転生少女は自由気ままに今世を楽しむ

紅 蓮也

文字の大きさ
14 / 24
第一章 カルディナ王国編

第13話 アルテミス、新たな神獣と契約する

しおりを挟む
 私は、フェニックスの話を聞いて、涙が溢れてきて泣いてしまった。

 色々な思いが駆け巡って、嬉しさ、寂しさ色んな感情が入りまじった涙だ。

「どうしたんだい?アルテミス」

「どうしたの?」

 急に泣き出した私の元にやって来て、お父様とお母様が泣き出した理由を聞いてきた。
 イリスも心配そうな顔している。

「グスン……私を助けるためにお父様とお母様が国を出る原因になった風習が……グスン……廃止になるかもと聞き……グスングスン……お父様とお母様が国に戻れるのと姉様に会えるという嬉しさ……グスン……最近、森からも出れるようになり出会った人々、森に住む魔獣や動物のお友達と……グスングスン……別れなければならないという悲しさが沸き上がって来て、涙が出てきてしまいました……グスン」


 私はみんなに涙の理由を涙ながらに説明した。


「そうか。アルテミスは、優しい子だね。
 まだ廃止されたわけじゃないから今すぐカルディナ王国を離れるとかではないからね。
 でも、いつ離れることになってもいいようにたくさんいい思い出を作っておけばいいんだよ。
 それにラルフェーリア王国に戻ったとしてもカルディナ王国は友好国だから二度と来れないわけじゃないからね。安心しなさい」


「そうね。いつまでもその優しさを持ち続けてね。それに風習が廃止されるのであれば、カルディナ国王の提案は、とてもアルテミスのために役立つわね。賛成しといて良かったわ」

 お父様とお母様が泣いている私を慰めてくれた。
 優しい二人の子として生まれて本当に良かった。

「あと一つ聞いてもいいですか」

「なんだい?」

「なあに?」

「フェニックスってハイエルフやエルフにとって特別な存在なのですか?」

「そうだよ。フェニックス様は、ラルフェーリア王国の守護神獣様なんだよ。
 私たちハイエルフやエルフたちを護ってくれている存在だね」

「そんなことないよ。ラルフェーリア王国の初代国王だったルシファーとの契約で、何かあった時にちょっと手助けをしてあげているだけだからね。
 まあ、ルシファーのどんなことがあろうと子供は大切にという想いを無下にするような風習を作ったラルフェーリア王国に対して、僕も我慢の限界だからこのままだと守護神獣の役目を辞めるつもりでいるけどね」

 初代国王のルシファーさんは、フェニックスにとって大切な存在なんだね。

 今のままだとフェニックスが守護神獣を辞めてしまう。
 そうすると何かあった時に助けてくれなくなってしまう。

 ラルフェーリア王国には、お姉様も叔父夫婦と従弟もいるのだ。

 お父様とお母様に連れられ生まれて直ぐに国を出た私には他のハイエルフやエルフたちのことまでは考えられないけど、身内が困るようなことはない方がいい。

 それにフェニックスの大切な初代国王が愛した国なのだどうにかしてあげたいと思った。


「そうだ。アルテミス。アルテミスはルシファーに似ているから僕と契約しようよ。
 そうしたらアルテミスがラルフェーリア王国の王にならなかったとしてもラルフェーリア王国の守護神獣を続けてあげるよ」

「よろしくお願いします」

 私は、フェニックスの提案に迷うことなく即答した。

「じゃあ、名前を付けてくれるかな」

「初代国王と契約していたなら初代国王から付けてもらった名前があるんじゃないの?
 名前を捨てることになっちゃうと思うんだけどいいの?」

「大丈夫だよ。ルシファーとは魔力だけによる契約だったから名付けはされてない。
 アルテミスとするのは、魔力と名付けの契約だから最も強固な契約だよ。
 魔力は、僕の怪我を治してもらった時にもらったからあとは名付けだけだよ」

「じゃあ、ルクス」

「うん。気に入った。今日から僕はルクスだ。
 カエサルとマリアも今後はそう呼ぶようにね」

 こうして私は、新たな神獣との契約を完了した。
 あとはラルフェーリア王国の風習が廃止されれば、ラルフェーリア王国は大丈夫だね。

 初代国王ルシファーからルの一文字もらって、フェニックスのクスを合わせてルクス。
 我ながら安易な名前にしたものだ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...