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しおりを挟む「藤。終わった?」
「うん。反町はまだやんの?」
「いーや。もう片付けて鍵返さないと」
例年より雨ばかりの六月中旬。校舎四階、音楽室の窓の外はもう薄暗く、見下ろす校庭がやけに茶色く烟って見える。雨粒が当たって流れ落ちる窓ガラスに背を向け、反町がコントラバスを大事そうに仕舞う様子をぼんやり眺める。
「いつ見てもデカいなー」
「そりゃまあ弦バスだし」
身長173センチの反町と変わらない、巨大なバイオリンみたいなコントラバス。反町がこの楽器を弾き始めた中一の頃はまだ身長が155センチ程だったらしく、踏み台に乗って弦を押さえていたそうだ。顧問である音楽教師及び先輩に来る日も来る日もそれはもう扱かれ、血反吐を吐きながらどうにか演奏出来るようになったと笑っていた。
俺、反町と同じ二中が良かった。そしたら、この大きな節張った左手がどうやってぶっとい弦を押さえられるようになったのかとか、いや、そもそもの紅葉みたいな可愛らしい手(本人談)からエイリアンの幼生(俺命名)みたいな手に育って行った過程とか見られた訳で。
「藤って楽器に興味ないくせにすんげー見るよな、いっつも」
「そう?」
「そう」
俺が見ているのは反町だ。反町の手と、コントラバスの(バイオリンもチェロもだけど)ヘッド部分の渦巻きの造作が好きだから。
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