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9話 才能 その3
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(アレク・ギース侯爵視点)
一体どうなっているというのだ……? あの女、エリアスの持っていた技術は完璧にトレースできたはずなのに。エリアスが作っていた薬は問題なく販売出来ていたはずだ。1日で変色なんて苦情は来たことがないが……。
「くそっ! 一体、どうなっているのだ……」
「申し上げにくいのですが、アレク様。エリアス嬢の薬の技術をトレース出来ていなかったのではないでしょうか?」
「そんなわけがあるか。複数人で確認までしたのだ。奴の持っている技術はトレース出来ている。とにかく、製造過程に問題がないか早急に調べろ!」
工場長は苦い表情になった。私の言葉に不服があるのか?
「既に製造過程に異常がないかは確認済みです。確認の上、特に問題がないこともわかっております」
「なんだと……それではなぜ、作った薬が1日で変色してしまうのだ? エリアスはそんなことにはなっていなかったぞ?」
「詳しいところまでは分かりませんが……やはり、数カ月でエリアス嬢の技術を盗むのに無理があったのかもしれません。しかもそれを、工場生産体制に無理矢理組み込んだわけですから。その工程で無理が出てしまったのでしょう」
今さら何を言いだすのだ、この男は……それでは……マズイ。非常にマズいぞ。
「あの工場生産体制を作り上げるのに、いくら投資したと思っている? 作れませんでしたでは、言い訳にすらならないことは分かっているだろう?」
「それはもちろん分かっておりますが……ですが私は事実を申し上げているのです。なんど工程を見直しても薬の出来は決して良いものではありませんでした」
馬鹿な……いくらエリアスが才能を持っていると言っても、所詮は小娘の才能でしかないはず。それを盗んで工場生産体制にすることは容易だったはずだ。それが結果はどうだ? 1日で変色して使い物にならなくなる? こんな滑稽なことがあるのだろうか。
「あの大規模工場が失敗に終わる事態だけは避けなければならん。どうしたら良いものか……」
「提案と致しまして、エリアス嬢に戻って来てもらうというのはいかがでしょうか?」
「なんだと……エリアスに戻って来てもらう……?」
「はい、エリアス嬢に戻って来てもらえば技術に関して修正を行えるかもしれません。そうなれば、工場生産を成功に導くこともできるでしょう。ただ、これにはエリアス嬢の協力が必須にはなりますが」
工場長は真剣な眼差しだ。それ以外の選択肢はないと言われている気がした。今さらエリアスに戻って来てもらうだと……?
「馬鹿を言うな、工場長。私がどんな言葉であの女を追放したのか忘れたのか?」
「聞いてはおります。ですが、今のままでは工場の継続すら難しいでしょう。ここは下手に出てでもエリアス嬢を勧誘した方が良いかと」
「ぬうう……それは」
それしか方法がないというのか? 私がエリアスに対して下手に出るなど……信じられないことだ。いや、待てよ? エリアスは元々は子爵家の令嬢でしかない。今頃は意気消沈で家に籠っているところだろう。表向きは謝罪をして謝礼を支払うということをすれば良いのだ。
忌々しいが多少は下手に出てやるとするか。
一体どうなっているというのだ……? あの女、エリアスの持っていた技術は完璧にトレースできたはずなのに。エリアスが作っていた薬は問題なく販売出来ていたはずだ。1日で変色なんて苦情は来たことがないが……。
「くそっ! 一体、どうなっているのだ……」
「申し上げにくいのですが、アレク様。エリアス嬢の薬の技術をトレース出来ていなかったのではないでしょうか?」
「そんなわけがあるか。複数人で確認までしたのだ。奴の持っている技術はトレース出来ている。とにかく、製造過程に問題がないか早急に調べろ!」
工場長は苦い表情になった。私の言葉に不服があるのか?
「既に製造過程に異常がないかは確認済みです。確認の上、特に問題がないこともわかっております」
「なんだと……それではなぜ、作った薬が1日で変色してしまうのだ? エリアスはそんなことにはなっていなかったぞ?」
「詳しいところまでは分かりませんが……やはり、数カ月でエリアス嬢の技術を盗むのに無理があったのかもしれません。しかもそれを、工場生産体制に無理矢理組み込んだわけですから。その工程で無理が出てしまったのでしょう」
今さら何を言いだすのだ、この男は……それでは……マズイ。非常にマズいぞ。
「あの工場生産体制を作り上げるのに、いくら投資したと思っている? 作れませんでしたでは、言い訳にすらならないことは分かっているだろう?」
「それはもちろん分かっておりますが……ですが私は事実を申し上げているのです。なんど工程を見直しても薬の出来は決して良いものではありませんでした」
馬鹿な……いくらエリアスが才能を持っていると言っても、所詮は小娘の才能でしかないはず。それを盗んで工場生産体制にすることは容易だったはずだ。それが結果はどうだ? 1日で変色して使い物にならなくなる? こんな滑稽なことがあるのだろうか。
「あの大規模工場が失敗に終わる事態だけは避けなければならん。どうしたら良いものか……」
「提案と致しまして、エリアス嬢に戻って来てもらうというのはいかがでしょうか?」
「なんだと……エリアスに戻って来てもらう……?」
「はい、エリアス嬢に戻って来てもらえば技術に関して修正を行えるかもしれません。そうなれば、工場生産を成功に導くこともできるでしょう。ただ、これにはエリアス嬢の協力が必須にはなりますが」
工場長は真剣な眼差しだ。それ以外の選択肢はないと言われている気がした。今さらエリアスに戻って来てもらうだと……?
「馬鹿を言うな、工場長。私がどんな言葉であの女を追放したのか忘れたのか?」
「聞いてはおります。ですが、今のままでは工場の継続すら難しいでしょう。ここは下手に出てでもエリアス嬢を勧誘した方が良いかと」
「ぬうう……それは」
それしか方法がないというのか? 私がエリアスに対して下手に出るなど……信じられないことだ。いや、待てよ? エリアスは元々は子爵家の令嬢でしかない。今頃は意気消沈で家に籠っているところだろう。表向きは謝罪をして謝礼を支払うということをすれば良いのだ。
忌々しいが多少は下手に出てやるとするか。
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