スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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「優、この際だから言っておく。」
 言いにくそうに準が口を開いた。

「優は男子校が初めてだから免疫がないと思うけど、ここでは同性のカップルも普通に結構いるんだよ。正直優は、綺麗な顔しているから気を付けないと襲われることだってあり得る」
「襲われるって、そんなの犯罪じゃねぇかよ。」
「じゃあ優はもし男に襲われたとして、それを誰かに話せる?みんなほとんど泣き寝入りだよ。だから余計そういう被害が増えるんだ。退学していく奴らの理由はほとんどそれ」
 準の言葉に俺は複雑な心境で黙り込んだ。

「まあ、万が一そんなことがあっても、俺達には話して欲しいけどな。」
西は隣に座った俺の頭をポンとたたいた。
「でも俺、今まで男にモテたことなんて一度もないぜ。心配しすぎじゃないかな。」
「優、俺もお前は危ないと思う。ここには何の娯楽もないんだ。AVだって見つかったら風紀に没収されるんだぜ。ここから出られるのは二か月一度の外出特例か、正月と夏休みくらいで女の子なんて周りにゃいない。そんな所に健全な男子高校生放り込んでみろよ。普段同性に興味のないやつだって目覚めちゃって、溜まってた欲望発散しようとすんだよ」
「そんなもんかなあ。」

 ふいに俺は椅子ごと西から遠ざかった。
「まさかお前まで、そういうんじゃないよな。」
 西はにやりと笑うと
「残念でした。俺はちゃんと彼女持ち。来月の外出が楽しみでしょうがない。」
「そうか。」
「ちなみにおれも違うからね。」
 準も笑いながらそう言った。

「まあ、じきに俺らの言ったことが大げさじゃないってわかるさ。優のファンクラブ今月中に絶対できるぜ。」
「まさか。ありえないし。」
「じゃあ、かけよう。売店のミルクレープでどうだ。」
 西の賭けにおれはのった。
「いいよ。ミルクレープ。楽しみだわ。」 

 西との賭けに負けるわけないと俺は思っていた。
 
 だが一週間後、俺は西にミルクレープをおごる羽目になるのだった。
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