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第一章:偽りの王都
第5話 第二王子の憂慮
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エリオット第二王子に会うと決意したものの、その機会はなかなかなかった。彼は兄アルフォンスとは違い、派手な夜会やサロンにはあまり顔を出さない。王宮の書庫や自室に籠もり、政務や歴史の研究に没頭していることが多いと聞く。
公然と面会を申し込めば、間違いなく宰相の耳に入るだろう。それは避けなければならない。
(どうしたものか……)
思案に暮れていた私に、思わぬ形で好機が訪れた。王宮の中庭で、偶然彼と遭遇したのだ。
彼は一人、噴水の縁に腰掛け難しい顔で一冊の本を読んでいた。その真剣な横顔は、兄とは全く違う知的な雰囲気を漂わせている。
「エリオット殿下」
私が声をかけると、彼は驚いたように顔を上げた。私の姿を認めると、その表情がふわりと和らぐ。
「ヴィクトリア嬢。息災そうで何よりだ」
「はい、殿下のおかげで。……先日はありがとうございました」
ハンカチの礼を言うと、彼は「気にするな」と小さく笑った。
「少しお時間をいただけますでしょうか?」
「もちろんだ。立ち話もなんだ、あちらの東屋で話をしよう」
私たちは人目につきにくい庭園の奥にある東屋へと向かった。心地よい風が吹き抜け、色とりどりの花々が咲き誇っている。王宮の中でここだけが唯一、平穏な場所のように思えた。
腰を下ろすと、エリオット殿下は単刀直入に切り出した。
「兄上のこと、そして宰相のことだろう?」
彼の洞察力に、私は息を呑んだ。やはりこの方は全てお見通しなのだ。
「……はい。殿下はどのようにお考えですの?この国の現状を」
私の問いに、エリオット殿下は深く重い溜息をついた。
「憂いている。心からな」
その声には偽りのない苦悩が滲んでいた。
「兄上は王としての器ではない。プライドばかりが高く、人の意見に耳を貸そうとしない。そしてリヒター宰相……あの男は毒だ。甘い言葉で兄上を操り、この国を私物化しようとしている」
彼の言葉は、私が抱いていた懸念と全く同じだった。
「宰相は中央集権化を推し進め、貴族たちの力を削ごうとしている。特に独自の軍事力を持つ辺境貴族は、彼にとって目の上の瘤だ。……君のローゼンベルク家は、その最大の標的とされている」
「やはり、軍縮会議は……」
「ああ、罠だ。ローゼンベルク公を王都に呼び寄せ、軍権の放棄を迫るためのな。もし拒否すれば、反逆の汚名を着せて一気に潰すつもりだろう」
そこまで分かっていながら、彼にはそれを止める力がない。第二王子という立場は、王位継承権こそあれど政治的な実権はほとんど持たされていないのだ。
「私には力がない……。兄上の暴走を止められず、国の未来を案じることしかできん。情けない話だ」
自嘲気味に呟く彼の横顔が、ひどく寂しそうに見えた。私は彼のそんな姿を見ていられなかった。
「いいえ、そんなことはありませんわ!」
思わず強い口調になる。彼は驚いて私を見た。
「殿下。ご自身を卑下なさらないでください」
私は彼の瞳をまっすぐに見つめて言った。
「貴方様には、物事の本質を見抜く『目』と、国の未来を憂う『心』がございます。それは兄君殿下や宰相には決して持ち得ない、王として最も重要な資質ですわ」
私の言葉に、エリオット殿下は目を見開いた。その瞳がわずかに潤んで見えたのは、気のせいだろうか。
「ヴィクトリア嬢……君は……」
「私は諦めません。ローゼンベルク家の誇りも領民たちの生活も、この手で守り抜いてみせます。……たとえこの国の全てを敵に回すことになったとしても」
私の覚悟を感じ取ってくれたのだろう。エリオット殿下の表情が徐々に変わっていく。ただ憂うだけの無力な王子から、何かを決意した男の顔へ。
「……君は、強いな」
彼はぽつりとそう呟いた。
「君のような人間が、なぜ兄上の婚約者に……。いや、今更言っても詮無いことか。ヴィクトリア嬢、君の覚悟はよく分かった。……私に協力させてくれないだろうか」
「殿下……!?」
予想外の申し出に、今度は私が驚く番だった。
「言ったはずだ、私には実権がない、と。だから表立って君の力にはなれないだろう。だが水面下でなら、やれることがあるはずだ」
彼は懐から一枚の羊皮紙を取り出した。そこにはいくつかの貴族の名前が記されている。
「これは?」
「宰相のやり方に不満を抱く貴族たちのリストだ。彼らはまだどちらにつくか決めかねている中立派だが……きっかけさえあれば、我々の味方になる可能性がある」
セドリック伯爵――そのリストの筆頭に書かれた名前に、私は見覚えがあった。時流を読むことに長けた老獪な人物。彼の動向が今後の政局を大きく左右すると言われている。
「この者たちと接触を?」
「そうだ。だが慎重にな。宰相の目は光と影の至る所に張り巡らされている。……それから、これを」
エリオット殿下は小さな紋章が刻まれた指輪を私に差し出した。
「これは私の私兵にだけ伝わる合図だ。もし万が一のことがあれば、この指輪を身につけている者を頼れ。必ず君の助けになる」
受け取った指輪はひんやりとして、けれど確かな重みがあった。それは彼の覚悟の重さなのだと、私には分かった。
「……ありがとうございます、殿下。このご恩は決して忘れません」
「礼を言うのはまだ早い。我々の戦いはまだ始まったばかりなのだから」
そう言って、彼は静かに立ち上がった。去り際に、彼はもう一度私を振り返る。
「ヴィクトリア嬢。……決して一人で抱え込むな。君には私がついている」
その言葉はどんな激励よりも、私の心を強くした。
この王都で、私はもう一人ではない。同じ志を持つ、心強い味方ができたのだ。
エリオット殿下の背中を見送りながら、私は強く拳を握りしめた。宰相の深謀、王子の嫉妬。渦巻く陰謀の中で、私はただ守られるだけの令嬢ではいられない。
この国と私の大切なもの全てを守るため、私は戦う。『戦場の銀薔薇』としてではなく、ヴィクトリア・フォン・ローゼンベルクとして。
偽りの王都に本物の正義の鉄槌を下すその日まで。私の胸に秘めた革命の炎は、今、静かに、しかし激しく燃え上がっていた。
まずはリストの筆頭、セドリック伯爵と接触することから始めなければ。新たな戦いの幕開けに、私の心は高鳴っていた。
公然と面会を申し込めば、間違いなく宰相の耳に入るだろう。それは避けなければならない。
(どうしたものか……)
思案に暮れていた私に、思わぬ形で好機が訪れた。王宮の中庭で、偶然彼と遭遇したのだ。
彼は一人、噴水の縁に腰掛け難しい顔で一冊の本を読んでいた。その真剣な横顔は、兄とは全く違う知的な雰囲気を漂わせている。
「エリオット殿下」
私が声をかけると、彼は驚いたように顔を上げた。私の姿を認めると、その表情がふわりと和らぐ。
「ヴィクトリア嬢。息災そうで何よりだ」
「はい、殿下のおかげで。……先日はありがとうございました」
ハンカチの礼を言うと、彼は「気にするな」と小さく笑った。
「少しお時間をいただけますでしょうか?」
「もちろんだ。立ち話もなんだ、あちらの東屋で話をしよう」
私たちは人目につきにくい庭園の奥にある東屋へと向かった。心地よい風が吹き抜け、色とりどりの花々が咲き誇っている。王宮の中でここだけが唯一、平穏な場所のように思えた。
腰を下ろすと、エリオット殿下は単刀直入に切り出した。
「兄上のこと、そして宰相のことだろう?」
彼の洞察力に、私は息を呑んだ。やはりこの方は全てお見通しなのだ。
「……はい。殿下はどのようにお考えですの?この国の現状を」
私の問いに、エリオット殿下は深く重い溜息をついた。
「憂いている。心からな」
その声には偽りのない苦悩が滲んでいた。
「兄上は王としての器ではない。プライドばかりが高く、人の意見に耳を貸そうとしない。そしてリヒター宰相……あの男は毒だ。甘い言葉で兄上を操り、この国を私物化しようとしている」
彼の言葉は、私が抱いていた懸念と全く同じだった。
「宰相は中央集権化を推し進め、貴族たちの力を削ごうとしている。特に独自の軍事力を持つ辺境貴族は、彼にとって目の上の瘤だ。……君のローゼンベルク家は、その最大の標的とされている」
「やはり、軍縮会議は……」
「ああ、罠だ。ローゼンベルク公を王都に呼び寄せ、軍権の放棄を迫るためのな。もし拒否すれば、反逆の汚名を着せて一気に潰すつもりだろう」
そこまで分かっていながら、彼にはそれを止める力がない。第二王子という立場は、王位継承権こそあれど政治的な実権はほとんど持たされていないのだ。
「私には力がない……。兄上の暴走を止められず、国の未来を案じることしかできん。情けない話だ」
自嘲気味に呟く彼の横顔が、ひどく寂しそうに見えた。私は彼のそんな姿を見ていられなかった。
「いいえ、そんなことはありませんわ!」
思わず強い口調になる。彼は驚いて私を見た。
「殿下。ご自身を卑下なさらないでください」
私は彼の瞳をまっすぐに見つめて言った。
「貴方様には、物事の本質を見抜く『目』と、国の未来を憂う『心』がございます。それは兄君殿下や宰相には決して持ち得ない、王として最も重要な資質ですわ」
私の言葉に、エリオット殿下は目を見開いた。その瞳がわずかに潤んで見えたのは、気のせいだろうか。
「ヴィクトリア嬢……君は……」
「私は諦めません。ローゼンベルク家の誇りも領民たちの生活も、この手で守り抜いてみせます。……たとえこの国の全てを敵に回すことになったとしても」
私の覚悟を感じ取ってくれたのだろう。エリオット殿下の表情が徐々に変わっていく。ただ憂うだけの無力な王子から、何かを決意した男の顔へ。
「……君は、強いな」
彼はぽつりとそう呟いた。
「君のような人間が、なぜ兄上の婚約者に……。いや、今更言っても詮無いことか。ヴィクトリア嬢、君の覚悟はよく分かった。……私に協力させてくれないだろうか」
「殿下……!?」
予想外の申し出に、今度は私が驚く番だった。
「言ったはずだ、私には実権がない、と。だから表立って君の力にはなれないだろう。だが水面下でなら、やれることがあるはずだ」
彼は懐から一枚の羊皮紙を取り出した。そこにはいくつかの貴族の名前が記されている。
「これは?」
「宰相のやり方に不満を抱く貴族たちのリストだ。彼らはまだどちらにつくか決めかねている中立派だが……きっかけさえあれば、我々の味方になる可能性がある」
セドリック伯爵――そのリストの筆頭に書かれた名前に、私は見覚えがあった。時流を読むことに長けた老獪な人物。彼の動向が今後の政局を大きく左右すると言われている。
「この者たちと接触を?」
「そうだ。だが慎重にな。宰相の目は光と影の至る所に張り巡らされている。……それから、これを」
エリオット殿下は小さな紋章が刻まれた指輪を私に差し出した。
「これは私の私兵にだけ伝わる合図だ。もし万が一のことがあれば、この指輪を身につけている者を頼れ。必ず君の助けになる」
受け取った指輪はひんやりとして、けれど確かな重みがあった。それは彼の覚悟の重さなのだと、私には分かった。
「……ありがとうございます、殿下。このご恩は決して忘れません」
「礼を言うのはまだ早い。我々の戦いはまだ始まったばかりなのだから」
そう言って、彼は静かに立ち上がった。去り際に、彼はもう一度私を振り返る。
「ヴィクトリア嬢。……決して一人で抱え込むな。君には私がついている」
その言葉はどんな激励よりも、私の心を強くした。
この王都で、私はもう一人ではない。同じ志を持つ、心強い味方ができたのだ。
エリオット殿下の背中を見送りながら、私は強く拳を握りしめた。宰相の深謀、王子の嫉妬。渦巻く陰謀の中で、私はただ守られるだけの令嬢ではいられない。
この国と私の大切なもの全てを守るため、私は戦う。『戦場の銀薔薇』としてではなく、ヴィクトリア・フォン・ローゼンベルクとして。
偽りの王都に本物の正義の鉄槌を下すその日まで。私の胸に秘めた革命の炎は、今、静かに、しかし激しく燃え上がっていた。
まずはリストの筆頭、セドリック伯爵と接触することから始めなければ。新たな戦いの幕開けに、私の心は高鳴っていた。
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