かたつむり

ラムネ

文字の大きさ
13 / 16

P.14

しおりを挟む
 
 慌ててデスクを片付ける。ラインすべきかと一瞬思ったけど、それより帰り支度を急ぐ事が先決だと思えた。
「帰るんですか?」
「うん。お先。お疲れ」
「お疲れ様でーす」
 美しい垂水くんの顔も今は名残惜しくない。

 一基しかないエレベーターの待ち時間がもどかしい。
 ボス拘りのレトロエレベーター、その妙にゆっくりな速度ももどかしい。いつもなら気にも止めないのに。寧ろそのゆったりしたひと時が好きだった筈なのに。

 エントランスの回転扉を抜けると、信号の向こうに反町が佇んでいる。
 歩道の植栽、淡いピンクや水色の紫陽花をバックに佇んでいる。
 白い持ち手のビニール傘。湿気で膨らんだ癖毛。昔より少し見上げるようになった目線。黒縁の眼鏡。白いトートバッグと踝丈のパンツ。全部が昔と同じな訳じゃないのに、全部がデジャヴを纏ってそこに在る。

「反町!どうした!いつから居た!」
「誕生日おめでとう」
「はぁ?」

 差し出されたのは紫陽花の花束だった。バックの植栽と同化して気づかなかった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

書架の蜜、指先の熱

Sina
BL
古びた頁の匂いと、西日の中に舞う塵の粒。 図書委員・羽鳥圭の「静かな城壁」を壊したのは、太陽を凝縮したような陸上部の少年・織田准だった。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...