全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第2章

102話 告白

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「……あの日、ロレンツォ殿下達が牢に来て。カイトと引き換えに僕を死罪から救ってやると言われたのを断って。殿下はかなりご立腹だった様だけど、ちょっとボコれば僕なんて直ぐに屈服出来ると踏んでいたんだ。けど、予想に反して折れなかった僕に対して。殿下は……別の手段に出た。」

前世の地下牢で、何度も床に転がされて。
あんな目に遭わされたのは、後にも先にも、一度きりだ。

「僕を凌辱……させたんだ、サフィルに命じて。」

……遂に白状してしまった。

口にするつもりは、無かったのに。
どうして言ってしまったんだろう。
僕は、愚かな自分の口を右手で押さえた。

「なん…ですって?」

それまで聖母の様な慈愛の笑みを浮かべていたカレンから、表情が抜け落ちた。
そのあまりの変わり様に、視線を彷徨わせると。
僕を見守っていたカイトとテオの視線とぶつかった。

「……それは本当なんですか…シリル様………」

なんとか言葉を発したテオは、顔面蒼白だった。

「…っ……シリルッ!」

対するカイトは激高していて。
バンッ!と間のテーブルを叩くと、立ち上がった。

「そんな……そんな事になってたなんてっ……!何で…何でっ!アイツに応じなかったんだっ?!そんな目にあってまでっ……何でだよっ」

凄く怒っていて。
そして、酷く傷付いた顔をして。
カイトは声を上げて泣き出した。

「うあぁぁ!…俺、俺っ最低だ!友達を傷付けた奴なんかをっ!……そうだよ!だって、シリル、アイツに酷い目に遭わされたって言ってたもん。それなのに…っ!俺が間違ってたっ」

なんて事だ。
自分の大切な友を最低最悪な形で傷付けた奴に、加担してしまった。
そして、無事に事が済んで良かったなんて、喜んで。
シリルの気持ちも知らずに。

カイトがそう、叫ぶ様に言い連ねた。
カレンはテオと同じく、顔面蒼白なまま固まっている。

僕は駄目だ。
直ぐに場の空気を悪化させてしまう。

「……泣かないでくれ、カイト…。別に良いんだ、あれは。あの時は、どうせもうすぐ死ぬのに、そんな手段を使うなんて馬鹿なんじゃないかって、殿下の頭を疑ったくらいだし。死を覚悟した奴相手に凌辱したって、何の意味も無いだろう?って。……でも、もし気分を悪くさせたなら、すまない。一度穢されてしまったが……ほ、ほら、今世はまだ…何ともないから…一応、さ。」

だから、気味悪がらないでくれると…嬉しいな。
また死に戻ってしまうとは、あの時はもう、想定すらしていなかったからさ。

僕は、言い訳の様につらつら答えて苦笑するが。
三人は全く笑ってくれなかった。
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