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しおりを挟む雨の日は、木製の楽器にとっていい影響がないらしい。竿が撓んだり弦が錆びたり、乾燥したヨーロッパで生まれたものに高温多湿の日本は向かないとかなんとか、反町はぶつぶつ文句を言った。
でも俺は、この渦巻きがかたつむりみたいで雨によく映えると思う。音楽に縁遠い俺はきっと呑気なんだろう。
最後にしまうのは弓。それは反町個人の所有。山吹色の裏張りがある黒い箱に収め、ラッチをぱちんぱちんと閉める仕草も好き。
そしてコントラバスの教則本、使い込んだシマンドルと檜山ノートを雨に濡らさないようファイルケースに入れて更にレジ袋で保護してから大きな赤いリュックに突っ込み、俺に窓の施錠を確認させる。
エアコンを消し、次いで照明が消えた音楽室は、薄闇の中のバッハやモーツァルトの肖像画が滑稽なまでに不気味だ。毎回『学校の七不思議』が頭を過ぎるけど、その話は一度もした事がなかった。
「剣道部は今週の市内大会で最後だっけ」
「弱いからなー。夏休みまで勝ち残れんわー」
「俺らマジでよく続けたよな」
幼少期から細々と続けて来た剣道から漸く離れられる、と俺は思う。家族との約束通り、高校まで頑張ったし。戦績は全く振るわなかったけど頑張ったし。大学に受かったら好きな事をしていいって言質は取ってある。自宅通学限定だけど。
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