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第48話【元勇者、新たな旅に出る】
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「まずはギルドに依頼の完了報告をしないといけませんね」
涙を拭いながらマリーがそう言って席を立つ。
「ああ、そうだな。これから行ってさっさと済ませてしまおうか」
俺も不安な気持ちを抑え込みながらそう言って立ち上がると「料理の支払いを頼みます」と言ってリリエルに会計をうながした。
「そうだね。そういったところはきちんとしておかないとね」
リリエルも同意をしてすぐに会計の計算をする。
「話し合いの時に出した物はアタシのおごりだからその前の食事代だけだよ」
「ではこれで支払いをしますのでお願いします」
俺は言われた金額をリリエルに渡すと「ごちそうさま」と言って頭をさげた。
「冒険者ギルドはここからならば歩いて行ったほうが早いから馬車は置いてお行き」
俺とマリーはリリエルにそう促されて店を出た。
――からんからん。
冒険者ギルドのドアを開けふたりで受付の窓口へと向かう。
「冒険者ギルドマイルーン王都本部へようこそ。本日のご用件を伺ってもよろしいでしょうか?」
受付では丁寧な言葉で受付嬢が案内をしてくれる。
「冒険者ギルドエンダーラ王国キロトン支部で受けた護衛の依頼完了報告です」
マリーはそう言って依頼書を受付へ提出する。
「なるほど、エンダーラからの護衛依頼ですね。他国からの場合、報酬は依頼者からの直接受け取りになることはご存知ですね」
「はい。ここに用意してあります」
マリーはそう言って報酬の全額入った袋をカウンターに置いた。
「マリーさん。報酬についてはもう精算済みの話だっただろう? これは君がこの1年間でする勉強に対して使うべきだと思うぞ」
「いえ、やはり報酬はきちんと受け取って頂かなければなりません。アルフさんこそこれから冒険者としてやっていくならば正当な報酬を受け取る癖をつけないと心配になってしまいますよ」
マリーは優しく笑うとそう言って報酬の袋を俺に押し付けた。
「分かった。ここで押し問答をしても無駄だろうし、ギルドにも迷惑をかけてしまうからな」
俺が素直に報酬を受け取ると受付嬢が書類にサインをしてこちらに向ける。
「報酬の受け渡しを確認しましたので完了報告書にギルドの確認済サインをさせて頂きましたのでこれで完了とします」
「ありがとうございます」
マリーは受付嬢にお礼を言って完了報告書を受け取った。
「預かっている荷物はどこに置けばいい?」
ギルドを出た俺たちはリリエルの食事処へ向かって歩きながらこれからの話をする。
「置いてもらえる量はしれているので商業ギルドで引き取ってもらおうと思っています。どうしても手放したくないものは預けておくしかないでしょうけど貸し倉庫なんて借りるのは無理ですから極力減らすしか無いですね」
マリーは仕方ないといった表情でそう答える。
「なら、この後で商業ギルドに向かうか? それとも馬車に出して持って行くか?」
「商業ギルドでアルフさんがマジックバックから荷物を山ほど取り出せば結構騒ぎになると思いますよ。そんなことも思いつかないようでは先が思いやられますよ」
本当は手間を考えれば俺が運び込むのが楽なんだろうが俺の迂闊さを指摘しながらもマリーは笑ってくれた。
◇◇◇
「さすがに多すぎるか?」
馬車の元に戻り目方の重いものから荷車に積み替えて乗せていくが思ったよりも多く預かっていたらしく全ては積みきれなかった。
「凄い量の荷物を預けてしまっていたんですね」
積み込まれた荷物を見あげながらマリーが言う。
「残りはどうする?」
「今は置く場所もないですのでこのまま預かってもらえないですか? いつでも良いので町に来た時に寄ってもらえれば引き取りますから」
「俺が持ち逃げするかもしれんぞ?」
「ふふっ。アルフさんはそんなことはしないと信じていますので大丈夫ですよ」
そう言って笑うマリーに「まいったな」と頭を掻きながら俺は「ならば遺跡の探索が済んだら見つけたお宝と一緒に持ってきてやるよ」と返した。
「わかりました。それで良いですよ」
笑うマリーの頭にぽんと軽く手を乗せて俺が言う。
「マリーさんとの旅は楽しかったよ。頑張ってな」
「こちらこそ、アルフさんにお願い出来て本当に良かったです」
頭に乗せた手をあげて俺は「じゃあまたな」と言って踵を返し冒険者ギルドへと向かう。
その後ろ姿をジッと焼き付けるように見るマリーはぽそりと呟いた。
「今度会うまでにはもっと成長しておきますからね」
その声は俺には届かなかったが満足そうな顔で俺が見えなくなるまで見つめていた。
涙を拭いながらマリーがそう言って席を立つ。
「ああ、そうだな。これから行ってさっさと済ませてしまおうか」
俺も不安な気持ちを抑え込みながらそう言って立ち上がると「料理の支払いを頼みます」と言ってリリエルに会計をうながした。
「そうだね。そういったところはきちんとしておかないとね」
リリエルも同意をしてすぐに会計の計算をする。
「話し合いの時に出した物はアタシのおごりだからその前の食事代だけだよ」
「ではこれで支払いをしますのでお願いします」
俺は言われた金額をリリエルに渡すと「ごちそうさま」と言って頭をさげた。
「冒険者ギルドはここからならば歩いて行ったほうが早いから馬車は置いてお行き」
俺とマリーはリリエルにそう促されて店を出た。
――からんからん。
冒険者ギルドのドアを開けふたりで受付の窓口へと向かう。
「冒険者ギルドマイルーン王都本部へようこそ。本日のご用件を伺ってもよろしいでしょうか?」
受付では丁寧な言葉で受付嬢が案内をしてくれる。
「冒険者ギルドエンダーラ王国キロトン支部で受けた護衛の依頼完了報告です」
マリーはそう言って依頼書を受付へ提出する。
「なるほど、エンダーラからの護衛依頼ですね。他国からの場合、報酬は依頼者からの直接受け取りになることはご存知ですね」
「はい。ここに用意してあります」
マリーはそう言って報酬の全額入った袋をカウンターに置いた。
「マリーさん。報酬についてはもう精算済みの話だっただろう? これは君がこの1年間でする勉強に対して使うべきだと思うぞ」
「いえ、やはり報酬はきちんと受け取って頂かなければなりません。アルフさんこそこれから冒険者としてやっていくならば正当な報酬を受け取る癖をつけないと心配になってしまいますよ」
マリーは優しく笑うとそう言って報酬の袋を俺に押し付けた。
「分かった。ここで押し問答をしても無駄だろうし、ギルドにも迷惑をかけてしまうからな」
俺が素直に報酬を受け取ると受付嬢が書類にサインをしてこちらに向ける。
「報酬の受け渡しを確認しましたので完了報告書にギルドの確認済サインをさせて頂きましたのでこれで完了とします」
「ありがとうございます」
マリーは受付嬢にお礼を言って完了報告書を受け取った。
「預かっている荷物はどこに置けばいい?」
ギルドを出た俺たちはリリエルの食事処へ向かって歩きながらこれからの話をする。
「置いてもらえる量はしれているので商業ギルドで引き取ってもらおうと思っています。どうしても手放したくないものは預けておくしかないでしょうけど貸し倉庫なんて借りるのは無理ですから極力減らすしか無いですね」
マリーは仕方ないといった表情でそう答える。
「なら、この後で商業ギルドに向かうか? それとも馬車に出して持って行くか?」
「商業ギルドでアルフさんがマジックバックから荷物を山ほど取り出せば結構騒ぎになると思いますよ。そんなことも思いつかないようでは先が思いやられますよ」
本当は手間を考えれば俺が運び込むのが楽なんだろうが俺の迂闊さを指摘しながらもマリーは笑ってくれた。
◇◇◇
「さすがに多すぎるか?」
馬車の元に戻り目方の重いものから荷車に積み替えて乗せていくが思ったよりも多く預かっていたらしく全ては積みきれなかった。
「凄い量の荷物を預けてしまっていたんですね」
積み込まれた荷物を見あげながらマリーが言う。
「残りはどうする?」
「今は置く場所もないですのでこのまま預かってもらえないですか? いつでも良いので町に来た時に寄ってもらえれば引き取りますから」
「俺が持ち逃げするかもしれんぞ?」
「ふふっ。アルフさんはそんなことはしないと信じていますので大丈夫ですよ」
そう言って笑うマリーに「まいったな」と頭を掻きながら俺は「ならば遺跡の探索が済んだら見つけたお宝と一緒に持ってきてやるよ」と返した。
「わかりました。それで良いですよ」
笑うマリーの頭にぽんと軽く手を乗せて俺が言う。
「マリーさんとの旅は楽しかったよ。頑張ってな」
「こちらこそ、アルフさんにお願い出来て本当に良かったです」
頭に乗せた手をあげて俺は「じゃあまたな」と言って踵を返し冒険者ギルドへと向かう。
その後ろ姿をジッと焼き付けるように見るマリーはぽそりと呟いた。
「今度会うまでにはもっと成長しておきますからね」
その声は俺には届かなかったが満足そうな顔で俺が見えなくなるまで見つめていた。
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