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 魔石の相場は──安かった。

「冒険者ギルドなら、ちゃんとした相場なんだがなぁ……ところでリヴァ、お前、これどこで拾って来たんだ」

 困った時の生臭坊主だ。
 元冒険者ってだけあって、その辺のことは詳しいだろうと思って相談してみた。

「モンスターぶっ殺した。地下街だとまともな相場で買ってくれないのか?」
「ぶっ殺したって……まぁいいか。いやよくねぇんだけど。ここは地下街だぞ。上と同じ総花わけがねえだろう。安く買いたたいて上で売る。その為には飢えの相場より遥かに安く買わなきゃ儲けがでねえじゃねえか」

 ってことで売るのは却下だ。
 だけど自分で使うには量が多い。

「お前ぇ、地上を目指すのか?」
「そのつもりだ。こんなごみ溜めで一生を終えたくない」
「まぁそうだよな。誰だってそう思っているさ。思っているだけでそれを実現できる力はない。けど──」

 神父が俺の顔をまじまじと見る。

「死に瀕した時、力に目覚める奴が稀にいる」
「力に……」
「ちなみに俺もそうだった」
「え、神父が!?」

 それでこんな野郎が神聖魔法なんかを使えるようになったのか。

「それまで下級の回復魔法や支援魔法しか使えなかった俺が、突然上級の退魔魔法を使えるようになったんだ。どうだ、凄いだろう?」

 ……こいつ、力に目覚める前から神父だったのかよ!
 だけど確かに凄い。突然強い魔法が使えるようになったってのは驚きだ。

「お前もそうなんだろう。俺様にゃあなーんとなく分かるんだよ」
「わ、分かる?」
「そ。お前さんの中の魔力の流れが、以前とは全然違うんだよ。俺様ぐらい徳の高い神父になるとなぁ、そのぐれぇ分かるんだよ」

 徳……ねぇ。

 しかし、そうか。俺みたいに覚醒する奴は稀にいるのか。
 そいつらも転生者なのかな?
 なら神父も?
 だとすれば今この場で神父はそのことを話すはずだ。
 覚醒者=転生者なら、神父も俺もそういうことになって、隠す必要はない。
 だけど何も言わないってことは……イコールではないってことだろう。

「魔石を売って金にしてぇなら集めろ。ある程度集まったら、俺様が代わりに上で売却してきてやる」
「え、でも神父って元冒険者であって、現役じゃねえんだろ?」
「まぁな。けどカードを持っている奴は、ギルドの施設を利用する権利はあるんだよ」
「本当か!? だったら頼む。いやお願いしますっ」

 神父は「久しぶりに可愛げがでたじゃねーか」と言って笑った。

「なっなっ。このポーション瓶は?」
「あぁ? あぁ……まぁ自分で使え。正直、それ一本じゃ擦り傷ぐらいしか治せねえんだよ」
「ゴミポーション!?」
「お、よく知ってるじゃねーか。ライフポーション・ランクゼロって言ってな、別名ゴミポーションなんだ。ここのダンジョンだと、十階層まではそれがたまに出るんだよ。買取価格はねえ。ギルドでも買い取ってねえからな」

 本当にゴミじゃん。
 まぁいいか……塵も積もればなんとやら。貯め込んでいたら、ちょっとした怪我でも治せるだろう。

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