旦那様は今日も私を警護中〜聖人君子の裏の顔は愛に一途なヤンデレ系〜

白山小梅

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1 こんなところで何してるの?

1-7

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「だよね! あーあ、こんなことなら自分から別れるって言えばよかったな。初めての彼氏だったから、付き合い方も別れ方もよくわからなかったから……」
「えっ、付き合うのも初めてだったんですか? じゃあセックスだけじゃなくてキスも、全部その男が初めてなんですか? クソッ……その男、一度地獄に落とした方がいいですね」
「だ、ダメだよ! 気持ちは嬉しいけど、やっぱり合法的に行かないと」

 すると莉里架の言葉を聞いた葉介は突然吹き出し、大きな声で笑い始めた。

「そうですね、捕まったら元も子もないですから」

 その時、二人の間をひんやりとした冷たい風が吹き抜けていく。秋になり、近頃は昼と夜の寒暖差が大きく感じるようになっていた。

 カーディガンを羽織っただけの体が小さく震える。

「良かったら俺の部屋で飲み直しませんか? すぐそこなんです。生徒会長、まだ話し足りないと思いますし」

 莉里架の体が硬直した。付き合ってもいない男性の部屋に行くって、常識的にありなのかな……。でも学校の後輩だし、聖人君子って呼ばれていたし──それに彼の方が、再会したばかりの自分に興味を持つとは思えなかった。

 もしそんな雰囲気になったとして、彼氏にはフラれたし、そうなってはいけない理由はないのだ。

「いきなり異性の部屋に行くって、抵抗ありますか?」
「うん、少しだけ……」

 莉里架は少し考えてから、葉介を見つめる。やはりいつ見てもカッコいい。こんな素敵な人に話を聞いてもらえる機会なんて、これから訪れるとは思えない。

「じゃあ、こうしましょう」

 すると葉介は莉里架が持っていたビールの缶を取ると、上下に激しく振り始めたのだ。

「えっ、何してるの⁉︎」

 驚いて飛び上がった莉里架に、葉介はその缶を再び握らせる。

「はいっ、開けてください!」
「あ、開ける⁉︎」
「早く!」
「は、はいぃっ!」

 流されるまま缶を開けた瞬間、中から勢いよくビールが吹き出し、莉里架は全身ビールまみれになってしまう。

「ちょっとー! 一体なんなの⁉︎」

 動揺を隠せず、莉里架があたふたしていると、葉介は満面の笑みを浮かべた。

「ほら、これで俺の部屋に行く理由が出来ましたね。さっ、風邪を引いたら大変ですから、早く家に行きましょう」
 
 聖人君子じゃなかったの⁉︎ こんないたずらっ子な安東くん、知らないよー! ──莉里架は彼を上目遣いで見ると、照れたように頷く笑顔に胸がキュンとした。

 葉介は自分が着ていたジャケットを脱いで莉里架の肩にかける。

「あっ、汚れちゃうよっ」
「生徒会長がビールまみれになったのは俺の責任ですから。それに、ジャケットが汚れるより、あなたが風邪を引く方が耐えられません」
「……そ、そんな優しいこと言われたら、断れないよ」
「じゃあ決まりですね」

 莉里架が頷くと、葉介に手を握られ、坂道を下り始めた。
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