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3話 フィリップ・トルストイ公爵令息
しおりを挟む「久しぶりだね、ミアスタ嬢。いきなり訪れてしまって申し訳ない」
「いえ、とんでもないことでございます」
フィリップ様から手紙が届いて数日、彼は私の部屋を訪れていた。お父様のツテで面識はあったけれど、久しぶりの再会になる。何を話せば良いのか、正直、分からなかった。
「あの……本日のご用件をお伺いしても宜しいでしょうか?」
「ああ、用件だったな。ミアスタ嬢のことが気になってな……」
「えっ、私のことがですか?」
よく分からない……なぜフィリップ様が私を気にするのだろうか。私は首を傾げてしまった。
「怪訝な様子になるのも仕方ないな。君はアウザー殿に婚約破棄をされたのだろう?」
「そ、それは……はい」
やっぱり、フィリップ様のところにも届いていたか……なんだか、とても恥ずかしいわ。
「それでミアスタ嬢の様子を見る為に、こうして訪れたことになる。それが用件だな」
「そ、そうだったのですね……ありがとうございます……」
私は戸惑いながらもフィリップ様にお礼を言った。嬉しい……のかな? まだ良く分からなかった。
「しかし、私の様子を見に来られるだけで、フィリップ様にご足労をお掛けすることになりました。申し訳ございません……」
「いや、気にしないでくれ。私としてもその……来たかっただけだからな」
「えっ?」
どういう意味だろう? 来たかっただけ……?
「いや、なんでもない。それよりも、アウザー殿はメリス嬢と婚約すると聞いている。どういうことなのだ?」
「そ、それは……」
「差し支えなければ、教えてくれないだろうか? もちろん、無理して話す必要はないが」
「いえ……大丈夫です。お話いたします」
事情はどうあれ、こうして様子を見に来てくれたフィリップ様だ。婚約破棄の理由については話すのが道理だろう。それに、やはり誰かに話してしまいたいという欲求も出ているしね。
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「そういうことだったのか。メリス嬢がアウザー殿と浮気を……」
「はい……私はその現場を見てしまいました」
「それはかなり辛かっただろうな」
「はい……心無い言葉を浴びせられましたし……」
アウザー様とメリスは私が無気力になっている事実は知らないでしょうね。あの二人のせいで、私は人生を台無しにされたようなものだ。
「それから……私は無気力に過ごしています……」
「そうだったのか。気持ちは分からなくはないが、あまり良い傾向ではないかもしれないな」
それは分かっている……でも、自分ではなかなか吹っ切ることが難しいのだ。
「よし! 今から少し出掛けないか? 部屋の中に居るとどうしても暗い方向に考えてしまうからな!」
「えっ……フィリップ様?」
彼はいきなり立ち上がると、私の腕を取ってそのまま立たせてくれた。出掛けるって……今から行くの? なんだか断る選択肢はないようだし、フィリップ様はお父様やお母様にはない強引な性格の持ち主かもしれない。
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