27 / 39
第27話『微笑む王妃候補と騒がしすぎる家族』
しおりを挟む
「……で? 結局“本物”だったってことですか?」
翌朝、王宮の一室。
リアーナが紅茶を口に運ぶ横で、レオンが開いたままの新聞を突き出してきた。
『舞踏会で感応石が反応!? 王妃候補の父に“高貴な血”疑惑』
『黒髪の公爵、銀の煌き――王家の忘れ形見か』
『新王リセル殿下の義父、出自に謎あり』
「……ずいぶん派手な書き方ですこと」
「おかげで朝から面倒でしたよ。王宮の通路で侍女たちに囲まれましたからね。
“王妃候補の弟様は、やはり特別な血を?”って……僕は別に王になりたくないんですけど!」
レオンは眉間にしわを寄せながら、ぐいっと紅茶をあおる。
その横顔に、微かに銀が閃いたのは――たぶん気のせい。
リアーナはため息交じりに笑った。
「でも、父様も母様も、特に気にしていないみたいよ?」
「そこが一番恐ろしいんです。
クラリス母上は“意図的に誤解させるスキル”の権化だし、
父様は“微笑んで黙る”だけで記者を黙らせる。……反則ですか?」
「それを我が家では“会話”と呼ぶの」
「会話の定義、壊れてますからね……」
レオンはぐったりと椅子に沈んだ。
---
一方、王宮では未だ噂が渦巻いていた。
「セシル公爵の魔力量は、規格外だそうですよ」
「いや、噂では王家の魔導剣士の“古き血統”とも……」
「となると、あの令嬢――リアーナ様も?」
「……あの微笑で国ごと睨みつけられる気がする」
人々の想像と妄想は止まらない。
だが、当のリアーナはと言えば。
午後の庭園。
リセルとの散歩中、軽く視線を流しただけで――
「今日も平和ですわね」
「いや、さっき三人くらい庭師が足滑らせて逃げてったけど……」
「気のせいでしょう。……気圧のせいですわ」
「……怖い。天候の責任にされるの、怖い」
リセルは苦笑しながらも、リアーナの横顔を見つめた。
「でも……そんな中でも君は、まったく動じないんだな」
「ええ。“母の娘”ですから」
さらりと告げたその一言は、どんな弁解よりも力強かった。
---
その日の夜、クラリスは一通の手紙を開いていた。
差出人は、国外のある王家。
『――貴女のご息女について、正式な関係性の確認を求める。
彼女が王族の血を引く可能性があるならば、協議の場を――』
「……やっぱり来たわね」
クラリスは冷ややかに笑う。
「さて、セシル。
王族の血を隠した“公爵様”は、どう応えるのかしら?」
彼女の言葉に応じるように、隣室で響くセシルの静かな声。
「……さて。答えるべきは、私ではなく――娘たちだよ」
翌朝、王宮の一室。
リアーナが紅茶を口に運ぶ横で、レオンが開いたままの新聞を突き出してきた。
『舞踏会で感応石が反応!? 王妃候補の父に“高貴な血”疑惑』
『黒髪の公爵、銀の煌き――王家の忘れ形見か』
『新王リセル殿下の義父、出自に謎あり』
「……ずいぶん派手な書き方ですこと」
「おかげで朝から面倒でしたよ。王宮の通路で侍女たちに囲まれましたからね。
“王妃候補の弟様は、やはり特別な血を?”って……僕は別に王になりたくないんですけど!」
レオンは眉間にしわを寄せながら、ぐいっと紅茶をあおる。
その横顔に、微かに銀が閃いたのは――たぶん気のせい。
リアーナはため息交じりに笑った。
「でも、父様も母様も、特に気にしていないみたいよ?」
「そこが一番恐ろしいんです。
クラリス母上は“意図的に誤解させるスキル”の権化だし、
父様は“微笑んで黙る”だけで記者を黙らせる。……反則ですか?」
「それを我が家では“会話”と呼ぶの」
「会話の定義、壊れてますからね……」
レオンはぐったりと椅子に沈んだ。
---
一方、王宮では未だ噂が渦巻いていた。
「セシル公爵の魔力量は、規格外だそうですよ」
「いや、噂では王家の魔導剣士の“古き血統”とも……」
「となると、あの令嬢――リアーナ様も?」
「……あの微笑で国ごと睨みつけられる気がする」
人々の想像と妄想は止まらない。
だが、当のリアーナはと言えば。
午後の庭園。
リセルとの散歩中、軽く視線を流しただけで――
「今日も平和ですわね」
「いや、さっき三人くらい庭師が足滑らせて逃げてったけど……」
「気のせいでしょう。……気圧のせいですわ」
「……怖い。天候の責任にされるの、怖い」
リセルは苦笑しながらも、リアーナの横顔を見つめた。
「でも……そんな中でも君は、まったく動じないんだな」
「ええ。“母の娘”ですから」
さらりと告げたその一言は、どんな弁解よりも力強かった。
---
その日の夜、クラリスは一通の手紙を開いていた。
差出人は、国外のある王家。
『――貴女のご息女について、正式な関係性の確認を求める。
彼女が王族の血を引く可能性があるならば、協議の場を――』
「……やっぱり来たわね」
クラリスは冷ややかに笑う。
「さて、セシル。
王族の血を隠した“公爵様”は、どう応えるのかしら?」
彼女の言葉に応じるように、隣室で響くセシルの静かな声。
「……さて。答えるべきは、私ではなく――娘たちだよ」
10
あなたにおすすめの小説
王太子に理不尽に婚約破棄されたので辺境を改革したら、王都に戻ってきてくれと言われました
水上
恋愛
【全18話完結】
「君は中身まで腐っている」と婚約破棄されたエリアナ。
そんな彼女は成り行きで辺境へ嫁ぐことに。
自身の知識と技術で辺境を改革するエリアナ。
そんな彼女を、白い結婚のはずなのに「膝枕は合理的だ」と甘やかす夫。
一方、エリアナを追放した王都では、彼女の不在の影響が出始めて……。
ガハハと笑う公爵令嬢は、王太子の自由を縛らない ~水戸黄門ムーブでざまぁします~
ふわふわ
恋愛
「公爵令嬢? 柄じゃねえな!」
前世の記憶が蘇った瞬間、
ウィンタースイート公爵令嬢ガラリアは“貴族らしく生きる”ことをやめた。
怒鳴る、笑う、現場に出る。
孤児院、病院、工事現場――
権力ではなく足で歩き、不正を正す水戸黄門ムーブが彼女の日常。
その振る舞いを理由に、婚約者からはあっさり婚約破棄。
しかしガラリアは気にしない。
「オーケー、俺もそう思う」
ところがその自由さに目を留めたのは、
理解できないまま理解しようとする王太子ディーンだった。
「あなたの自由を縛るつもりはありません」
型破りな公爵令嬢と、束縛しない王太子。
静かなざまぁと、現場主義の信頼が積み重なる、
“笑っているのに強い”逆転恋愛譚。
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
役立たずと捨て石にされたコミュ障皇女は、死地に送られ愛される
なかの豹吏
恋愛
テオリカンの皇女、ヴァレリア。
三姉妹の末娘である彼女は社交性も乏しく、挨拶をしてもどもるばかり。
年の離れた公爵令息に言い寄られるも、それを狙う姉に邪魔だと邪険に扱われる始末。
父親から社交界では使えないと評され、ヴァレリアは十三歳にして滅亡寸前の弱小国、ドミトリノ王国へ謀略の為の『生贄』として差し出されるのであった。
そこで結婚相手となる皇子、マリウスと出会い彼と接するうちに恋心が芽ばえるヴァレリア。
だが今回の結婚の目的は、テオリカンがドミトリノ王国を奪い取る為の謀略だった。
負け戦とわかっていてもなお決起に燃えるマリウス率いるドミトリノ王国軍。
その出陣前にヴァレリアは―――。
無能な私を捨ててください!と婚約破棄を迫ったら溺愛?
萩月
恋愛
公爵令嬢のルルナには悩みがあった。それは、魔力至上主義のこの国で、成人を過ぎても一切の魔力が開花していない「無能令嬢」であること。
完璧超人の第一王子・アリスティアの婚約者として相応しくないと絶望した彼女は、彼を汚点から守るため、ある決意をする。
「そうだ、最低最悪の悪役令嬢になって、彼に愛想を尽かされて婚約破棄されよう!」
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
冷徹王子に捨てられた令嬢、今ではその兄王に溺愛されています
ゆっこ
恋愛
――「お前のような女に、俺の隣は似合わない」
その言葉を最後に、婚約者であった第二王子レオンハルト殿下は私を冷たく突き放した。
私、クラリス・エルデンは侯爵家の令嬢として、幼い頃から王子の婚約者として育てられた。
しかし、ある日突然彼は平民出の侍女に恋をしたと言い出し、私を「冷酷で打算的な女」だと罵ったのだ。
涙も出なかった。
あまりに理不尽で、あまりに一方的で、怒りも悲しみも通り越して、ただ虚しさだけが残った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる