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2話
しおりを挟む「ロベルト兄さん……そういうわけなの。信じられないと思うけれど、本当のことで……」
「なんと……侯爵であるエドモンド様がそんな無慈悲なことを……」
「はい……」
「……」
私は屋敷に戻ってロベルト兄さんに事実を報告していた。兄さんは信じられないといった表情をしていたけれど、周囲の使用人達も同じような顔になっている。まあ、思うところは同じということね。
「単に婚約破棄をするだけでも恥だというのに……まったく悪びれる様子がないというのは」
「ええ……それどころか、父さんと母さんの形見である絵画と時計……それは返して貰うのが筋だと思うけど、それを頑なに断っていたわ。それと同じくして慰謝料も支払わないって……」
慰謝料を支払わないと言われたのは絵画と時計を返さないと言われた後だ。これも信じられないことだった。でも、慰謝料なんかよりも重要なのは絵画と時計だ。エドモンドが言うにはかなりの額になるようだけれど……額なんて関係がなかった。
「父上の絵画と母上の時計……その二つを彼に渡したのは、レイアと婚約したからだ。その親愛の証として贈った物で……こんな無慈悲な婚約破棄をされたのであれば、返して貰うのが筋だな」
「そうよね……でも、エドモンド様はこんな値打ち物が私達の家にあることは宝の持ち腐れと言っていたわ」
「そんなことを……」
信頼していたエドモンドに裏切られた……ロベルト兄さんはそんな印象だった。確かにロベルト・マール兄さんはエドモンドのことを最後まで信頼していたから、気持ちは分からなくはない。婚約してみて分かる本性というのは、外部からではなかなか分からないだろうからね。
「どうしよう、兄さん?」
「そうだな。エドモンドはおそらく、自らの地位の高さを利用して全てを収めるつもりだろう」
「そんな……父さん達の形見だけはなんとしても取り返さないと!」
婚約破棄をされたとしても、別の新しい人を見つけることは出来る。噂話も時間を経れば大丈夫だろう。でも、形見の品々はエドモンドに渡ってしまったら、二度と取り戻せないだろうから。こっちは特に必死になる必要があった。
「レイア、私は色々と人を当たってみようと思う。父上達の形見を取り戻すのに最善を尽くしてみよう。レイアも心当たりがあれば、当たってみてくれないか?」
「わ、わかったわ……急いでやってみようと思う」
「よし。早速、行動開始と行こうか!」
心当たりを当たる……それはつまり、助けてくれそうな人を当たると言う意味で。私の中で頼れそうな人は……。
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