楽園の在処

まめ太郎

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 ラーメンを一口すすると俺は目を見張った。
 慌ててレンゲでスープを二口ほど飲む。

「なっ、なんだこの味。今まで食べてきたラーメンと全然違う」

 ラーメンは醤油だったが、コクがあるのにあっさりしていた。出汁に何を使っているのか知りたくて、スープを飲んでみるも、一口飲むごとに、魚介系、鶏がら系の二種類のスープの美味みと野菜の優しい味まで口に広がり特定できない。
 硝の炒め物も、レンゲで掬い食べてみると、とろみの中に、ナッツの香ばしさが引き立ちとても美味い。
 藤崎に飼われていた頃、一人3万もする中華のコースに連れて行かれたこともあるが、正直そこの料理より、断然こちらの方が美味かった。

 一人、美味い美味いを連呼する俺の前におばちゃんがやって来て笑顔を見せる。
「あらー、そんなにうちの料理気に入ってくれたの?良かったわね、お父さん」 
 爺さんはおばちゃんの言葉に顔を上げると、小さく頭を下げた。
「このラーメンも奥深いのに、しつこくなくて本当に美味しかった。毎日でも食いたいくらい」
 俺が興奮してそう伝えると、爺さんが「ありがとよ」と言い後ろを向いてしまった。
「照れてるのよ」
 おばちゃんが俺に耳打ちする。

「こういう子がうちのアルバイトに来てくれると、助かるのにねえ。ねえ、お父さん」
 おばちゃんの言葉に爺さんは無言だった。
「アルバイト募集してんですか?」
「そうなのよー。お父さんが初めから厳しくするから、みんな1週間と持たずに辞めてっちゃってね」
 俺はがたんと立ち上がると拳を握り締めた。
「ここで働かせてください」
 そう言った俺を見る硝の口が、ぽかんと大きく開いた。

「まさか、いきなり働かせてほしいなんて」
「いや、あの味、運命だと思ったんだよな」
 俺は先ほど食べた餃子の皮のパリパリ感を思い出し、口元を緩ませた。
「お前の頼んだ五目チャーハンに入っていた角切りのチャーシューも美味かったよな。俺のラーメンに入ってた焼き豚とちょっと味が違う様に感じたんだ。一度炙ったりしてるのか、それとも…」
「でも朝6時から勤務なんて、海、起きられるの?」
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