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ヤッちゃった……俺をこんな風にしたのは、おまえだよ。
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イチャイチャしてます、苦手な方はすっ飛ばしてください。
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俺はいつも押し倒されてばっかりだな、と緊張する体を裏切って、頭の片すみの冷静な部分でひとりごちる。
自分から望んでしたいと思ったことが少ないんだから当然か。
唯一の例外が目の前にいるこいつだ。
どうしてこいつだけは平気なんだろうな。
「こうしても……嫌じゃない? キュカ」
「……大丈夫、です」
ベッドに押し倒した俺に覆いかぶさる状態になったハイヤスが、俺の顔の横に手をついて体を支えながら聞いてくる。
もう一方の手が頬から耳の後ろへ、ゆっくり動いていく。
不快に感じるどころか、触れる温度が心に沁みわたる気さえする。
乾いていた喉が潤されるように、心地よいぬくもりに体が弛緩していく。
追手から逃れた後にハイヤスが言った通り、俺は気持ち良くなることに飢えていたのかもしれない。
「あっ、ハイヤス……っ」
解けたままだった胸元から手を入れて、素肌を撫でられて腰が揺れた。
ただ胸を撫でられただけなのに。
耳元でくすり、とハイヤスが笑ったのがわかって、俺の体温が一気に上昇する。
反応しすぎていることに気づかれたことが恥ずかしかった。
「やめ、ませんか……私は少し、おかしい」
たっぷり眠って、少しだけど温かい食事ができた。体もきれいに洗われて、最後に残った欲求が満たされたいと騒ぎだしたのかもしれない。
ハイヤスの体温を、もっと近くで感じたくてたまらない。
俺いつの間にこんなに淫乱になっちゃったんだろ。
「キュカはおかしくないよ。好きな人と抱き合っているんだから、気持ち良くなっていい。それに……」
言葉を切ったハイヤスが口にキスをしてきた。
いままでの触れるだけとは違う、舌を入れてくる本格的なキスだった。
「……ん、っぅ……ふ、ぅ……」
舌を絡ませたり、歯列を撫でる。下腹部に熱が溜まるような濃厚なキスに、頭の奥が痺れていく。
苦しいくらいに気持ち良くて、気がついたら俺も積極的に舌を絡ませていた。
「あ……っ、ン……」
ハイヤスが顔を離して、お互いの口の間に唾液が糸を引いた。
そうなっても俺の頭の中は真っ白で、ただぼうっと糸の先を見つめていた。
体が火照って、気持ち良くなることしか考えられなくなっていた。
そんな俺を見つめて、優しく微笑んだハイヤスが今度は軽く、唇の表面を啄んだ。
「……感じてる時のキュカは、とてもきれいだよ。色っぽくて、艶めいてて……普段の清楚な雰囲気を知っているから、その違いがさらにそそるね」
とか何とか言いながら、服の裾を掴んだハイヤスの手によって、一気に脱がされた。
頭と両腕を引き抜いて、俺の服をさっさとベッドから放り投げたハイヤスも、上着を脱いだ。
傷跡の残る引き締まった上半身は、男性憧れの見事な逆三角形で均整がとれてる。
そのしなやかな肉食動物みたいな筋肉が動いて、俺に近づくとまた口を重ねてきた。
キスをしたまま、さらに体を押し付けてくる。仰向けになってハイヤスの舌を追い求めていたら、足の間に下半身を割りこませ、腰をぐっと押しつけられた。
「ふっ、……あっ」
「好きだよ、キュカ」
キスだけで立ち上がりかけていた俺のものを、まるで揉むようにハイヤスが小刻みに押し付けた腰を動かす。
熱く囁いたかと思えば、すぐにキスで口を封じて、舌と腰で俺を蕩けさせる。
「いやっ……ぁ、んっ……あっ」
舌と腰を忙しなく動かしながら、ハイヤスは手も動員させてきた。
脇腹から首元へ撫で上げられ、声が知らぬ間に飛び出していく。
何て声出してんだろ、自分で聞いててもエロいなって思う。
頼むから耳ふさいでて、だれもこの声を聞かないで。
「キュカ……好きだ、キュカ……」
ばっちり声を聞いてるハイヤスは熱く囁き、腰を押しつけ揺らしてくる。
手で体の形を確かめるみたいに撫でて、エロすぎる俺の声を飲みこむようにキスをしてきた。
まるで体中に想いをぶつけられているようだった。注がれる想いが、俺の体の奥底から熱を上げて、脳味噌を溶かしてしまったみたい。
思考回路は開店休業中、たったひとつ真面目に働いてんのは快楽を感じる回路だけだろう。
片手で俺の左胸の突起を揉みながら、キスを中断してハイヤスが聞いてくる。
「……気持ちいい?」
「ん……」
「ねぇ、教えてよ……僕の手で、感じてくれてる?」
恥ずかしいこと聞いてくるなよ、と突き放してやりたいところだったけど。
「あぁっ、……んっ!」
突起を指先でぎゅっと摘まむと同時に、一際大きく腰を揺らされて、擦れた性器と胸の鋭い痛みに似た快楽とで、目の前に火花が散るほど感じてしまった。
「もっと感じて……乱れて見せて」
熱に浮かされているのは俺だけじゃないらしい。
ぎゅっと抱きしめて、耳元で囁いてくるハイヤスの声からも余裕が消えて、代わりに切羽詰まった熱がこもっていた。
布越しだけどお互いのもので擦り合っていたそこは、すっかり形を変えて天井を向いてそそり立っている。たぶんズボンの中でハイヤスのものも姿を変えている。
はじめよりも硬く、熱くなっていたハイヤスの腰が離れて、刺激を失ったことが不満のように震える性器は、暗くなってきた室内にいてもわかるほどに濡れていた。
「、あぁっ! だ、だめ……触らない、でっ」
ハイヤスがためらいもなくそれに触れて、握りこんで扱きはじめたのだ。
あられもなく声を上げて、身を捩って感じまくる俺を片腕で抱きしめて、ハイヤスがキスを再開する。
「いやっ、いやぁ……っ、ああっ」
息を乱して、腰を揺らしながら、俺はハイヤスに抱きついた。
そうしていないと、どこかに吹き飛ばされてしまいそうなほど、全身が昂ぶってわけがわからなくなっていた。
「いいよ、もっと感じて……貴幸」
「っ!!」
脳天に雷が落っこちたみたいな衝撃だった。
いきなり、ハイヤスが俺の名前を呼んだんだ。
紛れもない物心ついてからこっちに来るまで、慣れ親しんだ俺の日本語名を。
「な、何で……?」
感じすぎて涙が滲む目を凝らして、ハイヤスを見上げると、奴は上気した顔で微笑んだ。
「あいつらに神子のことを聞いた時に、ね」
「…………」
そう言えばユーザは初対面から流暢に俺の名前を呼んでくれていた。彼らに習ったのなら、ほぼ日本語と変わらない発音で呼べるのも納得できるけども。
正直、余計な入れ知恵をしてくれたな……と恨みに感じなくもない。
なぜなら。
「貴幸、好きだよ」
抱きしめられて、性器を弄られながら名前を呼ばれたとたん、これまで感じたことのない快楽の波に襲われて、あっという間に昇天してハイヤスの手に白濁をぶちまけてしまったからだ。
あぁ、俺は何てことを……。
熱を吐き出し、少しだけ冷静さを取り戻した思考回路の中でぼんやり思う。
はじめてハイヤスとヤッた時もそうだったけど、俺はどうしてこうも堪え性がないんだか。
自分では真面目なつもりだったのに。それとも神子もどきになったせいなのか?
気持ち良くなると、他に何も考えられなくなって、それだけを追い求めてしまう。
こんなザマでは皇帝に抱かれても、全然気持ち良くなかったよ、と言ったところで信じてもらえないだろうな。
「ハ、イヤス……あの……」
片手を白く濡らして、俺を見下ろしたハイヤスはふわりと笑った。
俺の額にちゅっとキスをして、
「大丈夫、わかってる。貴幸が気持ち良くなれるのは、僕とだけだってね」
甘く楽しげに囁くと、濡れていない手で俺を抱きしめた。
「……うぅっ……」
それはそれで恥ずかしいので認めたくないのですが、いまさら隠しようもない。
怪我したハイヤスを癒すために体を繋げた後、俺はさんざんハイヤスに抱かれて、感じまくった前科があるのだ。
恥ずかしい姿ばかり、こいつには見られている気がする。
どうしてだろうな、必死に取り繕って、自分の足で立とうとしてるのに、ハイヤスの前に立つと時々それらがこぼれ落ちてしまうのは。
見知らぬ土地に来て、嫌な思いをたくさん味わった。
騎士団の仲間たちは優しい。俺はひとりだと思っちゃいない。
だけど疎外感はどうしても残る。
だれも異世界を知らない。同じ力や体質を持っていない。
騎士団員としては限りなく失格に近い体格と能力、その自覚もある。
俺は俺を、自分ひとりで支えなくてはけない。
ただでさえ役立たずなのだから、辛くてもだれかに頼ってはいけない。
裏切られたせいもあって、俺は心のどこかでずっとそう感じていたんだろう。
それを突き崩したのがハイヤスだった。
怪我を癒すために仕方なくヤッたんだ。そう言った俺の正体を、何となく勘付いていた様子なのに言わず、その後も欲望を吐き出すだけの対象としてではなく、ちゃんと俺自身を抱いてくれた。
そう、たぶんあの時に俺の思いこみにひびが入ったんだろうな。
俺も両腕を伸ばして、ハイヤスに抱きついた。
「こんなこと、したいと思うのは、あなただけです」
夕暮れの湖で起きた、忌々しい事件の記憶があるから。
優しかった爺さまを知って、そのどれとも違うハイヤスの腕のぬくもりに気づくことができた。
抱きついた俺の後頭部を、汚れていない方の手でハイヤスがそっと撫でる。
目を閉じてその感触を味わう。優しくて温かいその手は、いつか見た苦しい夢の最後に感じた手と同じだと思った。
熱を吐き出したはずの体の奥が、またじんわり熱さを増していく。
「ハイヤスが好きです。抱かれるのなら、あなただけがいい」
俺をこんな風にした責任を取ってくれよな。
心の中で悔し紛れの八つ当たりをしながら、俺からハイヤスにキスをした。
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俺はいつも押し倒されてばっかりだな、と緊張する体を裏切って、頭の片すみの冷静な部分でひとりごちる。
自分から望んでしたいと思ったことが少ないんだから当然か。
唯一の例外が目の前にいるこいつだ。
どうしてこいつだけは平気なんだろうな。
「こうしても……嫌じゃない? キュカ」
「……大丈夫、です」
ベッドに押し倒した俺に覆いかぶさる状態になったハイヤスが、俺の顔の横に手をついて体を支えながら聞いてくる。
もう一方の手が頬から耳の後ろへ、ゆっくり動いていく。
不快に感じるどころか、触れる温度が心に沁みわたる気さえする。
乾いていた喉が潤されるように、心地よいぬくもりに体が弛緩していく。
追手から逃れた後にハイヤスが言った通り、俺は気持ち良くなることに飢えていたのかもしれない。
「あっ、ハイヤス……っ」
解けたままだった胸元から手を入れて、素肌を撫でられて腰が揺れた。
ただ胸を撫でられただけなのに。
耳元でくすり、とハイヤスが笑ったのがわかって、俺の体温が一気に上昇する。
反応しすぎていることに気づかれたことが恥ずかしかった。
「やめ、ませんか……私は少し、おかしい」
たっぷり眠って、少しだけど温かい食事ができた。体もきれいに洗われて、最後に残った欲求が満たされたいと騒ぎだしたのかもしれない。
ハイヤスの体温を、もっと近くで感じたくてたまらない。
俺いつの間にこんなに淫乱になっちゃったんだろ。
「キュカはおかしくないよ。好きな人と抱き合っているんだから、気持ち良くなっていい。それに……」
言葉を切ったハイヤスが口にキスをしてきた。
いままでの触れるだけとは違う、舌を入れてくる本格的なキスだった。
「……ん、っぅ……ふ、ぅ……」
舌を絡ませたり、歯列を撫でる。下腹部に熱が溜まるような濃厚なキスに、頭の奥が痺れていく。
苦しいくらいに気持ち良くて、気がついたら俺も積極的に舌を絡ませていた。
「あ……っ、ン……」
ハイヤスが顔を離して、お互いの口の間に唾液が糸を引いた。
そうなっても俺の頭の中は真っ白で、ただぼうっと糸の先を見つめていた。
体が火照って、気持ち良くなることしか考えられなくなっていた。
そんな俺を見つめて、優しく微笑んだハイヤスが今度は軽く、唇の表面を啄んだ。
「……感じてる時のキュカは、とてもきれいだよ。色っぽくて、艶めいてて……普段の清楚な雰囲気を知っているから、その違いがさらにそそるね」
とか何とか言いながら、服の裾を掴んだハイヤスの手によって、一気に脱がされた。
頭と両腕を引き抜いて、俺の服をさっさとベッドから放り投げたハイヤスも、上着を脱いだ。
傷跡の残る引き締まった上半身は、男性憧れの見事な逆三角形で均整がとれてる。
そのしなやかな肉食動物みたいな筋肉が動いて、俺に近づくとまた口を重ねてきた。
キスをしたまま、さらに体を押し付けてくる。仰向けになってハイヤスの舌を追い求めていたら、足の間に下半身を割りこませ、腰をぐっと押しつけられた。
「ふっ、……あっ」
「好きだよ、キュカ」
キスだけで立ち上がりかけていた俺のものを、まるで揉むようにハイヤスが小刻みに押し付けた腰を動かす。
熱く囁いたかと思えば、すぐにキスで口を封じて、舌と腰で俺を蕩けさせる。
「いやっ……ぁ、んっ……あっ」
舌と腰を忙しなく動かしながら、ハイヤスは手も動員させてきた。
脇腹から首元へ撫で上げられ、声が知らぬ間に飛び出していく。
何て声出してんだろ、自分で聞いててもエロいなって思う。
頼むから耳ふさいでて、だれもこの声を聞かないで。
「キュカ……好きだ、キュカ……」
ばっちり声を聞いてるハイヤスは熱く囁き、腰を押しつけ揺らしてくる。
手で体の形を確かめるみたいに撫でて、エロすぎる俺の声を飲みこむようにキスをしてきた。
まるで体中に想いをぶつけられているようだった。注がれる想いが、俺の体の奥底から熱を上げて、脳味噌を溶かしてしまったみたい。
思考回路は開店休業中、たったひとつ真面目に働いてんのは快楽を感じる回路だけだろう。
片手で俺の左胸の突起を揉みながら、キスを中断してハイヤスが聞いてくる。
「……気持ちいい?」
「ん……」
「ねぇ、教えてよ……僕の手で、感じてくれてる?」
恥ずかしいこと聞いてくるなよ、と突き放してやりたいところだったけど。
「あぁっ、……んっ!」
突起を指先でぎゅっと摘まむと同時に、一際大きく腰を揺らされて、擦れた性器と胸の鋭い痛みに似た快楽とで、目の前に火花が散るほど感じてしまった。
「もっと感じて……乱れて見せて」
熱に浮かされているのは俺だけじゃないらしい。
ぎゅっと抱きしめて、耳元で囁いてくるハイヤスの声からも余裕が消えて、代わりに切羽詰まった熱がこもっていた。
布越しだけどお互いのもので擦り合っていたそこは、すっかり形を変えて天井を向いてそそり立っている。たぶんズボンの中でハイヤスのものも姿を変えている。
はじめよりも硬く、熱くなっていたハイヤスの腰が離れて、刺激を失ったことが不満のように震える性器は、暗くなってきた室内にいてもわかるほどに濡れていた。
「、あぁっ! だ、だめ……触らない、でっ」
ハイヤスがためらいもなくそれに触れて、握りこんで扱きはじめたのだ。
あられもなく声を上げて、身を捩って感じまくる俺を片腕で抱きしめて、ハイヤスがキスを再開する。
「いやっ、いやぁ……っ、ああっ」
息を乱して、腰を揺らしながら、俺はハイヤスに抱きついた。
そうしていないと、どこかに吹き飛ばされてしまいそうなほど、全身が昂ぶってわけがわからなくなっていた。
「いいよ、もっと感じて……貴幸」
「っ!!」
脳天に雷が落っこちたみたいな衝撃だった。
いきなり、ハイヤスが俺の名前を呼んだんだ。
紛れもない物心ついてからこっちに来るまで、慣れ親しんだ俺の日本語名を。
「な、何で……?」
感じすぎて涙が滲む目を凝らして、ハイヤスを見上げると、奴は上気した顔で微笑んだ。
「あいつらに神子のことを聞いた時に、ね」
「…………」
そう言えばユーザは初対面から流暢に俺の名前を呼んでくれていた。彼らに習ったのなら、ほぼ日本語と変わらない発音で呼べるのも納得できるけども。
正直、余計な入れ知恵をしてくれたな……と恨みに感じなくもない。
なぜなら。
「貴幸、好きだよ」
抱きしめられて、性器を弄られながら名前を呼ばれたとたん、これまで感じたことのない快楽の波に襲われて、あっという間に昇天してハイヤスの手に白濁をぶちまけてしまったからだ。
あぁ、俺は何てことを……。
熱を吐き出し、少しだけ冷静さを取り戻した思考回路の中でぼんやり思う。
はじめてハイヤスとヤッた時もそうだったけど、俺はどうしてこうも堪え性がないんだか。
自分では真面目なつもりだったのに。それとも神子もどきになったせいなのか?
気持ち良くなると、他に何も考えられなくなって、それだけを追い求めてしまう。
こんなザマでは皇帝に抱かれても、全然気持ち良くなかったよ、と言ったところで信じてもらえないだろうな。
「ハ、イヤス……あの……」
片手を白く濡らして、俺を見下ろしたハイヤスはふわりと笑った。
俺の額にちゅっとキスをして、
「大丈夫、わかってる。貴幸が気持ち良くなれるのは、僕とだけだってね」
甘く楽しげに囁くと、濡れていない手で俺を抱きしめた。
「……うぅっ……」
それはそれで恥ずかしいので認めたくないのですが、いまさら隠しようもない。
怪我したハイヤスを癒すために体を繋げた後、俺はさんざんハイヤスに抱かれて、感じまくった前科があるのだ。
恥ずかしい姿ばかり、こいつには見られている気がする。
どうしてだろうな、必死に取り繕って、自分の足で立とうとしてるのに、ハイヤスの前に立つと時々それらがこぼれ落ちてしまうのは。
見知らぬ土地に来て、嫌な思いをたくさん味わった。
騎士団の仲間たちは優しい。俺はひとりだと思っちゃいない。
だけど疎外感はどうしても残る。
だれも異世界を知らない。同じ力や体質を持っていない。
騎士団員としては限りなく失格に近い体格と能力、その自覚もある。
俺は俺を、自分ひとりで支えなくてはけない。
ただでさえ役立たずなのだから、辛くてもだれかに頼ってはいけない。
裏切られたせいもあって、俺は心のどこかでずっとそう感じていたんだろう。
それを突き崩したのがハイヤスだった。
怪我を癒すために仕方なくヤッたんだ。そう言った俺の正体を、何となく勘付いていた様子なのに言わず、その後も欲望を吐き出すだけの対象としてではなく、ちゃんと俺自身を抱いてくれた。
そう、たぶんあの時に俺の思いこみにひびが入ったんだろうな。
俺も両腕を伸ばして、ハイヤスに抱きついた。
「こんなこと、したいと思うのは、あなただけです」
夕暮れの湖で起きた、忌々しい事件の記憶があるから。
優しかった爺さまを知って、そのどれとも違うハイヤスの腕のぬくもりに気づくことができた。
抱きついた俺の後頭部を、汚れていない方の手でハイヤスがそっと撫でる。
目を閉じてその感触を味わう。優しくて温かいその手は、いつか見た苦しい夢の最後に感じた手と同じだと思った。
熱を吐き出したはずの体の奥が、またじんわり熱さを増していく。
「ハイヤスが好きです。抱かれるのなら、あなただけがいい」
俺をこんな風にした責任を取ってくれよな。
心の中で悔し紛れの八つ当たりをしながら、俺からハイヤスにキスをした。
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