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「どうするんだ。今この場で登録すりゃ、階段上がって来る金も必要ねえぞ」
「あっ」
「いったん下の階に戻ってから考えるってんなら、次はここまで上がって来るのに金を払わなきゃならねえ」
今なら全部タダ!
さ、詐欺じゃないだろうな。
「リヴァ、登録しちまえ。せっかくタダなんだからよ」
「お、俺、騙されてないよな?」
「ぶわっはっは。だーいじょうぶだって。こいつとは二十年来の付き合いだ。顔はこえーが、人を騙すような男じゃねえ」
「おいエルヴァン。顔がこえーは余計だクソ」
神父とは顔見知りなのか。まぁ神父だって冒険者だったんだ、知ってる奴だっているだろう。
あ、冒険者登録って……もしかして種族とか──
セシリアは登録させない方がいいだろう。
「はいっ」
「お、そっちの嬢ちゃんは登録する気満々みてぇだな」
「え、いや、おい。セシリア」
それはダメだ。
でもどうやって誤魔化す?
神父を見ると、あろうことかこの中年、セシリアの肩に手をまわして「そーかそーか」なんて言ってやがる。
「で、リヴァはどうすんだ? (心配すんな。カードに出るのはステータスの数字だけだ)」
「え……本当か?」
神父が頷く。
そういえば神父のカードも、ステータスしか出てなかったな。
「じ、じゃあ……ここで登録します」
「よし、じゃあ待ってろ。今カードの準備をするからよ」
ギルドマスターが部屋を出ていくと、さっきの職員二人も一緒に出て行った。
準備って何をするんだろう?
「カードはな、特殊なマジックアイテムだと思えばいい。持ち主の血を垂らすことで、その瞬間のステータスを表示するマジックアイテムだ」
「その瞬間って、あぁ、つまり登録したステータスじゃなくって血を垂らした時のステータスを表示するのか」
「そういうことだ。ステータスが成長しても、その都度血を垂らせばどんだけ増えたか分かるって訳だ」
「ふぅーん。そのカードの準備に手間取るのか」
「カードを悪用されねえようにな、厳重に封印されてんだよ。封印はギルドマスターと職員複数の同時作業でしか解除できねえ。それにまぁ、三十分ぐらいかかるんだよ」
意外と大変みたいだ。
「あ、冒険者登録、本当にセシリアは大丈夫なのか?」
「ん、はい?」
「カードはステータスの状態しか読み取らない」
神父がカードを取り出し、ステータスが表示されるのとは違う裏面を見せた。
そこに神父の名前と数字が刻まれている。数字は151。
「この名前は手彫りだ」
「え、自分で名前を彫るのか!?」
「いやぁ、俺はギルドの職員に頼んだよぉ。あんま字は綺麗じゃねえからさぁ」
「そうなんだ……じ、じゃあ俺も頼もう」
カードには他には何もない。
「こんなうすっぺらいカードだからな。ステータスを表示させる以上の性能は、付与できねえんだよ」
「あぁ、それが限界ってことか」
「ただ身分証明書にはなる。カードに名前を彫っておけば、持ち主が誰だか分かるだろ。もし別人がそれを拾って悪用しようとしても、血を垂らせば本物の持ち主かどうか分かるんだ。他人の血には反応しねえからな。やってみるか?」
それならとちょっと試してみた。
ハンマーの刃で指に小さな傷をつけ、血をカードに付ける。
……反応しない。
へぇ、さすがマジックアイテムだ。
「んぉ、んぉ……わたひ、とーろうして、いいの?」
「あぁ、心配ない。身分証はあると何かと役に立つ。持ってる方がいいだろう」
「うん、はいっ」
一安心したところで──
「ただ待つだけって退屈だな」
「だなぁ」
「ぶぅー」
「あっ」
「いったん下の階に戻ってから考えるってんなら、次はここまで上がって来るのに金を払わなきゃならねえ」
今なら全部タダ!
さ、詐欺じゃないだろうな。
「リヴァ、登録しちまえ。せっかくタダなんだからよ」
「お、俺、騙されてないよな?」
「ぶわっはっは。だーいじょうぶだって。こいつとは二十年来の付き合いだ。顔はこえーが、人を騙すような男じゃねえ」
「おいエルヴァン。顔がこえーは余計だクソ」
神父とは顔見知りなのか。まぁ神父だって冒険者だったんだ、知ってる奴だっているだろう。
あ、冒険者登録って……もしかして種族とか──
セシリアは登録させない方がいいだろう。
「はいっ」
「お、そっちの嬢ちゃんは登録する気満々みてぇだな」
「え、いや、おい。セシリア」
それはダメだ。
でもどうやって誤魔化す?
神父を見ると、あろうことかこの中年、セシリアの肩に手をまわして「そーかそーか」なんて言ってやがる。
「で、リヴァはどうすんだ? (心配すんな。カードに出るのはステータスの数字だけだ)」
「え……本当か?」
神父が頷く。
そういえば神父のカードも、ステータスしか出てなかったな。
「じ、じゃあ……ここで登録します」
「よし、じゃあ待ってろ。今カードの準備をするからよ」
ギルドマスターが部屋を出ていくと、さっきの職員二人も一緒に出て行った。
準備って何をするんだろう?
「カードはな、特殊なマジックアイテムだと思えばいい。持ち主の血を垂らすことで、その瞬間のステータスを表示するマジックアイテムだ」
「その瞬間って、あぁ、つまり登録したステータスじゃなくって血を垂らした時のステータスを表示するのか」
「そういうことだ。ステータスが成長しても、その都度血を垂らせばどんだけ増えたか分かるって訳だ」
「ふぅーん。そのカードの準備に手間取るのか」
「カードを悪用されねえようにな、厳重に封印されてんだよ。封印はギルドマスターと職員複数の同時作業でしか解除できねえ。それにまぁ、三十分ぐらいかかるんだよ」
意外と大変みたいだ。
「あ、冒険者登録、本当にセシリアは大丈夫なのか?」
「ん、はい?」
「カードはステータスの状態しか読み取らない」
神父がカードを取り出し、ステータスが表示されるのとは違う裏面を見せた。
そこに神父の名前と数字が刻まれている。数字は151。
「この名前は手彫りだ」
「え、自分で名前を彫るのか!?」
「いやぁ、俺はギルドの職員に頼んだよぉ。あんま字は綺麗じゃねえからさぁ」
「そうなんだ……じ、じゃあ俺も頼もう」
カードには他には何もない。
「こんなうすっぺらいカードだからな。ステータスを表示させる以上の性能は、付与できねえんだよ」
「あぁ、それが限界ってことか」
「ただ身分証明書にはなる。カードに名前を彫っておけば、持ち主が誰だか分かるだろ。もし別人がそれを拾って悪用しようとしても、血を垂らせば本物の持ち主かどうか分かるんだ。他人の血には反応しねえからな。やってみるか?」
それならとちょっと試してみた。
ハンマーの刃で指に小さな傷をつけ、血をカードに付ける。
……反応しない。
へぇ、さすがマジックアイテムだ。
「んぉ、んぉ……わたひ、とーろうして、いいの?」
「あぁ、心配ない。身分証はあると何かと役に立つ。持ってる方がいいだろう」
「うん、はいっ」
一安心したところで──
「ただ待つだけって退屈だな」
「だなぁ」
「ぶぅー」
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