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5話

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(アース・テラー男爵視点)

「ふう、やれやれ。マリスを厄介払いできたのは上出来だったかな」

「そうですね、あなた。あんな悪魔の子は私達の子供ではありませんよ。15歳まで育てたことに感謝して欲しいですわ」

「全くだな。願わくば15歳でロックリーという伯爵家に嫁いでくれたことを感謝するばかりか。あそこの伯爵令息は研究ばかりの変人と聞くが……まあ、呪われた子が嫁ぐにはぴったりだったかもしれん」


 厄介者のマリスはいなくなった……これは我が家にとっては願ったりなことだった。呪われた子をいつまでも持っているわけにはいかないからな。伯爵家に嫁がせたのは最良と言えるだろう。ロックリー家からの金銭がかなりのものになるからな

「結果としてマリスは我が家が潤うことに貢献してくれた。その点に関しては感謝するべきかもしれないな」

「まったくですわね。まあ、あんな子は我がテラー家を潤して当然と言えますけどね」

「まあ、そういう見方もできるか」


 呪われた魔法使いの子……それだけでも奇妙なレッテルが貼られると言うのに、あの子はならず者とはいえ人間を傷付けている。私達の家系に対するバッシングは相当なものがあった。本当ならすぐにでも放り出したい気持ちだったが、なんとか15歳までは育てることに成功した。

 私達が受けた苦しみを考えれば、15歳まで育てたことに感謝してほしいくらいだ。そして、ロックリー家への厄介払いが完了した。まさに完璧な布陣を形成したと言えるだろう。

「我がテラー家は男爵家でしかないが……厄介払いが済んだとはいえ、底辺の貴族である事実は変わらない。今後はさらに上を目指していく必要があるな」

「そうですわね。長男のアカムと長女のイリアにはさらに上の家系との関係を期待していますわ」

「まあ、その通りだな」


 厄介者のマリスですら、変人扱いとはいえ伯爵家へ嫁ぐことに成功したのだ。優秀な二人であれば侯爵家以上への関係性の構築も不可能ではあるまい。そうすれば我がテラー家の地位の向上にも役立つというものだ。

「我が子の活躍に期待したいものですね」

「その通りだな」

 マリスは正式には我が子とは認めていない。私の子はアカムとイリアの二人だ。あの二人ならば確実にマリス以上の功績を残してくれるはず。我が家の地位は安泰と言えるだろうか。
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