まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音

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ちゃんと「好き」だと伝えたい

1.「各務くんもすごいよね」

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 夏の暑さも本格的になり、八月に入れば大学生は長い夏休みになる。
 例に違わず各務かがみくんも約二か月夏休みとのことだった。実家に帰省するのかと聞けば元々冬にしか帰っていないとのこと。
 今年は短期でバイトを増やしたのと来年入る研究室の手伝いをするとかで、忙しさは普段と変わらないらしい。暇そうに見えて大学生って意外と忙しかったなと昔のことを思い出した。

 俺はと言えば夏休み分として有給休暇が3日貰えるだけである。うちの会社に一斉休暇はない。
 なので部署内で被らないように休みを取る。連休を取ってもすることもないので、九月の平日に休みを取って各務くんとデートをすることにした。

 ちなみに温泉旅行の後、俺と各務くんの関係が進展したかと言えばそんなことはなく、相変わらず親しい友人と言ってしまえるような距離感が続いている。

 夏休みにまた旅行に…と思わないでもなかったが、あの宣言があるので流石にすぐに誘うのははばかられた。
 一応、あの後俺なりに色々調べた。
 調べててまず思ったのが、各務くんはどちら側がいいのだろうか? ということだ。
 抱く側か? 抱かれる側か? 
 俺はどっちでもいいかなぁ、なんて思って想像してみたけど、それはなんだかちょっとイケナイことのような気がして思考を止めた。

 とりあえず男同士というのは未知の領域だったけど、嫌悪感はなかったのでホッとした。元々俺よりも各務くんのほうがそこは気にしてた気もするけど。

「……なに?」

 相変わらず週に一度のペースで俺たちは夕飯を共にする。
 今日はイベントスタッフのバイトで炎天下の中働いてきたという各務くんのために肉にした。とんかつである。と言ってもメインのとんかつは肉屋で揚げてあるやつを買ってきただけで、俺はキャベツとトマトを切ってご飯を炊いただけだ。
 何気に各務くんのほうが自炊はしっかりしている。口も目つきもお世辞にも良くないし、茶髪で耳にはいっぱいビアスがついてて、なんなら浅黒くなった肌も相まってどこからどう見てもやんちゃしてるようにしか見えないのに。人は見かけによらない。

「えっと、随分日焼けしたなって思って。痛くない?」

 なんとはなしに隣に座る各務くんを見ていた俺の視線が煩かったのか、目を細めて睨みつけてくる。

「べつに平気。あんたは変わらないな」
「会社の行き帰りしか外歩かないからね。この暑さの中、外で働く人を見ると尊敬するよ」
「ふーん」

 各務くんは興味無さそうに呟くと視線をとんかつに移す。尊敬してる人に各務くんも入ってるんだけど、多分これは伝わってない。

「各務くんもすごいよね、よく働くし。あ、コロッケも食べる?」

 なのできちんと名指しで褒めることにした。
 動揺したのかたまたまか、ポロリと各務くんの箸からトマトが皿に落ちる。

「……べつに普通だろ。ブラックで働いてたあんたに言われたくない。コロッケは食べる」
 
 動揺したらしい。
 日焼けした頬をちょっとだけ赤くしてぶっきらぼうに答える各務くんに思わずニコニコしながら、俺はコロッケの入った紙袋をキッチンから持ってきた。たんとお食べ。
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