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第三章:獅子の覚醒
第28話 新兵器開発
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騎士たちの忠誠を改めて一つに束ねた私は、次なる計画の最終段階へと移行した。それは私が密かに開発を進めさせていた新兵器の完成披露と、その威力実験だ。
私は父とコンラート、そして開発に携わった職人たちだけを連れて、領都の外れにある広大な演習場へと向かった。そこには今まで誰も見たことがない、異様な形をしたいくつかの兵器が巨大な布で覆い隠されていた。
「ヴィクトリアよ。一体何を見せてくれるというのだ?随分ともったいぶりおって」
父が子供のように目を輝かせながら尋ねてくる。彼は私が何かとんでもないものを隠していることを察しているようだ。
「まあ父上。見てのお楽しみですわ」
私は悪戯っぽく笑うと職人たちに合図を送った。職人たちが布を取り払うと、その下から新兵器の全貌が現れる。
「……なっ!?」 「こ、これは一体……!?」
父もコンラートも、その異様な姿に言葉を失った。
一台は巨大な弩(いしゆみ)だった。しかし普通の弩とは全く構造が違う。いくつもの歯車と巻き上げ式のハンドルが複雑に組み合わさっている。そしてその上部には、矢を一度に十本も装填できる弾倉(マガジン)のようなものが取り付けられていた。
もう一台は小型の投石機だった。車輪がついており移動が可能。そして投石部分には巨大なスプーンのような受け皿が取り付けられていた。
「……ヴィクトリア様。これはもしや……」
コンラートが信じられないといった表情で私を見る。
「ええ。私が設計した新しい兵器よ。こちらは連射式速射弩(リピート・バリスタ)。そしてあちらは**移動式投擲機(トレビュシェット・ポータブル)**と名付けたわ」
私の説明に、父はゴクリと喉を鳴らした。
「連射式だと……?馬鹿な。弩は一度射れば弦を張り直すのに多大な時間と労力がかかるはずだ。それを連射するだと……?」
「ええ、できますわ。この巻き上げ式のハンドルを使えばね」
私はバリスタの横に立ち、実際にハンドルを回してみせた。ギリギリと心地よい音を立てて歯車が回転し、極太の弦がいとも簡単に引き絞られていく。そして弾倉から次の一本が自動的に射線へと装填された。
「……信じられん。これならば熟練の兵でなくとも、赤子でも弦を張れるではないか」
父は驚愕に目を見開いている。
「さあ、実験を始めましょうか。的はあれよ」
私が指差した先、三百メートルほど離れた場所には王都の軍隊が使うものと同じ規格の、分厚い鉄の盾が十枚並べられていた。
「コンラート。あなたが射ってみなさい」
「は、はい!」
コンラートは緊張した面持ちでバリスタの引き金に手をかけた。そして私の合図と共に引き金を引く。
バシュゥゥゥッ!
今まで聞いたこともないような鋭い風切り音と共に、極太の矢が射出された。矢は一直線に的へと吸い込まれていく。そして――。
ガッシャアアアアン!
凄まじい破壊音。分厚い鉄の盾がまるで紙切れのように中央から貫かれ、粉々に砕け散った。その威力はそれだけでは終わらない。矢は一枚目を貫通した後も勢いを失わず、二枚目、三枚目、四枚目の盾までも串刺しにしたのだ。
「……お……おお……」
その場にいた誰もが言葉を失った。ただ呆然と、その信じがたい光景を見つめている。
「……まだよ、コンラート。続けて」
私の声にはっと我に返ったコンラートは、夢中でハンドルを回し次弾を装填する。そして再び引き金を引く。
バシュゥゥゥッ! ガッシャアアアン! バシュゥゥゥッ! ガッシャアアアン!
連射。圧倒的な連射。ほんの数十秒の間に、並べられていた十枚の鉄の盾は全て見るも無惨な鉄屑へと変わっていた。
「……す、素晴らしい……!これさえあれば、王都のあの忌々しい重装騎士団の鉄壁の守りも、赤子の手をひねるようなもの……!」
父が興奮に声を震わせている。
「……父上。驚くのはまだ早いですわよ」
私はにやりと笑い、今度は移動式投擲機(トレビュシェット)の方を指差した。その受け皿には、あらかじめ油をたっぷりと詰めた素焼きの壺がセットされている。
「あれを、あの藁でできた模擬陣地に向かって放ちなさい」
職人が投擲機を慎重に操作する。そして重りが落とされると巨大なアームがしなり、油壺を空高く放り投げた。壺は美しい放物線を描き、模擬陣地のど真ん中に着弾した。
パリン!
壺が割れる。しかしそれだけでは終わらない。私は弓兵に火矢を射るよう命じた。火矢が油まみれの藁の陣地に着弾した、その瞬間――。
ゴオオオオオオッ!!
巨大な火柱が天を焦がした。模擬陣地は一瞬にして業火に包まれ、メラメラと燃え盛る。その熱風はここまで届くほどだ。もしあれが本物の敵の陣地だったとしたら。中にいる兵士たちは一人残らず黒焦げになっていただろう。
「……」
父もコンラートももはや声も出ない。ただ目の前で燃え盛る炎を、畏怖の念を込めて見つめているだけだ。
「どうかしら父上?私の新しいおもちゃは」
私の問いに、父はゆっくりと振り返った。その顔には驚きと興奮、そして我が娘への最大級の誇りが浮かんでいた。
「……ヴィクトリア。お前は天才だ。いや、もはや魔女の類やもしれん」
父はそう言うと、豪快に笑い出した。
「はっはっは!これならば勝てる!いや、勝つる!王都のあの愚か者どもに、本当の地獄を見せてやれるわ!」
新兵器の圧倒的な威力。それはローゼンベルク軍の全ての兵士に勝利を確信させるには十分すぎるものだった。私たちの革命の炎は今や誰にも止められない業火となって、燃え盛ろうとしていた。
私は父とコンラート、そして開発に携わった職人たちだけを連れて、領都の外れにある広大な演習場へと向かった。そこには今まで誰も見たことがない、異様な形をしたいくつかの兵器が巨大な布で覆い隠されていた。
「ヴィクトリアよ。一体何を見せてくれるというのだ?随分ともったいぶりおって」
父が子供のように目を輝かせながら尋ねてくる。彼は私が何かとんでもないものを隠していることを察しているようだ。
「まあ父上。見てのお楽しみですわ」
私は悪戯っぽく笑うと職人たちに合図を送った。職人たちが布を取り払うと、その下から新兵器の全貌が現れる。
「……なっ!?」 「こ、これは一体……!?」
父もコンラートも、その異様な姿に言葉を失った。
一台は巨大な弩(いしゆみ)だった。しかし普通の弩とは全く構造が違う。いくつもの歯車と巻き上げ式のハンドルが複雑に組み合わさっている。そしてその上部には、矢を一度に十本も装填できる弾倉(マガジン)のようなものが取り付けられていた。
もう一台は小型の投石機だった。車輪がついており移動が可能。そして投石部分には巨大なスプーンのような受け皿が取り付けられていた。
「……ヴィクトリア様。これはもしや……」
コンラートが信じられないといった表情で私を見る。
「ええ。私が設計した新しい兵器よ。こちらは連射式速射弩(リピート・バリスタ)。そしてあちらは**移動式投擲機(トレビュシェット・ポータブル)**と名付けたわ」
私の説明に、父はゴクリと喉を鳴らした。
「連射式だと……?馬鹿な。弩は一度射れば弦を張り直すのに多大な時間と労力がかかるはずだ。それを連射するだと……?」
「ええ、できますわ。この巻き上げ式のハンドルを使えばね」
私はバリスタの横に立ち、実際にハンドルを回してみせた。ギリギリと心地よい音を立てて歯車が回転し、極太の弦がいとも簡単に引き絞られていく。そして弾倉から次の一本が自動的に射線へと装填された。
「……信じられん。これならば熟練の兵でなくとも、赤子でも弦を張れるではないか」
父は驚愕に目を見開いている。
「さあ、実験を始めましょうか。的はあれよ」
私が指差した先、三百メートルほど離れた場所には王都の軍隊が使うものと同じ規格の、分厚い鉄の盾が十枚並べられていた。
「コンラート。あなたが射ってみなさい」
「は、はい!」
コンラートは緊張した面持ちでバリスタの引き金に手をかけた。そして私の合図と共に引き金を引く。
バシュゥゥゥッ!
今まで聞いたこともないような鋭い風切り音と共に、極太の矢が射出された。矢は一直線に的へと吸い込まれていく。そして――。
ガッシャアアアアン!
凄まじい破壊音。分厚い鉄の盾がまるで紙切れのように中央から貫かれ、粉々に砕け散った。その威力はそれだけでは終わらない。矢は一枚目を貫通した後も勢いを失わず、二枚目、三枚目、四枚目の盾までも串刺しにしたのだ。
「……お……おお……」
その場にいた誰もが言葉を失った。ただ呆然と、その信じがたい光景を見つめている。
「……まだよ、コンラート。続けて」
私の声にはっと我に返ったコンラートは、夢中でハンドルを回し次弾を装填する。そして再び引き金を引く。
バシュゥゥゥッ! ガッシャアアアン! バシュゥゥゥッ! ガッシャアアアン!
連射。圧倒的な連射。ほんの数十秒の間に、並べられていた十枚の鉄の盾は全て見るも無惨な鉄屑へと変わっていた。
「……す、素晴らしい……!これさえあれば、王都のあの忌々しい重装騎士団の鉄壁の守りも、赤子の手をひねるようなもの……!」
父が興奮に声を震わせている。
「……父上。驚くのはまだ早いですわよ」
私はにやりと笑い、今度は移動式投擲機(トレビュシェット)の方を指差した。その受け皿には、あらかじめ油をたっぷりと詰めた素焼きの壺がセットされている。
「あれを、あの藁でできた模擬陣地に向かって放ちなさい」
職人が投擲機を慎重に操作する。そして重りが落とされると巨大なアームがしなり、油壺を空高く放り投げた。壺は美しい放物線を描き、模擬陣地のど真ん中に着弾した。
パリン!
壺が割れる。しかしそれだけでは終わらない。私は弓兵に火矢を射るよう命じた。火矢が油まみれの藁の陣地に着弾した、その瞬間――。
ゴオオオオオオッ!!
巨大な火柱が天を焦がした。模擬陣地は一瞬にして業火に包まれ、メラメラと燃え盛る。その熱風はここまで届くほどだ。もしあれが本物の敵の陣地だったとしたら。中にいる兵士たちは一人残らず黒焦げになっていただろう。
「……」
父もコンラートももはや声も出ない。ただ目の前で燃え盛る炎を、畏怖の念を込めて見つめているだけだ。
「どうかしら父上?私の新しいおもちゃは」
私の問いに、父はゆっくりと振り返った。その顔には驚きと興奮、そして我が娘への最大級の誇りが浮かんでいた。
「……ヴィクトリア。お前は天才だ。いや、もはや魔女の類やもしれん」
父はそう言うと、豪快に笑い出した。
「はっはっは!これならば勝てる!いや、勝つる!王都のあの愚か者どもに、本当の地獄を見せてやれるわ!」
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