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第5章
175話 貴方だから
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「———はぁ!暑いっ」
まだ春の息吹は遠く、晩冬の寒空の中。
僕は綺麗に編み込まれた付け髪を乱雑に引っぺがした。
あんなに連続で踊ったのは初めてで。
色々疲れた僕は、会場を抜け出し、外の空気を吸いに来たのだった。
「その衣装で寒くないですか?」
僕のすぐ後ろを付いて来たサフィルが、少し心配そうに尋ねてくれたが。
「大丈夫です。踊りすぎて汗かいたくらいですから。」
フワリと風になびくスカートからスースーと風が入って来る感覚に戸惑いながら、僕は白い息を吐いた。
少し火照った頬に、この冬の澄んだ空気が今は心地良い。
頭上に目をやると、十六夜月が輝いている。
僕はまたほう~っと白い息を吐くと。
「わっ」
「ほら、やっぱり冷えてる。風邪をひいてしまいますよ。」
後ろから抱きしめて来たサフィルは、僕の冷たくなった体に触れると、そう言って自身の上着を脱いで、僕の肩にかけてくれる。
「あ、ありがとう。でも、それじゃサフィルが寒いでしょう。」
「大丈夫ですよ。貴方を抱きしめたら温かいので。」
そう笑って、今度は正面から抱きしめられた。
また顔を真っ赤にして、僕は身を固くしたが。
サフィルに抱きしめられる感覚が心地良くて、抱きしめ返す。
すると、僕の首元に顔を埋めていたサフィルは顔を上げて、僕の顔に近付いて来たから。
「?」
「これ以上は困ります。誰が見てるかもしれないのに。それに……この格好では嫌です。」
キスをしようと迫って来た彼の唇に、僕は自身の手を押し当てて拒んだ。
ただでさえ、いつ誰が来てもおかしくないのに、キスしようとするなんて。
ましてや、女性の格好をしている今のこの状態では勘弁して欲しい。
……だって。
「やっぱり女性の方が良かったですか?」
そう、悩まずにはいられなくなるから。
やっぱり、僕なんかより、女性の方が良いのではないかと。
不安に俯く僕に、サフィルは優しくそっと頬に触れて来た。
「いいえ。貴方だから良いんです。」
そう言って、ただただ嬉しそうに笑ってくれて。
…あぁ、好きだな。
って、改めて思った。
まだ春の息吹は遠く、晩冬の寒空の中。
僕は綺麗に編み込まれた付け髪を乱雑に引っぺがした。
あんなに連続で踊ったのは初めてで。
色々疲れた僕は、会場を抜け出し、外の空気を吸いに来たのだった。
「その衣装で寒くないですか?」
僕のすぐ後ろを付いて来たサフィルが、少し心配そうに尋ねてくれたが。
「大丈夫です。踊りすぎて汗かいたくらいですから。」
フワリと風になびくスカートからスースーと風が入って来る感覚に戸惑いながら、僕は白い息を吐いた。
少し火照った頬に、この冬の澄んだ空気が今は心地良い。
頭上に目をやると、十六夜月が輝いている。
僕はまたほう~っと白い息を吐くと。
「わっ」
「ほら、やっぱり冷えてる。風邪をひいてしまいますよ。」
後ろから抱きしめて来たサフィルは、僕の冷たくなった体に触れると、そう言って自身の上着を脱いで、僕の肩にかけてくれる。
「あ、ありがとう。でも、それじゃサフィルが寒いでしょう。」
「大丈夫ですよ。貴方を抱きしめたら温かいので。」
そう笑って、今度は正面から抱きしめられた。
また顔を真っ赤にして、僕は身を固くしたが。
サフィルに抱きしめられる感覚が心地良くて、抱きしめ返す。
すると、僕の首元に顔を埋めていたサフィルは顔を上げて、僕の顔に近付いて来たから。
「?」
「これ以上は困ります。誰が見てるかもしれないのに。それに……この格好では嫌です。」
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ただでさえ、いつ誰が来てもおかしくないのに、キスしようとするなんて。
ましてや、女性の格好をしている今のこの状態では勘弁して欲しい。
……だって。
「やっぱり女性の方が良かったですか?」
そう、悩まずにはいられなくなるから。
やっぱり、僕なんかより、女性の方が良いのではないかと。
不安に俯く僕に、サフィルは優しくそっと頬に触れて来た。
「いいえ。貴方だから良いんです。」
そう言って、ただただ嬉しそうに笑ってくれて。
…あぁ、好きだな。
って、改めて思った。
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