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第28話 求婚ではなく
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教会裁判所からの帰り道。
雲の隙間から差し込む柔らかい陽射しが、王都の石畳を白く照らしていた。
風に乗って、どこかの家の夕食の支度だろうか、香ばしく肉を焼く匂いが漂ってくる。
エリシアの右隣には、クララと手を繋いだリュシアンが歩いていた。
彼は裁判が終わった後も、興奮したり劇的な言葉をかけたりすることはなく、ただいつも通りに「お疲れ様でした。温かいものを食べましょう」と微笑んでくれた。
その変わらない温度が、どれほどエリシアの心を救ってくれているか。
「リュシアン様」
エリシアは立ち止まり、彼の灰色の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「あの……南方の修道院領のお話ですけれど」
「はい」
リュシアンも足を止め、真剣な顔でエリシアに向き直る。
エリシアは大きく息を吸い込み、自分の意思を声に乗せた。
「私も、クララと一緒に行きます。……もし、あなたに迷惑でなければ、その、これからも」
言葉に詰まるエリシアを見て、リュシアンはふわりと表情を和らげた。
彼は片膝をついてクララと視線を合わせた後、ゆっくりと立ち上がり、エリシアの冷えた両手を自分の手で優しく包み込んだ。
少しだけ荒れた、働き者の温かい手。
「迷惑なはずがありません。私は、あなたたちと一緒に生きたいんです。特別な魔法や、豪華なドレスは用意できませんが……毎朝一緒に起きて、温かいスープを飲んで、あなたの織る布を一番近くで見守りたい」
それは、劇的な愛の告白というよりも、これからの生活を共に紡いでいくための、誠実な約束だった。
情熱に浮かされた恋ではなく、静かに積み上げてきた安心が、確かな愛に変わった瞬間。
エリシアの目から、温かい涙が一滴だけこぼれ落ちた。
「はい……。よろしくお願いします」
リュシアンの大きな手が、エリシアの頬の涙をそっと拭う。
その光景を見ていたクララが、嬉しそうにパチパチと小さな手を叩いた。
ふと、道の向こう側。
軍の馬車に乗り込もうとしていたロルフの姿が見えた。
彼はエリシアたちの方をちらりと見たが、近づいてくることはなく、ただ静かに視線を外した。
「あ……」
クララがロルフの後ろ姿を指差し、小さな唇を動かした。
「パ……」
雲の隙間から差し込む柔らかい陽射しが、王都の石畳を白く照らしていた。
風に乗って、どこかの家の夕食の支度だろうか、香ばしく肉を焼く匂いが漂ってくる。
エリシアの右隣には、クララと手を繋いだリュシアンが歩いていた。
彼は裁判が終わった後も、興奮したり劇的な言葉をかけたりすることはなく、ただいつも通りに「お疲れ様でした。温かいものを食べましょう」と微笑んでくれた。
その変わらない温度が、どれほどエリシアの心を救ってくれているか。
「リュシアン様」
エリシアは立ち止まり、彼の灰色の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「あの……南方の修道院領のお話ですけれど」
「はい」
リュシアンも足を止め、真剣な顔でエリシアに向き直る。
エリシアは大きく息を吸い込み、自分の意思を声に乗せた。
「私も、クララと一緒に行きます。……もし、あなたに迷惑でなければ、その、これからも」
言葉に詰まるエリシアを見て、リュシアンはふわりと表情を和らげた。
彼は片膝をついてクララと視線を合わせた後、ゆっくりと立ち上がり、エリシアの冷えた両手を自分の手で優しく包み込んだ。
少しだけ荒れた、働き者の温かい手。
「迷惑なはずがありません。私は、あなたたちと一緒に生きたいんです。特別な魔法や、豪華なドレスは用意できませんが……毎朝一緒に起きて、温かいスープを飲んで、あなたの織る布を一番近くで見守りたい」
それは、劇的な愛の告白というよりも、これからの生活を共に紡いでいくための、誠実な約束だった。
情熱に浮かされた恋ではなく、静かに積み上げてきた安心が、確かな愛に変わった瞬間。
エリシアの目から、温かい涙が一滴だけこぼれ落ちた。
「はい……。よろしくお願いします」
リュシアンの大きな手が、エリシアの頬の涙をそっと拭う。
その光景を見ていたクララが、嬉しそうにパチパチと小さな手を叩いた。
ふと、道の向こう側。
軍の馬車に乗り込もうとしていたロルフの姿が見えた。
彼はエリシアたちの方をちらりと見たが、近づいてくることはなく、ただ静かに視線を外した。
「あ……」
クララがロルフの後ろ姿を指差し、小さな唇を動かした。
「パ……」
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