おっさん鍛冶屋の異世界探検記

モッチー

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17派閥争い

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この扉の向こうに何があるのですか?
心の中でつぶやいてみた。

「この先で公聴会をやってるのよ。彼女もここにいるわ」
それはいいとしてなんで倉庫の入り口みたいなボロい扉なんだ?
なんか騙されてそうだな~

そんな心を読み取られ微笑みながら扉を開けてくれた。
そこは豪華な調度品を並べた個室のような場所だった。
その部屋からさらに他に続く扉を開き、行き着いたところはコンサート会場みたいなところだった。
ここは個室の二階席のようだった。
上から見下ろしてみると様々な妖精達が種族別に並んでいた。

人の形の者や動物の形の者、透明の者や実体化した者まで多種多様な者達が集まっていた。
その中で幾つかの集団が存在した。
1つは力を誇示する戦士と思われる集団。
1つは弁の立つ人が集まったと思われる集団。
1つは権力を持ち指揮していると思われる集団。

その3つが主導して国王の政策に対する糾弾を行っているようだった。
戦士団は自分達主導で闇堕ちした者と戦わせろ。人種の協力はまだしも補佐は嫌だと。
弁論集団は妖精には妖精のやり方がある。人種のやり方を取り入れすぎては自分を見失う。
権力集団は国王の失脚が自分達の地位向上になる。
と三者三様言いたい放題である。

国王側も今までの実績と効果を説明しているが結局自分達の言い分を聞かせたい三集団とは平行線のままのようである。
しばらく眺めていてふと違和感を感じた。
なんとなく時間稼ぎをしているように感じた。
それに論戦に立ってくる者も台本を読んでいるような雰囲気を感じる…
そしてよくわからないが漠然とした気持ち悪さを感じた。

この気持ち悪さの原因を探るのに注視しているがなぜかわからない。
そっちに気を取られフェルを捜しているが見つからない。

フーペ様はここに居ると言っていたがそれらしき人物はいない。
居ると言われて来たがいないこれが違和感の正体なのか?

あら~気づいてないの~ってフーペ様また心読んでるな…
そうは言われても普段見慣れたフェルの姿は全然見えない。
ドレス姿の女性や宝塚みたいな男装の麗人は数人見かけるがフェルの雰囲気には程遠い。
本当にいるのか?
う~~ん、まったく見つけられない…
おかしいな~みんな着飾っているとは言えそんな極端には変わらないだろうしな。

みんな良いとこのお嬢様みたいな格好だしな~
こんな綺麗な人と知り合える機会なんてないんだろうな~
あの子の衣装なんて結構好みなんだけどな~
ホルターネックのロングドレスとかつい見ちゃうよね~

「うふふ。その子をよくご覧になって。」
良く見てって言われてもま~よくあるお姉さんのいるお店の人って感じで、お知り合いになりたい綺麗なお姉さんって感じです。
髪型も耳上から1束だけ編み込みながら後ろで束ねた感じで結構好きです。
顔も遠くて見にくいけどほんのり薄化粧くらいで綺麗系でありながら可愛げのある………何!?
もしかしてこれがフェルか!?
こいつこんなお嬢様みたいになっちまうのか~
女は化けるって言うけど本当だね~

おや?フェルが中央の台に立たされたぞ。何が始まるんだ?
…30分後…
なんだこいつらさっきから代わる代わる言いがかりばっかりつけやがって
俺のフェルが泣きそうじゃないか!
俺の?今俺はフェルの事を俺のって言った!?
確かに仲間として旅をして苦楽を共にしたけど、そんな横柄には考えてなかったはず…正確にはクーニャの管轄だし。
いつの間にか大切な存在になってたんだな~仲間として…

なんとか応援したいが俺が出ていける場ではないしな…クーニャに猫で近ずいてもらうか?
身内が近く居るだけでも心強いだろ。
どーせ覗いてんでしょフーペ様。何か他に方法ありますか?

「うふふ。楽しいわね~やはり連れてきて良かったわ。直接貴方があそこに行きましょう」
はひ!?
いやおかしいでしょう部外者の入るようなとこじゃないでしょう。

クーニャは猫になりフーペ様に抱きかかえられ、俺はフェルの隣に連れて行かれるのだった。
突然の乱入者に会場は騒然とするのかと思いきや、おそらくフーペ様の姿に皆沈黙していた。

そしてフェルの隣にきて思わず綺麗だねって言ってしまった。クーちゃんシャーって怒ってるよ。
フェルはそんな事も頭に入らず「女王様…」ってつぶやいてフーペ様に抱きついてますよ。
恥ずかしい~珍しい事言っときながら外してるよ。
俺もう帰りたい…

ちょっと待て…今フェルのやつなんてつぶやいた?今女王様って言わなかったか?
慌ててフーペ様を見る。
「うふふばれちゃった。」
え~この人お茶目な事言いながら女王様なの!?
いやそもそも国王いなかったか?夫婦なのか?
何が何だかわからないが…とにかく面倒くさい事に巻き込まれたのは確実なようだ。

だんだん妖精たちも状況を飲み込めたようでヒソヒソ話し声が聞こえ始めた。
そして3集団の質問者も乱れたペースを戻すべくフーペ様に質問と俺の事の説明を求めた。
あろう事かフェルの伴侶だから資格があるでしょうとか言っちゃうし困った人だ…
まー伴侶の方がいろいろ大義名分立つだろうししょうがないか…

そんなこんなで質問の的は俺に変わった。
人種なのもあって過激に口撃を始めてくれた。

だいたいフェルの時に聞いてた事しか言えないのかこの人達…
やっぱり時間稼ぎをしてるようにしか見えないな。
そうしたら煽って対決して有無を言わさず結果見せるか…
フーペ様。俺達と一緒に旅した4精霊って呼べますか?集めといてほしいんです。

チラッと後ろを見るとウィンクして合図を送ってくれた。
フェルにも協力頼まないといけないな。

まずはこの口だけのやつをターゲットにするか。
こいつは妖精の伝統を守りたくて排外主義的な事だったよな。

排外主義はどの種族も普通にある。ただ敵対的な種族が現れると自分達で対処出来れば良いが対処できなかった時は全滅しか残されていない。
万が一そのような事態が来た時に国民をそこから修練させて間に合いますか?
それであれば近隣の国に恩を売っておいていざという時に助けてもらえる味方を作っとくのは得ではないですか?
先のエルフの森でも普段は大した事ないモンスターが大量に来すぎてあわや全滅って時に常人国から傭兵が駆けつけ手を取り合い追い返す事が出来ました。
今先に力で妖精の助けを必要とする傭兵に先に恩を売れるのです。
万が一の時全員じゃなくても助けに来るものを確保出来てると考えられませんか?
全滅するような事態になればそこで妖精の伝統は終わってしまうのだから。

弁論集団は沈黙した。時間稼ぎの堂々めぐりしか話せない奴にはこれで十分だったようである。
ただちょっと失敗。他の2つの集団に警戒された。

次は戦士団かな戦うのが主の人達には実力の比較が1番かな?
フーペ様4精霊集めてくれたかな?後ろを向いて確認するとフーペ様ウィンクしてる。
大丈夫そうだな。
戦士団にはエルフの森の戦闘が興味ありそうだからそこから行くか。
ニードルワーム1匹は皆様余裕だと思います。これが1人で10匹だと苦労します。
1人で集団を相手にしないといけない場合、それなりに経験してないといざという時に動けません。
魔法使わず何匹倒せますか?逆に何回魔法打てますか?1発で倒せますか?

ここまで言うと苦虫つぶしたような顔してました。
ついでなんで権力集団にも対処法一緒にやります。

もし仮にここまですごい事できる人が居てその人を自分の所で雇えたら、その人の経験をみんなに教える事が可能になります。
そうなれば自分の所だけ生き残って他は全滅って事もあるかもしれません。
そのためには経験してる人を増やす。もしくは知っている人を増やせば何が起きても対処出来ます。
ですから他の種族の良いところは取り入れていけば良いんです。
その結果がこいつらです。

フェアリーズ登場
サラに火を出させシルの風で火力アップを見せる。おぉ~!歓声が上がった。

このように火だけでも良いですが風が力を貸すだけでこのようになります。
他の力を借りても自分のベースは変わらずに、いつもと同じ力をふるってこれだけのものが行えます。
これだけの力を出せるものが増えれば力を貸してくださいと頼られる事が増えると思いませんか?
またこれを研究して伝授していければ妖精の未来に不安などないのではないですか?

みんな真剣に考え始めた。
おや?あいつ何かおかしいな…悔しがってる?
何か危険な感じがする。もしやさっきの違和感の元凶か?そうなると避難させないといけないか?

フーペ様もしあの男が不穏な動きをするようであればフェルに連携魔法を指揮させてください。
くそっ!自分の武器がないから万全の体制が取れない。

なんとか気をそらして…いや力の披露で前に連れてくるか…

思い立ったら即行動。
フェアリーズが旅してどこまで強くなったかを見せるのに比較対象で数人選び気になるやつも前に来させた。
そして1番最初に好きな魔法披露してくれとお願いしたら…
「くそ~上手くいってたのに台無しにしやがって」
と叫び身体が黒く変色していった。
そうまるで闇堕ちしたみたいに。
その姿を見て会場は騒然となった。国王、女王の前に壁が出来、闇堕ち妖精を囲むように輪ができた。

そんな中俺は丸腰なのに正面に立っていた。
憎悪の対象は俺だから…

フェルとクーニャは女王の隣に居て動けない。頼れるのはフェアリーズだけ。
 これだけ妖精いると盛大なのも使えない。

こいつの装甲硬いと困るし…
ぶっつけ本番でフェアリーズにこっそり相談。

何か大層な演説してるが無視!
先制攻撃だまし討ち。まずはサラに目眩しで小型火炎球を目の前で爆発。
ノーミに土の槍を作らせ攻撃。
中は空洞にしといてもらったから中にシルの圧縮空気とディネに水も入れてもらって、激突と同時に空気解放。
後ろにいた人ごめんびしょ濡れにしちゃった。
闇堕ち君は…まだ生きてた。
ただ腹を貫かれ壁に貼り付けられ…
何やったかって?ペットボトルロケットですよ。
普通の攻撃だと弱いかと思って加速用に空気圧を解放して、すぐ空気抜けないように水を推進剤にしてね。

さてあとは任せてこの場を逃げようかな。面倒な事は嫌いです。
みんなのところに戻ろうと振り向くと何か飛んできた…

ドスン!ゴン!

盛大に頭を打ち意識を手放すのであった。
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