上 下
7 / 48

007

しおりを挟む
 調べものついでにログアウト。
 あと連続プレイ時間がどうとかって、赤いシステムメッセージが浮かんだのもあって。
 そして俺は知った。

「晩御飯……食べ損ねた?」

 自室の時計は午後十一時を過ぎてる。
 一階に降りていくと、母さんが起きていた。

 俺の為に?
 そんな訳はない。

 録り溜めていた昼ドラをいっき見しているだけだ。

「母さん、ご飯残ってる?」
「カレー」
「あ、うん」
「また新しい物、買ったのぉ? その手で?」
「いや、あー、うん。今度はVRゲーム」

 見ていたドラマを停止させた母さんが振り向き、驚いた顔で俺を見る。

「あんたがゲーム!? え、珍しい。子供の頃に買ってやったRPGだってクリアしたことが無いってのに」
「いや、RPGじゃ……RPGか……でも物を造ったりも出来るんだよ。今は町を作ってる」

 正確には壁だ。それも今度ログインしてから取り掛かるという段階。

「町……今時のRPGは町を作るところから始めるのね」
「そうだよ。ところでさ、カレー温めるからラップかけてくれない? 片手じゃ無理だった」
「はいはい。でも遊んでばっかりいないで、病院もちゃんと行くのよ。じゃないと慰謝料がっぽがっぽ出来ないんだから」

 がっぽがっぽって……示談とはいえ、がっぽりとは貰えないだろう。
 まぁ治療費とバイトに行けない分の給料、それにオマケぐらいあれば文句はない。
 働かずしてお金が入るって、素晴らしいじゃん。

 カレーライスを食べた後、右手を濡らさないようシャワーを浴びて部屋へと戻る。

 パソコンの前に座り公式サイトを開いた。
 調べたいのは連続プレイ時間云々や、ドロップアイテムのこと。
 出来れば錬金で作れる物の一覧も欲しいな。

 が、公式サイトでわかったのは、連続プレイ時間に関することだけ。
 連続プレイは八時間が限界なようだ。
 これは『FreeStyle Adventure』に限ったことではなく、フルダイブ型のVRゲームは総じて八時間をいう壁が設けられているらしい。
 脳への影響を考慮して、こういう法律が作られているとのこと。

「へぇ、全然知らなかった」

 この『FreeStyle Adventure』は、ゲーム内の時間の流れが現実と同じなので、連続プレイ以外の制限はないようだ。
 ただ連続五時間プレイした状態でログアウトすると、再ログインには一時間以上開けないとダメだと書いてある。
 パーティー中にトイレ~なんてなって、ログアウトしたらイン出来なくなった~というのを防ぐためにも、五時間経過する前にトイレ休憩は入れましようね――だってさ。
 俺八時間近くぶっ通しでプレイしてたよ……。
 尿意を感じるとゲーム内に警告メッセージが出るようだ。あとは事前にアラーム設定も可能だとある。
 四時間に設定しておくかな。

 それ以外の情報は無い。
 検索して――あ、攻略ウィキがあるじゃないか。

 ドロップアイテム情報ってどこで見るんだろう?
 錬金スキルは……あ、スキル一覧ってのがあるな。ここから錬金に――あー、うん。スキルの使い方が載っているだけで、錬金一覧は無いな。
 じゃあドロップ。
 モンスター情報から探せるだろうか?

 あったあった。更にリンクされてあって――あぁ、収集品と素材、武器防具に分けられるのか。
 収集品というのが、NPCに売るしかないアイテムで、素材にもならない物のようだ。
 チュチュの尻尾は収集品に該当していた。
 まぁ何に使うかって聞かれても、答えるのに困るアイテムだったもんな。
 肉はもちろん料理素材。チュチュのもな……コメントにも「これは食いたくない」と書かれていた。わかるよその気持ち。

 毛皮は装備素材か。あのまま敷いて玄関マットにも良さそうだけどなぁ。
 あ、『分解』スキルで毛と皮に分離できるようだ。こうやって皮装備にするんだな。

 ここで気になるコメントを発見した。

 素材系のドロップ率の悪さだ。
 収集品は高確率でドロップするが、素材に関しては五匹に一匹ぐらい。
 ただし『解体』スキルを使えば、ほぼ100%素材を取れるとある。

 手間が掛かるが、素材が欲しいなら『解体』しろ――と。
 尚、解体と聞いてグロテスクな物を想像するかもしれないが、解体ナイフを当てると数秒後には素材になっているから安心しる――ともあった。
 うん、それなら一安心だ。

 建築関係のページは無いかなぁ。

 ……無いな。

 というか、昨日から始まったってだけあって、情報が少ない。
 俺もウィキの更新に貢献してやりたいが、アイテム名も効果もほとんど覚えてないし。
 あ、焚火だ!
 焚火の有効範囲を――あ、もうあった。

 焚火を中心に、半径三メートル圏内が「明るさレベル」5に該当。
 弱い夜行性モンスターは明るさレベル3までは自主的に寄って来ない。
 ただし圏外から連れてきたモンスターであれば、明るい範囲内にも入ってくる――と。
 もちろん町や村を囲む壁を越えて入ってくることは無い。

「んん~、明るさレベルってのは――」

 明るさレベルについて探すと、焚火を例にして書かれている。
 焚火を中心に半径3メートル範囲が「明るさレベル5」。そこから50センチごとにレベルが一つずつ下がっていく。
 明るさレベル3は、焚火から3.5メートル以上、4メートル以内だな。
 つまり最低でも八メートルごとに灯りを用意しなきゃならないってことか。

 意外と縛りが厳しいな。
 電気なんてものはないだろうし、街灯はランタンとかだろうか。

 とりあえず、俺とワオール、それとにゃんごの住む家。それを囲うのに十分な広さから始めよう。
 最初からバカでかいものを作ろうとしたら、素材集めに手間取ってしまう。
 安全さえ確保できれば、夜だって活動できるんだ。

 まずは壁!
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,289pt お気に入り:2,216

甘い婚約~王子様は婚約者を甘やかしたい~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:385

女學生のお嬢さまはヤクザに溺愛され、困惑しています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:686

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,583pt お気に入り:91

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,059pt お気に入り:33

処理中です...