104 / 336
78
しおりを挟む
ここに来るようになってから、少しづつ皆のことが分かってきた。
海と真司さんとキミは同い年らしく、俺より4歳年上の二十歳だった。
キミは服飾の専門学生。海は日払いのバイトなどをしていて、真司さんは車の整備工場で働いているらしい。
真司さんは両親を早くに亡くし、妹さんと二人で近くのアパートに住んでいると言っていた。
「お前さあ…」
真司さんがビールを飲みながら言う。
マスターはカウンターの奥で、たばこを吸っている。
「俺のこと好きなの?」
俺は飲んでいたミルクを吹き出しそうになり、むせた。
真司さんがカウンターに置いてあるグラスに水を入れて俺に差し出す。
「ありがとうございます」
俺はそれを受け取りながら、礼を言った。
水を飲んで一息ついた俺は、こちらを見つめる真司さんと目を合わせる余裕もなくうつむきながら話した。
「正直…よくわかりません。人を好きになったこと、ないし」
周りの男子が、初恋だ彼女だと騒ぐのを見ても、俺は同じような気持ちになれなかった。
中学の時、告白してくれたクラスメイトの女の子と付き合ったことがある。いい子だとは思ったが、それ以上に心動かされなくて、結局すぐに別れてしまった。
「俺、ゲイなんでしょうか?」
真司さん以外の男性にときめいたことはないが、確かに真司さんに惹かれている自分がいて思わずそう呟いた。
「俺に聞くなよ」
真司さんが豪快に笑う。
「俺好きとかよくわかんないけど…真司さんのことはかっこいいと思います」
顔を赤くしてそう言うと、俺の頭を真司さんが軽く撫でた。
驚いて顔を上げると、真司さんが今までにないくらい優しく微笑んでいた。
「ああ、課題明日までなんだよ。終わるかなあ」
その時電話をかけていたキミが戻って来て、俺の隣に座った。
真司さんは俺の頭からさりげなく手を離し、キミと会話を始める。
俺は先ほどの真司さんの笑顔に心臓を打ち抜かれ、キミに話しかけられるまで、ぼんやりと真司さんの整った横顔をずっと見つめていた。
海と真司さんとキミは同い年らしく、俺より4歳年上の二十歳だった。
キミは服飾の専門学生。海は日払いのバイトなどをしていて、真司さんは車の整備工場で働いているらしい。
真司さんは両親を早くに亡くし、妹さんと二人で近くのアパートに住んでいると言っていた。
「お前さあ…」
真司さんがビールを飲みながら言う。
マスターはカウンターの奥で、たばこを吸っている。
「俺のこと好きなの?」
俺は飲んでいたミルクを吹き出しそうになり、むせた。
真司さんがカウンターに置いてあるグラスに水を入れて俺に差し出す。
「ありがとうございます」
俺はそれを受け取りながら、礼を言った。
水を飲んで一息ついた俺は、こちらを見つめる真司さんと目を合わせる余裕もなくうつむきながら話した。
「正直…よくわかりません。人を好きになったこと、ないし」
周りの男子が、初恋だ彼女だと騒ぐのを見ても、俺は同じような気持ちになれなかった。
中学の時、告白してくれたクラスメイトの女の子と付き合ったことがある。いい子だとは思ったが、それ以上に心動かされなくて、結局すぐに別れてしまった。
「俺、ゲイなんでしょうか?」
真司さん以外の男性にときめいたことはないが、確かに真司さんに惹かれている自分がいて思わずそう呟いた。
「俺に聞くなよ」
真司さんが豪快に笑う。
「俺好きとかよくわかんないけど…真司さんのことはかっこいいと思います」
顔を赤くしてそう言うと、俺の頭を真司さんが軽く撫でた。
驚いて顔を上げると、真司さんが今までにないくらい優しく微笑んでいた。
「ああ、課題明日までなんだよ。終わるかなあ」
その時電話をかけていたキミが戻って来て、俺の隣に座った。
真司さんは俺の頭からさりげなく手を離し、キミと会話を始める。
俺は先ほどの真司さんの笑顔に心臓を打ち抜かれ、キミに話しかけられるまで、ぼんやりと真司さんの整った横顔をずっと見つめていた。
1
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる