そして愛は突然に

志波 連

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 疲労困憊の宰相と近衛騎士隊長がいる部屋に、オースティンが駆け込んできた。

「お二人がほぼ同時に意識を取り戻しました!」

 二人は描きかけの書類を放り投げて駆け出す。
 その後をオースティンが追う。
 病室の前に詰めていたレモンが涙を流している。
 二人はまずアルバートの病室に駆け込んだ。

「アルバート!」

 ベッドに横たわったままではあったが、アルバートが少しだけ頬を緩めた。

「ただいま、兄上。叔父上もご心配かけました」

「ああ、本当に心配したよ。戻って来てくれてありがとう」

「ええ、少し遅くなりましたが戻ってきましたよ。シェリーは? 彼女も目覚めたのではないですか?」

「ああ、そう聞いている。まずはお前の顔を見てからと思ってね。今から行ってくるよ」

「僕も連れて行ってください。目覚めたらまずシェリーに言わなくちゃいけないことがあるんです」

 シュラインが医者の顔を見た。
 医者が首を横に振る。

「まだダメですよ、殿下。もう少し回復して体力をつけなくては」

「だったら彼女と同じ部屋に寝かせてくれないか? もう二度と離れ離れにはならないと誓いあったんだ」

 シュラインは不思議そうな顔をしたが、何度も頷いてから口を開いた。

「そうか、いつの間にそんな話をしたのかは知らないが……先生? 良いですよね?」

 医者が肩を竦めながら許可を出した。

「ここは狭いな……いっそ大きな部屋を用意するか? その準備が済むまでは二人とも回復に専念するんだ。どうだい?」

「わかりました。できればそのまま執務室にしたいので、そのつもりで準備を進めてください。僕とシェリーが一緒に使う執務室です。それと休憩用のベッドも大き目なのを入れてくださいね」

「二人の執務室? 王と王妃が同じ部屋で仕事をするのか?」

「その方が効率がいいでしょう?」

「シェリーは良いのか?」

「ええ、彼女も同意してくれました」

 シュラインが再び不思議そうな顔をした。

「まあ、お前がそう言うなら……うん、分かった。父上が使っていた執務室と休憩室の壁を抜いて広げよう。側近が詰めていた部屋を続き部屋に改装して休憩室にしようか。相当広いから快適だと思う」

「ええ、お願いします。内装に関しては兄上に任せますが、シェリーも使うのであまり殺風景な感じにはしないでくださいね」

 シュラインは肩を竦めて見せた。

「わかったよ。ではシェリーの所に行ってくる。お前は今は我慢するんだそ? その代わり様子を知らせてやるから」

「様子なら分かっています。僕たちはずっと一緒にいたんですから」

 アルバートの言葉の意味は解らなかったが、幸せそうな顔で微笑む弟を嬉しく思ったシュラインは、そのまま受け入れることにした。

「では叔父上、一緒に行きましょう」

「ああ、そうしよう。アルバート、また来るよ。しっかり養生するんだぞ」

「わかりました」

 二人の背中を見送ったアルバートは、看護メイドが差し出した薬湯を素直に飲んだ。
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