異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

文字の大きさ
1,032 / 1,138
連載

芋を掘る!

しおりを挟む
「おばぁちゃーん!」
 鳥居を通り、あっという間に源治の家に到着した千春は玄関を開け声を掛ける。

「はーいはいはい、いらっしゃいチーちゃん、みんなもいらっしゃい。」
 文恵はニコニコと笑いながら皆に声を掛ける。

「失礼致します。」
 エンハルトが頭を下げると、文恵はクスクス笑う。

「かしこまらなくても良いわよ。」
「おばぁちゃん、おじぃちゃんは?」
「裏で芋ほりの準備してるよ。」
「手伝ってくるー!」
 千春はそう言うと、裏に走る、千春の後ろからユラと頼子が付いて行く。

「お婆様、何かお手伝いは有りますか?」
「そうだねぇ、チーちゃんと一緒に沢山芋をとって来てちょうだい。」
「はい。」
 文恵に言われ、サフィーナは頷く。

「ハルトー!手伝ってー!」
 千春の声が裏から聞こえる、エンハルトは玄関を出ると千春の持つ鍬を受け取る。

「これ軽トラに乗せといて~♪」
「わかった。」
 嬉し気に言う千春に思わず笑みを零すエンハルト、アリンハンドも手伝い、籠や鍬、スコップやバケツ、大きな袋を軽トラに積み込む。

「おじぃちゃん、畑遠いの?」
「そう遠くはないが、チー、軽トラ運転するか?免許取ったんだろ?」
「とったけど、それオートマじゃないよね?」
「おう、ミッションだ、チーはオートマか?」
「うん、運転出来ないよ。」
「オートマ買うかな。」
「買わなくて良いよ!」
 ゲラゲラと笑う源治は、倉庫を指差す。

「あっちに乗用車がある、それなら乗れるだろ。」
「え?車有るの?」
「あるに決まってるだろ。」
「いつもコレじゃん。」
 千春は軽トラを指差す。

「婆さんと遠くに買い物行くときはそっちに乗ってるぞ。」
 源治はそう言うと車庫のシャッターを開ける、中にはトラクターの横にハコバンが並んでいた。

「おー!」
「これにみんな乗れるだろ。」
 源治は千春達を見る、春恵、頼子、ユラ、エンハルト、アリンハンド、サフィーナ、モリアンが並んでいる。

「これ何人乗り?」
「6人乗れるぞ。」
「・・・2人乗れないんだけど。」
「こっちにも乗れるだろ。」
「2人乗りじゃん。」
 千春はもう一度人数を数える、するとルプが姿を現す。

「俺がユラを乗せて行けば良いだろ。」
「目立つよ!?」
「俺とユラは姿を消していけば良いだろ。」
「まぁそれならいっか。」
 ルプはユラを背中に乗せる、そして。

「千春、はい鍵。」
 春恵がハコバンの鍵を千春に渡す。

「・・・え?」
「運転するんでしょ?」
「しないよ!?」
「オートマよ?」
「いやいやいやいや!私が皆の命預かるの無理だから!」
 そう言うと千春は頼子を見る。

「見るな!」
「えぇ、あ、おかぁさんが運転すれば良いじゃん。」
「えー、面白くないじゃない。」
「面白くなくて良いよ!?」
 千春は鍵を春恵に押し付ける。

「爺ちゃんの方には誰が乗るんだー?チーか?」
 源治の言葉に千春はモリアンを突き出す。

「はい、モリーそっちね。」
「えー!?」
「王女命令です。」
「・・・こういう時だけ王女って言う!」
 モリアンはそう言うと、軽トラの助手席に乗る。

「みんな乗りこめー!」
 千春が言うと、皆は車に乗りこむ、そして畑に向かった。


-------------------------


「田園風景~♪」
 千春は窓から顔を出し呟く、視線を感じ目を動かすと、不自然になびく草むらからルプとユラが見える、ユラは楽し気に手を振り、千春は手を振り返す。

「姿見せてんじゃん。」
「人少ないし大丈夫じゃね?」
 後から頼子が答えると、白蛇姿のビェリーが答える。

「わっちら以外には見えんばい。」
「あ、そういう術ね、それならいいや。」
 千春はもう一度ユラに手を振る、暫く走ると軽トラがハザードランプを焚く。

「着いたくさーい。」
 千春が言うと、春恵は軽トラの後ろに車を止める、大きな畑にはさつまいもの葉が生い茂っていた。

「おおお!おじぃちゃんこれ全部さつまいも!?」
「おう、ここらの爺さんたちでやっとる共同畑だ。」
「あ、おじぃちゃんの畑じゃないんだ。」
 沢山の畝に生い茂る緑の葉、すると軽トラの助手席からモリアンが降りて来る。

「・・・」
「おつかれモリー!」
「・・・ジブラロールの馬車なみに揺れました。」
「だろうね!」
「知ってたんですかぁ!?」
「うん♪」
 車道から外れ、アスファルトの無い農道は砂利が敷き詰められた道だ、所々に水たまりの跡なのか凹みもあった、そして源治の軽トラはサスペンションが古いのか、かなり揺れるのだ。

「あそこからあそこまでなら幾らでも穫っていいぞ。」
 源治が指差す先、広い畑の端から端を指差す。

「いや、そんなに取らないよ?おじぃちゃん。」
「そうか?ルプならイケるだろ。」
 気付けばユラを降ろし、田舎の空気を楽しんでいるのか嬉しそうに空を見上げるルプが居た。

「ルプ穫れるの?」
「無理だろ。」
 呆れたように答えるルプ、源治はゲラゲラ笑いながら荷物を降ろす。

「まぁ好きなだけ穫ればいい。」
「はーい!それじゃハルトはこれー。」
 千春はエンハルトに鍬を渡す、ついでにアリンハンドにも渡すと、バケツとカゴを手にする。

「ユラ、軍手つけてね。」
「はーい!」
「千春、もう穫っていいの?」
「いいよん!」
「ヨリおねーちゃんやったことあるの?」
「うん、そう言えばジブラロールじゃ芋ほりとか無いの?」
 頼子はアリンハンドに問いかける。

「芋を掘るんですか?」
「うん。」
「ないですね、私も初めてです。」
 アリンハンドの言葉にエンハルトも頷く。

「こういう事は農家の者しかやらないからな、チハルたちはやるのか?」
「学校行事でやるよ♪」
「仕事か?」
「んにゃ、情操教育、土を触って自然の関心、食材の感謝、達成感とか協調性なんかも勉強出来るんだよ。」
「ほぉ、それは初耳だな。」
「ジブラロールでもやれば良いのに。」
「そうだな、学園長に相談してみよう。」
「うんうん、学園長に説明するなら私も手伝うし♪」
「いや、それは大丈夫だろう、学園長はケンタ殿だからな。」
「・・・はい?え?石田先生が学園長なの!?」
「そうだぞ?知らなかったのか?」
「知らなかったよ!え!?いつそんな出世したの!?」
「3大月ほど前だな。」
「・・・知らなかったよ、ヨリしってた?」
「んにゃ、初耳、もうすぐアヤネちゃん赤ちゃん生まれるくらいしか知らないね。」
 頼子は軍手を付け、手をニギニギしながら答える。

「もうすぐらしいねー、まぁアイトネが祝福してたしスティカもポンって生まれるっしょ♪」
 気楽に答える千春、そして軍手を付けたユラを連れ、畑に降りると、千春は手前にあったサツマイモの蔓を手に取る。

「ユラ、この付け根の所にあるからね。」
「これ?」
 ユラは土に埋もれた蔓を指差す。

「そそ、そこ、おじぃちゃんこれひっぱっていいの?」
「あー、ここに一回鍬をいれてな。」
 源治は畝に鍬を刺すと捏ね上げる。

「ほれ、引っ張ってみろ。」
 源治に言われ、ユラはゆっくりと力を入れて行く、そして。

「おー!沢山ついてる!」
 ユラが引く蔓の先に連なる沢山のさつまいも、千春はユラを支えながら一緒にひっぱる。

「いっぱーい!!!」
「凄いですね。」
「こんな風に獲れるんですねっ。」
 サフィーナとモリアンもユラの横に寄ると土を払う。

「うん、良い感じだな、ハルト君、アリン君、その下にまだ芋があるから掘ってくれるか?」
「はい、ここですね。」
 エンハルトも鍬で、アリンハンドはスコップで畝を崩す、ボロボロと出て来るさつまいもに2人も笑みを零す。

「面白いな。」
「ええ、子供に戻った気分です。」
 2人は残った芋の土を払いながら籠に入れる、横では次の蔓を手にユラが準備をしていた。

「サフィー、モリー、そっちの掘ってー。」
「良いんですか?」
「やっても良いんですか!?」
「いいよー、私もやろーっと♪」
 エンハルト、アリンハンド、源治が畝に鍬を入れ、皆はさつまいもを収穫していく、初めての芋ほり体験にジブラロール組は子供の様に楽しむ。

「沢山ついてますぅ!」
「チハル、沢山付いてます!」
「土落としてこの籠にいれてー!」
「ビェリー!ちょ!手伝って!」
「みんな子供やん。」
「楽しそうだから良いじゃねえか。」
 ビェリーとルプは楽し気にはしゃぐ千春達を見て微笑んだ。







 


 
しおりを挟む
感想 3,751

あなたにおすすめの小説

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さら
恋愛
 私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。  そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。  王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。  私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。  ――でも、それは間違いだった。  辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。  やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。  王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。  無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。  裏切りから始まる癒しの恋。  厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。