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2話 人間不信
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「ミアスタ……大丈夫か?」
「平気なの、ミアスタ!?」
お父様とお母様の声も私にはあまり届かなかった。私はどのように屋敷に帰って来たのかすら、覚えていなかったのだから。おそらくは普通に馬車で帰って来たとは思うけれど……。
「しばらく部屋に入っていてもよろしいでしょうか? 今日は疲れてしまいましたので……」
「ああ、そうだな。ゆっくりと休むと良い」
「ありがとうございます……」
本当は婚約破棄という不名誉な事態になってしまったことをお父様、お母様に謝りたかった。でも、今はそんな気力さえ生まれて来なかったのだ……。
私は部屋のベッドに乱暴に寝そべると仰向けになった。
「……とても、信じられないわ」
アウザー様がメリスと浮気をしていたなんて、いまでも信じられない。なんでこんなことになってしまったのだろうか? 私に魅力がないから? 私の仕事量が大したことなかったから? 単純にアウザー様の隣に立つにはふさわしくなかったから?
考えても答えなんて出るわけがない。その答えはアウザー様にしか分からないのだから。いえ、もしかすると彼にも答えなんてないのかもしれない。単純にメリスが好きだから浮気をした……それだけの可能性だって十分にある。
答えを知ることそのものが……意味のないことなのだ。
---------------------
それから1週間後……私は無気力に日々を送っていた。次のパーティーの予定は迫っているけれど、全く行ける精神ではない。私のことを噂する貴族が居るかもしれない……アウザー様とメリスの二人が出席しているかもしれない。それを考えるだけで、外へ出るのが怖くなってしまうのだ。私は人間不信になっていた……。
今は人に会うのが怖い……裏切られるのが怖くなっているようだ。
「あの、お嬢様……よろしいでしょうか?」
「あれ? どうかしたの?」
メイドの一人が部屋を訪ねて来たようだ。一体、何かしら……?
「入ってもいいわよ」
「失礼致します、お嬢様充てのお手紙が届いておりますが……」
「差出人は誰かしら?」
ないとは思うけれど、アウザー様やメリスからだったらどうしようと思ってしまっていた。もしそうなら、中身を見ずにその場で破り捨ててしまう自信だってある。
「はい……差出人はその、フィリップ・トルストイ公爵令息のようです」
「フィリップ……トルストイ公爵令息!?」
私はまさかの人からの手紙に驚きを隠せなかった。まさか、そんな地位のお方から手紙が届くなんて。特に幼馴染というわけではないのに。確かに面識はあるけれど……婚約破棄の直後だからか、手紙を見るのが怖くなってしまっていた。
でも、見ないわけにはいかないのよね。覚悟を決めるしかないか……。
「ええと……」
「なんと書かれているのですか?」
「わ、私と会いたいって書かれてる……えっ? どういうこと……?」
フィリップ様が婚約破棄のことを知っているかどうかは分からないけれど、今の私に会いたい? この申し出には非常に戸惑ってしまった……。
「平気なの、ミアスタ!?」
お父様とお母様の声も私にはあまり届かなかった。私はどのように屋敷に帰って来たのかすら、覚えていなかったのだから。おそらくは普通に馬車で帰って来たとは思うけれど……。
「しばらく部屋に入っていてもよろしいでしょうか? 今日は疲れてしまいましたので……」
「ああ、そうだな。ゆっくりと休むと良い」
「ありがとうございます……」
本当は婚約破棄という不名誉な事態になってしまったことをお父様、お母様に謝りたかった。でも、今はそんな気力さえ生まれて来なかったのだ……。
私は部屋のベッドに乱暴に寝そべると仰向けになった。
「……とても、信じられないわ」
アウザー様がメリスと浮気をしていたなんて、いまでも信じられない。なんでこんなことになってしまったのだろうか? 私に魅力がないから? 私の仕事量が大したことなかったから? 単純にアウザー様の隣に立つにはふさわしくなかったから?
考えても答えなんて出るわけがない。その答えはアウザー様にしか分からないのだから。いえ、もしかすると彼にも答えなんてないのかもしれない。単純にメリスが好きだから浮気をした……それだけの可能性だって十分にある。
答えを知ることそのものが……意味のないことなのだ。
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それから1週間後……私は無気力に日々を送っていた。次のパーティーの予定は迫っているけれど、全く行ける精神ではない。私のことを噂する貴族が居るかもしれない……アウザー様とメリスの二人が出席しているかもしれない。それを考えるだけで、外へ出るのが怖くなってしまうのだ。私は人間不信になっていた……。
今は人に会うのが怖い……裏切られるのが怖くなっているようだ。
「あの、お嬢様……よろしいでしょうか?」
「あれ? どうかしたの?」
メイドの一人が部屋を訪ねて来たようだ。一体、何かしら……?
「入ってもいいわよ」
「失礼致します、お嬢様充てのお手紙が届いておりますが……」
「差出人は誰かしら?」
ないとは思うけれど、アウザー様やメリスからだったらどうしようと思ってしまっていた。もしそうなら、中身を見ずにその場で破り捨ててしまう自信だってある。
「はい……差出人はその、フィリップ・トルストイ公爵令息のようです」
「フィリップ……トルストイ公爵令息!?」
私はまさかの人からの手紙に驚きを隠せなかった。まさか、そんな地位のお方から手紙が届くなんて。特に幼馴染というわけではないのに。確かに面識はあるけれど……婚約破棄の直後だからか、手紙を見るのが怖くなってしまっていた。
でも、見ないわけにはいかないのよね。覚悟を決めるしかないか……。
「ええと……」
「なんと書かれているのですか?」
「わ、私と会いたいって書かれてる……えっ? どういうこと……?」
フィリップ様が婚約破棄のことを知っているかどうかは分からないけれど、今の私に会いたい? この申し出には非常に戸惑ってしまった……。
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