すれ違い夫夫は発情期にしか素直になれない

和泉臨音

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番外編

デートに行こう


「今度の休みに一緒に出かけたいんだが、いいかな」
「外出ですか? はい、もちろんです」

 二人で朝食を取るようになり早一ヶ月。最初こそレオンは猫を被ってやや少食ぶっていたが、ユーグリッドに「食欲が無いのか?」と心配されたことで、日々の食事量が伝わっているのだと知った。
 バレているし心配させるくらいならとレオンは早々に猫の皮を脱ぎ捨て、現在はモリモリ朝食を食べている。

 そんな朝食の席で、清々しい朝の晴天よりも爽やかで眩しいユーグリッドが、その麗しい瞳を伏せがちにしてレオンに尋ねた。

(ああ、今日もユーグリッド様は素敵だな……新しいスーツもかっこいい)

 レオンは相変わらずユーグリッドを前にするとうっとりと見つめてしまう。
 ぼんやりするレオンの様子をユーグリッドは心配したが、見惚れてるだけだと説明されれぱ今まで以上に朝から気合を入れて身支度をするようになった。むしろ一日を通して一番気合が入っているのはレオンとの朝食時だと言ってもいい。
 まさかそんな変化があろうとはレオンは思っておらず、大好きな番を朝から惚れ惚れと見つめていた。

「ああ、どこか行きたいところはあるか?」
「? ご予定があるのでは??」

(一緒に行きたい場所があるから誘ったんじゃないのかな?)

 レオンはこてっと首を傾げる。
 その小鳥のような可愛らしい仕草に悶えそうになるのをユーグリッドは耐えながら、外出の趣旨を説明した。

「いや、用があるわけじゃないんだ。よく考えてみたらレオンと出かけたことがなかったなと思ってね」

 ユーグリッドはそう言うと優雅にカップを口に運んだ。
 仕事の付き合いや他家の晩餐などに二人で出かけたことは何度もある。だが、ただ二人で楽しむことを目的に出かけたことはなかった。

(これはもしかしてデートのお誘い?!!)

 正しくユーグリッドの誘いの意図を理解したレオンは、思わず頬を赤く染めた。
 本来であれば十代の学生時代にでもしていそうな会話である。

(えっと、どうしよう、どこがいいかな。本屋とか図書館とか……ううん、それだと仕事みたいだし、あ! 新しいガラス工房に瓶を見に行くって……それも仕事になっちゃう……)

 レオンは候補地を脳内で検索してみたが、自分の思いつくところはとてもユーグリッドを誘って行くようなロマンチックな場所でない。

「レオン」
「は、はい!」

 思わず思考の海に沈んでしまったレオンを、ユーグリッドは優しい声で救い上げる。

「私はレオンと一緒ならどこに行っても構わない。レオンが行きたいところならなおさらね。だからレオンの行きたいところに行こう」

 ふわりと微笑まれ、あまりの美しさに思わずレオンは顔を手で覆う。頬が熱くなるのがわかる。

(うう、ユーグリッド様の笑顔は反則だよ! 甘えたくなっちゃうじゃないか)

 たまには自分だってかっこよくビシッと決めたい。決めたいけど、優しい伴侶の笑顔におずおずとレオンは口を開く。

「……じゃあ、となり街の本屋とガラス工房に行きたいです」

 もっと景色のよい場所や恋人同士で行きそうなカフェなど選べればいいのかもしれないが、レオンの今までの生活とは無縁すぎて知識がなかった。
 そしてそれはユーグリッドもまた同じであった。

「ああ、それはいいね。探していた資料があったんだが隣まで行けば見つかるかもしれない」
「あ、それなら中央図書館と薬学館にも行きますか?」
「そうだな、せっかく足をのばすならまとめて……と、これでは仕事の用事と変わらないな」

 どこでもいいとは言ったものの、自ら仕事モードに入ってしまったユーグリッドが思わず苦笑する。
 そんなユーグリッドに、レオンはほわりと幸せ顔で微笑んだ。

「そんなことないです! 俺も大好きなユーグリッド様と一緒ならどこに行っても嬉しいし、資料集めも立派なデートです!」

 言ってから恥ずかしくなったのか、レオンはぷしゅーっと湯気を出しそうな勢いで真っ赤になりつつ、照れ隠しに食事を再開した。

「ありがとうレオン。週末がたのしみだね」
「はいっ!」

 二人は照れつつ微笑み合う。
 そんな仲睦まじい主人たちを見ていた使用人たちが、早急に流行りのデートスポットを調査したとレオンが知るのはその日の夕方であった。

 有能な使用人たちのお陰で、となり街で有名なレストランと並木道の情報を得た二人は、もちろん有効に活用し初デートを楽しんだのだった。
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