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第2章
92話 カイトの提案
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「殿下のお母上の救済のタイミングは…いかがなさいますか。」
「そうですね……」
そうして、アデリート国王との謁見を前に、ロレンツォ殿下の母君の救済の事で話し合っていた僕らは。
どうしようかと悩んでいた中、おずおずと手を上げて、カイトは提案して来た。
「…あのさ、その事なんだけどぉ……。もういっそ、謁見の時じゃ駄目かな?」
「謁見の時…ですか?そこで母だけを救済するとなると…」
自分の母だけに力を使うとなると、絶対的に目立ってしまう。
それは……と渋るロレンツォ殿下に、カイトは首を振る。
「違いますよ、そうじゃなくて。謁見の時に、その場にいる全員に救済の力を使うんですよ。そうすれば、誰は救われて、誰は救ってもらえなかった……って、不公平感は出ないと思うし。」
「あぁ、挨拶代わりにいっちょ、ぶちかますのね?」
とんでもない提案をするカイトに、すぐさまカレンが面白がる。
だが、僕も驚いたが、何より殿下が愕然としていた。
「そんな……謁見時となると、その場に居る事になるのは数十人単位になりますよ?!いくらなんでも無理があるのでは?」
兵士まで合わせれば、下手をすれば百人近くにもなりかねない。
そんな大人数を一遍になんて、いくらなんでも無茶苦茶過ぎる。
心配する殿下をよそに、カイトは隣のカレンを見やった。
「カレン、一度に最大何人いける?」
「んー、20~30人くらいなら、した事あるけどぉ…」
「おっしゃ、勝ったぁ!俺50人以上同時にした事あるもんねー!」
「うっそぉ!マジでぇ?!うーわ、それは試した事ない。あー、負けたぁ!」
カイトとカレンはまるで遊びの様に、同時救済の可能人数を競って話していた。
そのあまりの大人数に、僕は滅茶苦茶びっくりして。
それ以上に、ロレンツォ殿下も、隣のサフィルも、殿下の後ろを守っていたジーノも。
各々驚きを隠せないでいた。
「ほら~、カレンの方がこの世界の事情とか人間関係とか詳しいじゃーん。だから、俺は救済そのものの技術を磨こうとしたって訳。だから、訓練終わりの騎士さん達とか孤児院とか修道院とか。そういった人がある程度集まってる所で、1回最大何人まで能力使用が可能かとか、力の精度を高めるにはどうしたらいいかとか、色々試してたんだ。一度にいっぱい助けられるし、そしたら、救済ばっかに奔走せずに、もっといっぱい遊べるかと思って。」
シリルとね。
…と、カイトは付け足した。
その事に、僕はキョトンとする。
そう言えば。
学校が終わってから、前回はよく救済の為にあちこち回っている事が多かったカイトだが、今世では、一緒に馬車で下校する事も少なくなかった。
今回は姉のカレンもいるから、前回より負担が半分で済む様になったとはいえ、それでも、放課後外に出向かずに屋敷でリチャードやシャーロットと遊ぶ姿も度々見かけた。
…その様子に、僕が若干焦りを感じたのは内緒だが。
そんな僕の気も知らず、カイトは僕の姿を見つけては輪の中に引き入れ、よくボール遊びに参加させられたものだ。
だから、出向いている時は、ただ救済を施しているだけでなく、自身の能力の許容量や効果範囲を確認し、その力を正確に見定めていたとは、知らなかった。
彼も彼なりに、色々備えをしていたのか。
僕は感心した。
「だから、百人くらいなら……なんとかなるんじゃない?重病者が多いと力を削がれるから、反動が大きくなるかもだけど……。そもそも、王宮に参内できる程度に元気なら、そこまで力を削がれる事は無いと思うし。挨拶早々ぶちかませば、誰もとやかく言えないだろ?」
などと、とんでもない事をサラッと言ってのけて。
ロレンツォ殿下もサフィルも、護衛のジーノも、皆呆気にとられた顔をしていた。
「そうですね……」
そうして、アデリート国王との謁見を前に、ロレンツォ殿下の母君の救済の事で話し合っていた僕らは。
どうしようかと悩んでいた中、おずおずと手を上げて、カイトは提案して来た。
「…あのさ、その事なんだけどぉ……。もういっそ、謁見の時じゃ駄目かな?」
「謁見の時…ですか?そこで母だけを救済するとなると…」
自分の母だけに力を使うとなると、絶対的に目立ってしまう。
それは……と渋るロレンツォ殿下に、カイトは首を振る。
「違いますよ、そうじゃなくて。謁見の時に、その場にいる全員に救済の力を使うんですよ。そうすれば、誰は救われて、誰は救ってもらえなかった……って、不公平感は出ないと思うし。」
「あぁ、挨拶代わりにいっちょ、ぶちかますのね?」
とんでもない提案をするカイトに、すぐさまカレンが面白がる。
だが、僕も驚いたが、何より殿下が愕然としていた。
「そんな……謁見時となると、その場に居る事になるのは数十人単位になりますよ?!いくらなんでも無理があるのでは?」
兵士まで合わせれば、下手をすれば百人近くにもなりかねない。
そんな大人数を一遍になんて、いくらなんでも無茶苦茶過ぎる。
心配する殿下をよそに、カイトは隣のカレンを見やった。
「カレン、一度に最大何人いける?」
「んー、20~30人くらいなら、した事あるけどぉ…」
「おっしゃ、勝ったぁ!俺50人以上同時にした事あるもんねー!」
「うっそぉ!マジでぇ?!うーわ、それは試した事ない。あー、負けたぁ!」
カイトとカレンはまるで遊びの様に、同時救済の可能人数を競って話していた。
そのあまりの大人数に、僕は滅茶苦茶びっくりして。
それ以上に、ロレンツォ殿下も、隣のサフィルも、殿下の後ろを守っていたジーノも。
各々驚きを隠せないでいた。
「ほら~、カレンの方がこの世界の事情とか人間関係とか詳しいじゃーん。だから、俺は救済そのものの技術を磨こうとしたって訳。だから、訓練終わりの騎士さん達とか孤児院とか修道院とか。そういった人がある程度集まってる所で、1回最大何人まで能力使用が可能かとか、力の精度を高めるにはどうしたらいいかとか、色々試してたんだ。一度にいっぱい助けられるし、そしたら、救済ばっかに奔走せずに、もっといっぱい遊べるかと思って。」
シリルとね。
…と、カイトは付け足した。
その事に、僕はキョトンとする。
そう言えば。
学校が終わってから、前回はよく救済の為にあちこち回っている事が多かったカイトだが、今世では、一緒に馬車で下校する事も少なくなかった。
今回は姉のカレンもいるから、前回より負担が半分で済む様になったとはいえ、それでも、放課後外に出向かずに屋敷でリチャードやシャーロットと遊ぶ姿も度々見かけた。
…その様子に、僕が若干焦りを感じたのは内緒だが。
そんな僕の気も知らず、カイトは僕の姿を見つけては輪の中に引き入れ、よくボール遊びに参加させられたものだ。
だから、出向いている時は、ただ救済を施しているだけでなく、自身の能力の許容量や効果範囲を確認し、その力を正確に見定めていたとは、知らなかった。
彼も彼なりに、色々備えをしていたのか。
僕は感心した。
「だから、百人くらいなら……なんとかなるんじゃない?重病者が多いと力を削がれるから、反動が大きくなるかもだけど……。そもそも、王宮に参内できる程度に元気なら、そこまで力を削がれる事は無いと思うし。挨拶早々ぶちかませば、誰もとやかく言えないだろ?」
などと、とんでもない事をサラッと言ってのけて。
ロレンツォ殿下もサフィルも、護衛のジーノも、皆呆気にとられた顔をしていた。
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