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しおりを挟む反町は都会で進学したいらしい。例えば音大でコントラバスを続けたいとかじゃなく、ただ、この町や親元から一度は離れてみたいそうだ。
「藤の家、めっちゃ厳しいよなー」
「爺ちゃんも父ちゃんも兄ちゃんも警官だからかなー」
剣道をやらされたのもそのせいだ。小学校に入学した頃、俺はサッカーがしたかったのに、家の空気的に言えなかった。近所の友達が誘い合って地元のサッカー少年団に入った時は心の底から羨ましかった。
今も。自分の硬くて分厚い掌と無骨な指の形を感じるたび、反町の大きくて柔らかそうな掌や、しなやかで長い指が羨ましいと思う。
俺はいつも、求めているものを空気的に言えない。
職員室に音楽室の鍵を返すと、廊下を歩きながら、反町は左肩に掛けていたリュックを前に回した。雨の日は、弓や教則本が濡れないように、いつもこうして持ち替えるんだ。
「赤ちゃん抱っこしてるみたい」
「そうだなー。大事なもんはやっぱり、こうして抱きたくなるんだろうなー」
いつか。
反町は好きな女性と結婚して子どもを作る。『大事なもん』を胸の中に抱いて生きて行くんだなーと、そんな事を考えたりする。
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