお断りをさせて頂きたいと思います」
「なぜじゃ!?メイシスでは不満だと言うのか!?」
「国王陛下。メイシス王女殿下に不満があるとかではありません。
ただ、私はある理由から人と婚姻を結ぶ事が出来ません。
いえ、出来ないではなく、するつもりはありませんと言った方が良いかも知れません。
理由は言えませんが……」
「人と婚姻を結ぶことをするつもりがない……ですか?」
メイシス王女は泣きそうな表情で僕の顔を覗き込んできた。
「ええ。理由は言えませんし、言うつもりもありません。
もし、その理由が分かったならば絶対にそちらから断ってくるでしょうし、もしかしたら僕はこの国には居られなくなるかもしれませんから」
『そう。僕には人と婚姻を結ぶことは出来ない。
僕は神様からこの世界のテコ入れを頼まれて存在しているので歳をとらない。
今はいいかも知れないけれど10年、いや何年経っても外見が変わらない僕はやがて忌避の目で見られるか神の使いとされてしまい、この地には居られなくなるだろう。
そう、寿命が数十年の生身の人間と永遠に暮らす事は不可能なんだ。
可哀想だけど王女様には幸せになって欲しいから諦めてもらおう』
僕の言葉に国王陛下もメイシス王女殿下も言葉を失っていた。
「メイシス様。そう悲しそうな顔をしないでください。
明日より3ヶ月メイシス様が成人を迎えられる日までにあなたを錬魔士の弟子としてお披露目出来るレベルに引き上げてみせますので、それでご容赦ください。
それが今僕に出来る精一杯の譲歩です」
僕は国王陛下とメイシス王女殿下に丁寧に頭を下げた。
「時期尚早じゃったか?
すまぬメイシス。そして錬魔士殿。無理を言ってすまんかったの。
メイシスの求婚を断る者がおるとは思わなかった私の傲りが全てじゃ」
「いいえ、お父様。私が無理を言って憧れていた錬魔士様との婚姻を希望しなければ良かったのですわ。錬魔士様申し訳ありませんでした」
いきなりしおらしく謝られると凄い罪悪感が沸々とわいてきてしまう。
へこんだ僕を見てメイシス王女殿下が言葉巧みに追い討ちをかけてきた。
「錬魔士様。短い間ですが錬金術のご指導よろしくお願いします。
つきましては明日より錬魔士様の工房にお世話になりますので必要な物があればお知らせください。
着替えでもベッドでも何でも手配しますので、明日には準備しますので申し訳ありませんが一部屋開けておいてくださいね」
「はぁ!?ちょっちょっと待ってください!家庭教師は王宮でやるのではないのですか?」
「いえ、やはり錬魔士様のお弟子となるからにはキチンと工房で下働きから勉強するべきかと思います」
「いや、王女様に下働きとかさせられないですよ。それに王女様が街中に買い物とか無理でしょ?」
「いえ、外出には信頼できる精霊の皆様がいらっしゃるではないですか。それ以上の安全はありませんわ」
『ぐうの音も出ないや。ヤバい言い負かされそうだ。何とかならないか?』
「せ、精霊の皆にも聞いてみないと駄目だろう?な、なあミルフィもいきなり来ても大変だろう?」
「私はマスターの判断に任せます。特に不都合はありませんの」
「他の皆は?」
「ミルフィに同意見です」
「俺はかまわないぜ」
「マスター次第なのだ」
『ええっ!なんで皆反対してくれないんだ?後はララだけが頼みの綱だ』
「ら、ララはどうだ?いきなり来られたら大変だよな?」
「別にー。私の姉妹弟子になるんでしょ?楽しそうだしいいんじゃないの?」
『終わった……いや最後の砦が居た!』
「分かりました。部屋は開けておきます。国王陛下もそれで良いのですね?
大切な娘様を平民の私が預かっても良いのですね?
尾ひれのついた噂が出ても僕は責任取れませんよ?」
『どうだ!これで大逆転だろ!』
「良いぞ。ただ成人の宴の準備があるから一週間に一度は王宮に戻りなさい。錬魔士殿もそれでお願い出来るかの?」
『なにぃ!まさかの国王陛下の許可が出てしまった。一生の不覚』
「よろしくお願いしますね。錬魔士様」
メイシス王女殿下の満面の笑みで僕の完全敗北が決定した。
その後の講習の事はあまり覚えてない。
結局準備していたサプライズ料理どころではなくなった為にメイシス王女殿下の料理講習の時に作ることになり依頼は完了した。
一応ララとミルフィの指導は上手くいったらしく、ナリフさんとスプルスさんから感謝の言葉を貰っていた。
「お父様!それは今言うべき事ではなかったはずではありませんか?」
『ちょっと待て。国王陛下の言葉も爆弾発言だがメイシス王女殿下も否定しないのは何故だ?』
「えーと、メイシス王女殿下。今の国王陛下の言葉の意味は分かってるのですよね?」
メイシス王女は頬に手をあてて恥ずかしがりながらもはっきりと答えた。
「はい。もちろん分かっております。そもそも今回の件をお父様に進言したのは私ですので」
『ますます訳が分からなくなってきたぞ』
「ちょっと待ってください。メイシス様は第三王女殿下と言う立場ですよね?
普通王家に属する王女様は国内の有力上級貴族や他国の王族に嫁ぐことが殆んどですよね?
それを私みたいな貴族でもない平民に嫁ぐなどと許される事ではないと思いますが……」
「いや、錬魔士殿は一貫して叙爵を拒否してきたではないか。
普通あれだけの功績をした平民は国が叙爵して貴族となって貰ってるがお主が断るので無理を言わないでおっただけじゃが……」
「うっ。まあ確かにそんな事もあったかもしれないですが、私は貴族になるつもりはありませんので」
「それに、平民とはいえ錬魔士殿の名前をしらぬ国民は殆んど居ないくらいの知名度じゃから文句を言う者などいないはずじゃよ」
『やばい。雲行きがどんどん悪くなってきたような気がするぞ』
僕はどう切り返したらこの場面を切り抜けられるかを頭の中でシミュレーションしていった。
「分かりました」
「おお!それでは!」
僕の言葉に国王陛下が喜びの声をあげた。
「国王陛下。早とちりをしないでください。僕が「分かりました」と言ったのは「家庭教師を引き受ける」と言う事です。婚約に関してはお断りをさせて頂きたいと思います」
「なぜじゃ!?メイシスでは不満だと言うのか!?」
「国王陛下。メイシス王女殿下に不満があるとかではありません。
ただ、私はある理由から人と婚姻を結ぶ事が出来ません。
いえ、出来ないではなく、するつもりはありませんと言った方が良いかも知れません。
理由は言えませんが……」
「人と婚姻を結ぶことをするつもりがない……ですか?」
メイシス王女は泣きそうな表情で僕の顔を覗き込んできた。
「ええ。理由は言えませんし、言うつもりもありません。
もし、その理由が分かったならば絶対にそちらから断ってくるでしょうし、もしかしたら僕はこの国には居られなくなるかもしれませんから」
『そう。僕には人と婚姻を結ぶことは出来ない。
僕は神様からこの世界のテコ入れを頼まれて存在しているので歳をとらない。
今はいいかも知れないけれど10年、いや何年経っても外見が変わらない僕はやがて忌避の目で見られるか神の使いとされてしまい、この地には居られなくなるだろう。
そう、寿命が数十年の生身の人間と永遠に暮らす事は不可能なんだ。
可哀想だけど王女様には幸せになって欲しいから諦めてもらおう』
僕の言葉に国王陛下もメイシス王女殿下も言葉を失っていた。
「メイシス様。そう悲しそうな顔をしないでください。
明日より3ヶ月メイシス様が成人を迎えられる日までにあなたを錬魔士の弟子としてお披露目出来るレベルに引き上げてみせますので、それでご容赦ください。
それが今僕に出来る精一杯の譲歩です」
僕は国王陛下とメイシス王女殿下に丁寧に頭を下げた。
「時期尚早じゃったか?
すまぬメイシス。そして錬魔士殿。無理を言ってすまんかったの。
メイシスの求婚を断る者がおるとは思わなかった私の傲りが全てじゃ」
「いいえ、お父様。私が無理を言って憧れていた錬魔士様との婚姻を希望しなければ良かったのですわ。錬魔士様申し訳ありませんでした」
いきなりしおらしく謝られると凄い罪悪感が沸々とわいてきてしまう。
へこんだ僕を見てメイシス王女殿下が言葉巧みに追い討ちをかけてきた。
「錬魔士様。短い間ですが錬金術のご指導よろしくお願いします。
つきましては明日より錬魔士様の工房にお世話になりますので必要な物があればお知らせください。
着替えでもベッドでも何でも手配しますので、明日には準備しますので申し訳ありませんが一部屋開けておいてくださいね」
「はぁ!?ちょっちょっと待ってください!家庭教師は王宮でやるのではないのですか?」
「いえ、やはり錬魔士様のお弟子となるからにはキチンと工房で下働きから勉強するべきかと思います」
「いや、王女様に下働きとかさせられないですよ。それに王女様が街中に買い物とか無理でしょ?」
「いえ、外出には信頼できる精霊の皆様がいらっしゃるではないですか。それ以上の安全はありませんわ」
『ぐうの音も出ないや。ヤバい言い負かされそうだ。何とかならないか?』
「せ、精霊の皆にも聞いてみないと駄目だろう?な、なあミルフィもいきなり来ても大変だろう?」
「私はマスターの判断に任せます。特に不都合はありませんの」
「他の皆は?」
「ミルフィに同意見です」
「俺はかまわないぜ」
「マスター次第なのだ」
『ええっ!なんで皆反対してくれないんだ?後はララだけが頼みの綱だ』
「ら、ララはどうだ?いきなり来られたら大変だよな?」
「別にー。私の姉妹弟子になるんでしょ?楽しそうだしいいんじゃないの?」
『終わった……いや最後の砦が居た!』
「分かりました。部屋は開けておきます。国王陛下もそれで良いのですね?
大切な娘様を平民の私が預かっても良いのですね?
尾ひれのついた噂が出ても僕は責任取れませんよ?」
『どうだ!これで大逆転だろ!』
「良いぞ。ただ成人の宴の準備があるから一週間に一度は王宮に戻りなさい。錬魔士殿もそれでお願い出来るかの?」
『なにぃ!まさかの国王陛下の許可が出てしまった。一生の不覚』
「よろしくお願いしますね。錬魔士様」
メイシス王女殿下の満面の笑みで僕の完全敗北が決定した。
その後の講習の事はあまり覚えてない。
結局準備していたサプライズ料理どころではなくなった為にメイシス王女殿下の料理講習の時に作ることになり依頼は完了した。
一応ララとミルフィの指導は上手くいったらしく、ナリフさんとスプルスさんから感謝の言葉を貰っていた。
応援ありがとうございます!
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