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後日談
その4
しおりを挟むそして同時並行で夏の暑さ対策をしたい。
「ということで李夏さま、至急建築士を呼んで夏の挨拶の時用の設計の相談をしたいんだけれど」
「手配いたします。打ち合わせは最速で来週後半あたりでしょうか」
「ええ……? そんなにのんびりしていたら夏が来ちゃうよ。もうちょっと早くならない?」
「何寝ぼけたことを言っているんです。本日、隣国からの使者たちが無事到着いたしました。これより一週間はその歓迎行事が続く予定なのはご存じですよね? 明日も朝から正装、昼前には隣国からの使者を皇帝陛下とお迎えになる予定です。その後は歓迎晩餐会。明後日はその使者と一緒に来た留学生との歓談の会と教育現場の視察、その次の日もあれこれがあって、それと同時に通常業務もございますので」
「……あー……はい、了解。なんだか最近とてものんびり本が読みたい気がするのよね……」
自由時間? なにそれ美味しいの?
「あと本日はこの後、周家当主との会談が予定されております」
「周家? 私と? 皇帝陛下ではなくて、私?」
「そうです。先ほど皇帝陛下からの指示で組み込まれました。周家からの陳情に対し、後宮のことは皇后に全て任せているからとこちらに丸投げに」
「あのやろう……」
自分の嫁の面倒くらい自分で……と言いたいところだが、そうですね、妃嬪の処遇や待遇も皇后のお仕事でした……。
後宮って、正妻が愛人の面倒も見ないといけないシステムだったよ。
まあ、前世の大昔も同じだったみたいだから、人間の業というやつでしょうか。
周桜花、つまり元周貴妃は、その母が皇帝に対して隠し事をした、つまりは反抗の態度を示したとかなんとかいう理由で、今は皇帝によって九嬪の一番下、充媛の位に下げられていた。
まあ裏事情を知る私たちにとってはそれでも死罪から救った形なので温情ともとれるのだけれど、何も知らない周皇太后の実家から見たら、不当な扱いをされたという不満があるのだろう。
一族から皇女が生まれ、その皇女が皇后になるだろうと思っていたら降格されて違う女が皇后になったとなると、心穏やかとはいなかいのかもしれない。
それに不祥事のために降格となると、もしかしたら医者という家業にも影響があるのかも?
いやあでも、その医者の知識を使って皇帝を毒殺した人がですね……。
あれが公になっていたら、あなたたちも一族郎党連座で死罪、今頃はもう息していませんよ。
とは言えないのがもどかしい。
でも、中には善良な人もいるかもしれないから、今さら一族郎党根絶やしというのもね……。
私はため息をついてから、しぶしぶ周家からの陳情を聞くために席を立ったのだった。
ああ、なんだか恋愛小説でも読んでのんびりしたい。
しかし実家筋がどんなにやんや言おうとも、元周貴妃、今の周充媛は今の私とは反対に、なんだかのびのびしているようなのが幸いというかなんというか。
母親からの諸々の重圧がなくなって、明らかに表情が明るくなったと思う。というより、表情豊かになった気がする。
しばらくは母親の喪に服していたようだけれど、今では少しずつ元通りの生活に戻りつつあり、最近は呉徳妃とも仲良くなったようでたまに一緒にお茶したりもしているらしい。
呉徳妃は私も誘ってくれるのだけれど、なにしろ私は忙しくて全然そのお茶会に参加できていないのが悲しいね。
ただ周充媛は少しは救われたみたいでよかったなと思っていたのだけれど。
「仮にもご自分の妹御に対して、あまりにも酷い扱いとは思われませんか。血の繋がった姉妹、しかも桜花は将来の皇后として育てられた正真正銘の皇女。まさかそのような方に対してこのような仕打ちをされるとは、それが庶民の、ああいえ、皇后陛下の流儀なのでしょうか?」
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