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しおりを挟む『友人に君を紹介したい』
そう言われたのはデートを重ねてからひと月くらい経った頃だった。
アシュレイ様とはいつも美術館や植物園に出向きそのあとお茶をする流れが定番で、まさかちゃんと誰かに紹介してもらえるなんてついこの間までは想像もしていなかった。
そして今日、私はアシュレイ様の婚約者としてご友人であるミハエル=エマーソン様のお屋敷を訪れていた。
「やぁアッシュ!今日は来てくれてありがとう」
「ミハエル、こちらこそありがとう」
玄関先に着くとそこにはすらっとした金髪の美青年がそこに立っていた。
彼はミハエル=エマーソン。エマーソン侯爵家の嫡男である彼はアシュレイ様の幼馴染だ。クールで厳格なアシュレイ様とは違い、ミハエル様は柔和でどことなくシルビア嬢に雰囲気が似ている。
そんな彼の隣には、同じくふわっとした雰囲気の美人がほほえんでいた。
「アッシュ、紹介するよ。僕の婚約者のエリザベス=レリック伯爵令嬢だ」
紹介された彼女は天使のような微笑みを私とアシュレイ様に投げかけてくれる。
(かわいい……私とは大違いだわ)
「今日は招いてくれてありがとう。こちらも紹介しよう、婚約者のグラシャ=ノーストス伯爵令嬢だ」
「初めまして。本日はお招きありがとうございます」
あまりのキラキラっぷりに緊張してしまう。でも落ち着いて、私に粗相があればアシュレイ様が恥をかく事になる。出来るだけ余裕を持ってお辞儀をすれば、エマーソン様はニコリと笑ってくれた。
「ようやくお会いできましたね!ノーストス嬢!」
「?はい」
「いやぁアッシュがなかやな会わせてくれなくてね、本当に嬉しいよ!僕の事は気軽に名前で呼んでね」
「は、はい」
はつらつとした雰囲気にちょっと押され気味になる。なんというか、アシュレイ様のご友人だから同じような雰囲気の方かと思っていたんだけど……。
「まぁ立ち話もなんだから中庭に案内するよ。綺麗な花でも見ながら君たちのノロケ話でもたっぷり聞こうじゃないか」
*****
それから私たちはエマーソン家自慢の中庭でお茶を頂いた。ミハエル様はとてもお喋り上手で、エリザベス様も私も終始笑っぱなしだった。今日ばかりはアシュレイ様の仏頂面も和らいでいるから、お二人がとても仲良いのが目に見えて分かる。
「あーこんなに話をしたのは久しぶりだ!本当に、アシュレイ今日はありがとう!」
「礼を言うのはこっちだ。挙式の準備で忙しいのに、時間をとってくれて感謝する」
そう言ってアシュレイ様は私をチラッと見る。
実は今日、ミハエル様たちに会いに来たのには訳がある。それはミハエル様とエリザベス様に結婚祝いを送るためだ。
「エリザベスさん、宜しければお祝いとしてこれを受け取ってくれないかしら。アシュレイ様と二人で用意したピンクローズをモチーフにした髪飾りなんです」
「まぁ!これを私にですか?」
「ええ。お二人の幸せがいつまでも続きますようにと教会でお祈りも捧げてもらいましたの」
取り出した宝石箱から髪飾りをそっとエリザベスさんに渡す。
この日のためにアシュレイ様と選んだもの、喜んで貰えると良いけれど……。
「こんなに可愛らしいプレゼント、本当に嬉しいです!」
「ご結婚おめでとうございます」
「見てミハエル様っ!私、本当に幸せ者ですわ」
さっきまでお淑やかだった彼女は嬉しそうに髪飾りをミハエル様に見せる。そんな二人のやりとりに私もアシュレイ様もホッと一安心。
「アッシュ、グラシャ嬢、ありがとう」
「良いんだ。おめでとう」
「いい仲間も持って僕たちは幸せだ。ね?」
「はいっ!グラシャさん」
「何ですか?」
「これからも末永く、私たちと仲良くして下さいね」
ニコッと微笑む彼女に私は悩む事なく頷いた。まるで妹を持った姉の気分だ。
「そうだ!グラシャさん、私たちの結婚式に是非とも来てくださいな!」
「わ、私が?行っても良いのですか」
「もちろんさ。元よりアッシュの寵愛する婚約者を呼ぼうと思っていたんだけど……いかんせん監視の目が厳しくてね」
ミハエル様はアシュレイ様に視線を移す。しばらくした後、アシュレイ様はふぅとため息をついた。
「……何があるか分からないからな」
「人気者は辛いな、愛する人を堂々と連れて歩く事も出来ないなんて」
意味深な言葉だが私にはさっぱり分からなかった。そんな私に気付いたのか、アシュレイ様は困ったように笑ってくれる。
「だがせっかくグラシャに友人が出来たんだ。断るわけにもいかないだろ」
「では、式に出席しても宜しいのですか?」
「ああ」
アシュレイ様の言葉に私とエリザベスさんは手を取り合って大喜びした。
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