【完結】男装の麗人が私の婚約者を欲しがっているご様子ですが…

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そしてミハエル様とエリザベス様の結婚式の日。

挙式の行われるのはエリザベス様が小さい頃から礼拝に訪れていた小さな教会。私たちが教会に到着した時にはすでにエマーソン侯爵夫妻、レリック伯爵夫妻はいて、その近くには赤髪の小柄な青年が立っていた。その青年は私たちの存在に気付くと子犬のように駆け寄ってきた。

「ケイン」
「久しぶりだなアッシュ!また背伸びたか?!」
「お前と最後に会った時から2㎝ほど伸びた」
「くぅ~~~!羨ましい、俺なんか5㎜伸びただけでも大騒ぎだってのに!」

(この人がケイン様?)

アシュレイ様やミハエル様と同じ侯爵家の嫡男であるケイン=ジェランダ様はしばらくして私の存在に気付く。

「?アッシュ、この人って……」
「婚約者のグラシャだ」
「おぉー!!アンタがあの!アッシュの!」
「は、初めまして」
「会えて嬉しいぜー!俺はケイン、グラシャって呼ぶけどいい?俺も様とか要らないから!」
「は、はいっ!」

握られた手はぶんぶんと上下に振られる。

(み、ミハエル様とは大違いだわ!)

紳士的な彼とは違い、目をキラキラさせ眩しいくらいの笑顔を向ける……何というか懐っこい弟みたいだ。きっと身長が私とほぼ同じだからそう思えるのかしら。

「グラシャも結婚披露パーティー出るんだろ?そん時さ、俺とも一緒にダンスを……」
「ケイン、いい加減にしろ」

無邪気に話してくるケインを制し、アシュレイ様はされるがままの私をぐいっと抱き寄せた。

「騒ぐな、神聖な場だぞ」
「むっ!お前俺がグラシャに絡んでるのがおもしろくないからって」
「呼び捨てにするな」
「良いじゃん、本人から許可取ってるし」
「俺は許可しない」
「お前のモンじゃないだろ!」

ギャーギャーと騒ぐケインと静かに苛立つアシュレイ様。この二人は多分顔を合わせるたびにこんな風なんだろう。そしてその仲介役がきっとミハエル様だ。

「まぁまぁ落ち着いて下さい二人とも。もうそろそろ挙式が始まりますから」
「……そうだな」
「この続きは後でだな!」
「……」
「もう!二人ともやめて!」

強引に二人の間に入り口喧嘩を止めさせた。

すると教会内のパイプオルガンが鳴り始める。
その場にいる全員が出入り口へと注目すると、ゆっくりと重厚な扉が開いた。

「わぁ……」

一緒に入場してきた二人はまるで物語から飛び出してきたのように美しかった。
白い衣装に身を包んだミハエル様はもちろんだが、純白のウエディングドレスを着たエリザベスさんは本物の天使のように素敵だった。

(どうしよう、涙が出そう)

幸せそうな光景にうるっとしてしまう。

「グラシャ」

隣に立つアシュレイ様は私にハンカチを差し出してくれた。それを手に取り目元を拭う。

「綺麗だな」
「ええとっても。エリザベスさんすごく幸せそう」

寄り添いバージンロードを歩く二人は誰よりも幸せそうに笑っていた。

(こんな風に、私も……)

アシュレイ様と歩けたならどれだけ幸せなんだろう。横にいる彼を見れば口元に軽く笑みを浮かべながら友人を祝福している。
私はもう一度二人に視線を送り、その後も盛大な拍手を送ったのだ。


それから式は着々と進められ、あっという間に二人を送り出すところまで時間が経っていた。

「グラシャさん」
「エリザベスさんっ!」

新郎新婦は馬車に乗り邸宅に戻る。それをゲスト全員で見送ろうとした時、エリザベスさんとミハエル様は私の元に駆け寄ってきてくれた。

「本当に素敵だったわ!二人ともお幸せに」
「ありがとうグラシャ嬢」
「グラシャさん、貴女にお祝いして貰えて本当に嬉しいわ!次は貴女たちの番ね?」

そう言ってエリザベスさんは持っていたブーケを私にぎゅっと握らせる。

「花嫁からのブーケにはね、幸せのお裾分けという意味があるの。グラシャさんに沢山の幸せがやって来ますように」
「ありがとう、本当に嬉しい!」
「パーティーも楽しみにしててくれ、最高のもてなしをするからな」
「ありがとうミハエル」

そして二人は馬車に乗り込みゆっくりと教会を出て行った。

「いい式だったな!」
「ああ、二人とも幸せそうだった」
「次はお前たちの番だぜ?アッシュ、男見せろよ」
「……ああ」

私の後ろで二人が何かを話しているけどよく聞こえない。アシュレイ様を見ればぱちっと目が合う。
その顔は今までで一番穏やかで、まるで慈しむような表情に私もつられて微笑んだ。

「行こうか、グラシャ」
「ええ」

そして私たちはその日の幸せを語り合いながら帰路へとついた。
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