楽園の在処

まめ太郎

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 硝と藤崎の関係は表面上は以前と変わらなかった。
 しかし藤崎は自分に逆らった罰のつもりか、硝に決して俺を抱かせようとはしなかった。
 硝も従順そうに見せてはいたが、たまにゾッとするような瞳で藤崎を睨みつけていることがあった。
 星と月は最近、ここの雰囲気が悪いと俺に文句を零す。
 俺に言わずに問題を起こした硝に直接不満をぶつければいいと思うが、最近の硝はいつも不機嫌だから、何となく言い辛いんだろう。
 俺もそんな硝とは距離をおきたいのだが、硝が俺の傍を離れようとしなかった。

「ねえ、海。映画見てる間、膝枕して」
 いつもの寝室でベットに寝転がりながらそんなことを言う硝に、DVDの予告画面から目を離さず、俺はあっさりと答えた。
「嫌だよ。お前の頭、重いじゃん」
 硝は途端に泣きそうな顔になり、俺の肩を抱くと、首筋に頭を擦り付けた。
「お願い。見ている間だけでいいから」
 硝は俺と二人っきりの時だけ、妙に甘えてくるようになった。
 結局こいつは俺に母親の代わりをして欲しいガキなんだ。都合よく甘やかしてくれて、見返りを求めない相手なら、誰だって同じように求めるのだろう。
 俺はそんなことを考えながら鼻で笑うと、ベッドヘッドに背中を預けた。
「嫌」
 その言葉に硝はムッとすると、俺の伸ばした膝の上に無理矢理頭を乗せた。
「やめろ。邪魔なんだよ」
「いいだろ。少しくらい」
 自分より体格のいい硝をどかすのは難しく、俺は早々に諦め、ため息をつくと、テレビ画面に集中した。 

 映画は思っていたよりもずっと面白かった。
 見ている間、硝が俺の足を愛おしそうに撫でているのもほとんど気にならないくらい引き込まれる。
 画面にエンドロールが流れ始め、俺は興奮と満足の余韻で息を吐いた。
 それと同時に硝が俺の股間のモノを突然口に含んだ。
「何しやがんだ、てめぇ」
 俺は思い切り硝の頭を殴った。
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