元婚約者は私が有名な画家だったことを知らないようです。貴方様には絶対に売りません

19話 ギゼフ様との会話 その3

「お前は、メイドの一人であろう？　私にそのような口の利き方は……！」

　ギゼフ様はライズを叱責しているようだったけれど、かなり引き気味だった。キース様が一緒に居るから強気に出れないのでしょうね。ライズも全く動揺している様子はない。本当にこの子は凄い肝っ玉を持っているわ……。

「私はギゼフ様のことを考えて発言しております。キース王子殿下の言葉を真摯に受け止め、これ以上の言い訳をせずに罰を受けた方が、総合的には傷は浅くて済むでしょう」

「そ、それは……」

「ライズの言う通りだ、ギゼフ殿。余計な言い訳は偽証罪や不敬罪、公務執行妨害罪など、余計な罪を作ることになりかねないぞ？　罪が増えればランバル侯爵家の存続にも影響してしまうだろうな」

「キース王子殿下……しかし、私は嘘を吐いているわけでは……」


　明らかに嘘を吐いているけれど、ギゼフ様はどうやら罪に問われること自体が納得出来ていないようだった。だから、見苦しい言い訳に終始してしまうのでしょうね。それで逃れられると信じているから……。

「私の裏付けが不十分だと言いたいのか？」

「い、いえ……決してそういうわけでは……」

「それとも、他の貴族達がギゼフ殿を庇っているとでも思っているのか？　私とギゼフ殿に問い詰められて、ギゼフ殿を選ぶ貴族が何人居るかということだな」

「くっ……！　それでは……！」

　答えは決まっていた。ギゼフ様に強制的に徴発された貴族が、キース様に嘘を言うはずはないし。

「ああ、お前が脅しを掛けていた貴族達が暴露してくれたよ。最早、言い逃れは出来ないだろう」

「そ、そんなことが……！」


　ギゼフ様は自分の出来る限りのコントロールをしたつもりなんだろうけれど、相手がキース王子殿下の場合は話が違うようね。他国の貴族達に対する信用問題に発展する前に、ギゼフ様を糾弾出来て良かったと言えると思う。

「ギゼフ殿、今の段階で自分の過ちを認めるのであれば、偽証罪や公務執行妨害罪には問わないでおいてやろう。どうするのだ？」

「くっ……それは……」

　ギゼフ様は明らかに肩を落としていた。自らの罪を重くする理由はないはず……彼の答えは決まったようなものね。