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3話
しおりを挟む頼れそうな人……私の中では一人いたのだけれど、とても頼める相手ではなかった。キース・ローランド王子殿下になるのだけれど、私よりはるかに位の高い人だから。
彼とは昔、一緒に遊んだことがある。世間一般では幼馴染の関係というやつで……助けてもらえるのなら、これほど力になる人はいないと思うけれど。それに、彼は何年か前に留学しているはずだし。どのみち、頼める相手ではなかった。
「と、言うことなの……とても大変なことになっていて……」
「そ、そうなんだレイア……婚約破棄されただけじゃなくて、形見の品々を強奪されたわけね……」
強奪というのは少し違うけれど、確かに間違ってはいなかった。私は父さんと母さんの形見をエドモンドに強奪されたも同然なのだ。今、話している人物はアンネ・カルバトス子爵令嬢。私の親友である。キース王子とも面識のある人物で、彼女も幼馴染の一人だ。
「気を落とさないでね、レイア。きっと、良い解決案が生まれるわよ。ロベルト様が動いてくれているんでしょ?」
「うん。兄さんも動いてくれているわ。なんとか、解決案が纏まればいいんだけどね……」
はあ……ロベルト兄さんの人脈を使ったとしても、エドモンドに対抗するのは正直、難しかった。それだけ侯爵という立場は強いわけで……。中途半端に対抗したりすれば、エドモンドの激昂でマール子爵家が潰されかねない。そのくらいエドモンドは強い。だから、迂闊に動くわけにはいかなかった。
「レイア、気分転換でもしない?」
「気分転換? 何をするの?」
「貴族街に出掛けましょうよ。教会とかショップとか行ってみない?」
貴族街か……そういえばしばらく行っていなかった気がするわ。この1年は花嫁修業で忙しかったしね。丁度、息抜きはしたいと考えていたのでアンネの誘いは嬉しかった。
「そうね、アンネ。行きましょうか」
「やった! 久しぶりに二人で出掛けられるわね。じゃあ、早速行きましょうよ」
「なんだかご機嫌ね、アンネ。そんなに貴族街に行きたかったの?」
彼女はルンルン気分になっていた。今にも踊りだしそうな感じだわ。
「それもあるけれど、レイアと一緒に行けるのが楽しみなのよ。エドモンド様の下での花嫁修業は大変だったみたいだし……」
「う……あんまり思い出したくはないかも……」
確かにエドモンドの下での花嫁修業はしんどかったわ……あんまり思い出したくないわね。それに、最終的には婚約破棄されたし……すごい無駄な時間を使ってしまったかもしれない。
「でも、そのおかげで逆境に耐える精神も身についたんじゃない?」
「そうね……それはあるかも」
今だってこれ以上ない程の逆境だけれど、なんとか耐えている。これは花嫁修業を耐えた経験が活きているのかもしれない。
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