侘助。

ラムネ

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 二十歳過ぎ、俺の『初めての男』になったのは、就職したバイクメーカーの製造ラインに配属されていた時に職場で出会ったベラルーシ人。名をキリルと言った。

 おじいちゃんかおばあちゃんが日本人だと言うクォーターで、彫りの深過ぎないイケメン且つめちゃくちゃ優しい男だった。片言の日本語にもツボった。
 こっちのそこはかとない好意を感じ取ったのか、なんかめっちゃ口説かれてあれよあれよと関係を持ち、三日と開けず俺のアパートにやって来てはメシを食っていた。ついでに俺も食われていた。

 そしてダラダラと一年ほどが経ったある日、購入予定だったバイクの頭金、郵便局から下ろしてきたばかりの50万円と共に寮からも職場からも消えた。
 絵に描いたような手口だが、警察に届け出てキリルとの関係を根掘り葉掘りされるのも面倒だったので高い授業料だったなーと思って諦めた。

 キリルが50万で幸せになれたのかは知る由もないが、どっかの空の下で元気にやってるならそれでいい気もする。うん。

 その次は整備士として配属された直営店で営業担当だったカネシロ。
 コイツとは五年くらい続いた。五年間、やっぱり三日と開けずウチでメシを食って寝て、何か盗られる事は無かったものの割と気持ちは持って行かれ……いやこれルパンとクラリスみたいな言い回しだなー。

 が、ある日『そろそろ彼女と結婚するわー』って言われてびっくりした。
 社外にとは言え彼女が居たなんて気付きもしなかったし、フツーにゲイ仲間だと思い込んでいた俺の間抜けさにもびっくりした。

 で、職場ではそれなりに仲のいい同僚を装ってたんで結婚披露宴にまで出席する羽目になった。
 そしてそのせいで実家に戻るまで十年以上、毎年毎年家族写真付き年賀状を受け取る羽目にもなった。奥さんは社会的常識のあるマメな性格だったんだろうと思われる。

 こっちもまあ、幸せならそれでいいんじゃないかなーと思う。


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