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「いぃぃぃやあぁぁぁーっ!!」
「んふふふふふふふ。そんなに大声出したって、誰もきやしないわよぉん」
俺は今、生まれたままの姿でとある部屋の片隅で蹲っている。
何故か。
身を──童貞を守るためだ!!
「んっもう、可愛い子ちゃんねぇ。安心してよぉ、ちょっとつまみ食いするだ──じゃなくって、取って食ったりしないんだからん」
「今! 今本音をポロりした! ポロりしただろ!!」
一瞬相手の──男の動きが止まった。
そう、男だ。もっと言えば分厚い胸板のマッチョな……おネエだ。
ここはギルド職員がお勧めした店の中。
入るなりこの店員は
「セバスチャン。お風呂の用意してちょうだい」
と言って俺とセシリアを店の奥にあるここ──風呂場まで担いできた。
ご丁寧に男湯と女湯で別れたそこで、俺はこのおネエ店員に身包み剥がされて、今ここ。
「いい坊や! 気づいていないかもしれないけど、あなたたちちょーっと臭うのよぉん」
「に、臭う? ま、まぁ地下じゃ石鹸なんて超がつく高級品だからよ。だいたいいつも濡らしたタオルで体を拭くだけだった──って何すんだよおいっ」
急に体が浮いたと思ったら、おネエに抱えられて風呂桶に突っ込まれた。
「んふふふ。坊や、細いわりにいい筋肉ついてるわねぇ。好きよぉ、こういう細マッチョもぉん」
「いやああぁぁーっ!?」
「んっもう。大人しく洗われなさいっ。でないと……うちの店のもんには、指一本触れさせねえぞこのガキャァァッ!」
「ひっ」
ひ、豹変した! おネエが豹変した!!
硬直している間におネエが何か液体を手に取って、頭をかき回された。
これ、シャンプーか?
いや、この世界だと散髪剤と言うべきか。
いい香りだ。いいかお……
「って、なにどさくさに紛れて尻触ってんだよ!?」
「あぁん、いいじゃなぁい、ちょーっとぐらいさぁ」
「ダメ!! ちょっとでもそっとでもダメ!!」
俺、今この瞬間が今世で一番危機的状況になっているような、そんな気がする。
髪五回、体八回。
それが洗われた回数だ。
「なーんで泡立たなかったのかしらぁん」
「それは……俺が汚すぎたから……」
中学の頃、生物の教師が言っていた。
汚れ過ぎていると、石鹸もシャンプーも泡立たないと。
ただそれで汚れが落ちていない訳じゃなく、何度も洗っては流し洗っては流していればそのうち泡が立つようになる。
それを生物の教師は実体験として語っていた。大学でラグビー部に所属していた教師は、練習で疲れて風呂が面倒くさくて週1のシャワーで済ませていたらしい。
その時の女子生徒の悲鳴が今でも覚えている。
俺もその時は「汚ぇな」って思っていたけど……それより俺は酷かったんだろうな。
ようやく泡立ったことで風呂終了。なんとか童貞は守り抜いた。
それにしても遅いな。
「セシリア、無事だろうか」
「心配しなくてもプリシラちゃんがいるから、平気よん」
セシリアが隣の部屋──風呂場だ。
一足先に上がって来た俺は、おネエが持って来た服に袖を通して廊下で待つ。
耳を澄ますと物音が聞こえてきた。
すると唐突に部屋の扉が開いて、おさげに眼鏡という組み合わせの小柄な店員が顔を出す。
「てんちょ~。この子のお洋服忘れちゃいましたぁ」
「んっもう、ドジっ娘ねぇ」
おネエが店の方へと歩いて行くと、階段を上っていく音がした。
この店、一階は雑貨類がメインで野宿なんかに必要なものが一式揃っている感じだった。
その二階には武具一式。布装備から鎧まで各種揃っている某とおネエが言っていた。
「ねぇねぇ坊や。こっちとこっち、どっちがいいかしらぁん?」
「は? なんで俺に聞くんだ──ぶっ」
「だってパートナーでしょお。ねぇ、どっちがいい? どっちが坊やの、こ・の・み?」
おネエが持って来た二着。
一着はビキニアーマーかよってデザイン。鎧じゃなくって布だから、ただの水着とそう変わらない。
もう一着は金太郎だ! いや、金太郎の前掛けだ! それで胸隠してるだけ!!
「んふふふふふふふ。そんなに大声出したって、誰もきやしないわよぉん」
俺は今、生まれたままの姿でとある部屋の片隅で蹲っている。
何故か。
身を──童貞を守るためだ!!
「んっもう、可愛い子ちゃんねぇ。安心してよぉ、ちょっとつまみ食いするだ──じゃなくって、取って食ったりしないんだからん」
「今! 今本音をポロりした! ポロりしただろ!!」
一瞬相手の──男の動きが止まった。
そう、男だ。もっと言えば分厚い胸板のマッチョな……おネエだ。
ここはギルド職員がお勧めした店の中。
入るなりこの店員は
「セバスチャン。お風呂の用意してちょうだい」
と言って俺とセシリアを店の奥にあるここ──風呂場まで担いできた。
ご丁寧に男湯と女湯で別れたそこで、俺はこのおネエ店員に身包み剥がされて、今ここ。
「いい坊や! 気づいていないかもしれないけど、あなたたちちょーっと臭うのよぉん」
「に、臭う? ま、まぁ地下じゃ石鹸なんて超がつく高級品だからよ。だいたいいつも濡らしたタオルで体を拭くだけだった──って何すんだよおいっ」
急に体が浮いたと思ったら、おネエに抱えられて風呂桶に突っ込まれた。
「んふふふ。坊や、細いわりにいい筋肉ついてるわねぇ。好きよぉ、こういう細マッチョもぉん」
「いやああぁぁーっ!?」
「んっもう。大人しく洗われなさいっ。でないと……うちの店のもんには、指一本触れさせねえぞこのガキャァァッ!」
「ひっ」
ひ、豹変した! おネエが豹変した!!
硬直している間におネエが何か液体を手に取って、頭をかき回された。
これ、シャンプーか?
いや、この世界だと散髪剤と言うべきか。
いい香りだ。いいかお……
「って、なにどさくさに紛れて尻触ってんだよ!?」
「あぁん、いいじゃなぁい、ちょーっとぐらいさぁ」
「ダメ!! ちょっとでもそっとでもダメ!!」
俺、今この瞬間が今世で一番危機的状況になっているような、そんな気がする。
髪五回、体八回。
それが洗われた回数だ。
「なーんで泡立たなかったのかしらぁん」
「それは……俺が汚すぎたから……」
中学の頃、生物の教師が言っていた。
汚れ過ぎていると、石鹸もシャンプーも泡立たないと。
ただそれで汚れが落ちていない訳じゃなく、何度も洗っては流し洗っては流していればそのうち泡が立つようになる。
それを生物の教師は実体験として語っていた。大学でラグビー部に所属していた教師は、練習で疲れて風呂が面倒くさくて週1のシャワーで済ませていたらしい。
その時の女子生徒の悲鳴が今でも覚えている。
俺もその時は「汚ぇな」って思っていたけど……それより俺は酷かったんだろうな。
ようやく泡立ったことで風呂終了。なんとか童貞は守り抜いた。
それにしても遅いな。
「セシリア、無事だろうか」
「心配しなくてもプリシラちゃんがいるから、平気よん」
セシリアが隣の部屋──風呂場だ。
一足先に上がって来た俺は、おネエが持って来た服に袖を通して廊下で待つ。
耳を澄ますと物音が聞こえてきた。
すると唐突に部屋の扉が開いて、おさげに眼鏡という組み合わせの小柄な店員が顔を出す。
「てんちょ~。この子のお洋服忘れちゃいましたぁ」
「んっもう、ドジっ娘ねぇ」
おネエが店の方へと歩いて行くと、階段を上っていく音がした。
この店、一階は雑貨類がメインで野宿なんかに必要なものが一式揃っている感じだった。
その二階には武具一式。布装備から鎧まで各種揃っている某とおネエが言っていた。
「ねぇねぇ坊や。こっちとこっち、どっちがいいかしらぁん?」
「は? なんで俺に聞くんだ──ぶっ」
「だってパートナーでしょお。ねぇ、どっちがいい? どっちが坊やの、こ・の・み?」
おネエが持って来た二着。
一着はビキニアーマーかよってデザイン。鎧じゃなくって布だから、ただの水着とそう変わらない。
もう一着は金太郎だ! いや、金太郎の前掛けだ! それで胸隠してるだけ!!
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