スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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 怜雄におぶさりながら、俺は酔いと言いたいことをようやく言えた満足感で、すごくいい気分だった。

 調子の外れた鼻歌を歌うと怜雄が怒鳴る。
「おい、酔っ払い。耳元でうるせえぞ。」
 怜雄の怒りも気にならず、俺は話しかけた。
「ねえ。怜雄。怜雄。」
「なんだ。」
「俺、怜雄のことすっげえ好き。愛してる。」

 怜雄が一瞬足をとめ、また歩き出す。
「ったく。酔っ払いは本当に手に負えねえな。」
「仕方ないじゃん。言いたくなったんだから。」
「お前の気持ちなんてとっくに知ってんだよ。」
 怜雄のその言葉を聞いて、俺は目の前にあった、怜雄の赤くなった耳にかぷりと噛みついた。

 翌日、長谷部に呼び止められ、ゼミ棟の奥まった窓際に連れていかれる。
「ほら、お前のカバン。」
 長谷部から昨日店に忘れた俺のリュックを手渡される。
 俺は礼を言うとそれを受け取った。
「いや、本当助かったわ。放課後まで携帯も財布もなしで生活しなきゃいけないとこだった。」
「今日、同じ授業とってなきゃ、店に置きっぱなしにしとこうかとも思ったんだけど、二限一緒だったから持ってきた。」

 長谷部のその言葉に俺はもう一度頭を下げた。
「あとさ、昨日はなんか色々ごめんな。あの後雰囲気悪くなったりしなかったか?」
「大丈夫。枝野さんが自分で作ったカクテル飲んで酔っ払って、安西さんに説教始めちゃって。最後には酔いつぶれた枝野さん、安西さんが送っていった。」
「そうだったのか。俺、あんな風に怜雄と付き合ってるのばれて、普通に引かれるの覚悟してたけど、みんな優しくて、正直感動した。」
「ほんといい職場だろ?みんな優しいし。安西さんも根はいい人だし。まあ、俺もお前が御剣と付き合ってるって聞いた時は、流石に驚いたけどな。」
「俺だってお前が男と付き合ってたって言うから、驚いたわ。」
「はは。でも俺が暴露したことで、お前もちょっと気が抜けてやりやすくなったろう?周りのことを気にしないのもまずいけど、気にしすぎると息苦しくなっちゃうからさ。」
「そんなことまで考えてくれたのか。悪いな、過去の話までさせて。でも俺も昨日で、気持ちすげえ変わったから本当に感謝してる。」
「なら、良かった。実は俺も完全に過去の話ってわけでもないんだ。ただまず檻を用意しないと捕まえてもすぐ逃げられるから・・・。」
「檻?」
 長谷部の口から飛びだした単語に俺はぎょっとした。

「冗談だよ。まあ、お互い良い恋愛しようぜって話。あっ、お前の旦那が来た。なんかこっち睨んでるから、先行くな。」
 長谷部がぽんと俺の肩を叩いて、行ってしまう。

「何、話してた?」
 怜雄がやってきてすぐ俺にそう聞く。
「いや別に。俺が店に忘れた荷物、届けてもらっただけ。」
「昨日お前が記憶なくすまで飲んで、迷惑かけたことちゃんと謝ったんだろうな。」
「記憶はなくしてねえし。」
「どうだかな。帰り道では変なこと言うし、家に帰ったら暑いって全裸になるし。」
「玄関で服脱いだのは謝るけど、記憶はちゃんとあるよ。」
「本当かよ?じゃあ、昨日俺に何て言ったか覚えてるのか?」
 怜雄が疑わしそうに俺を見る。

「覚えてるよ。」
 俺は怜雄の耳元に口を寄せ、昨日言った言葉をもう一度囁いた。
 怜雄はその言葉に笑顔になると、俺を抱きしめ言った。

「俺も愛してる。」
 昨日の告白の返事をもらって、俺も笑って怜雄の体を両手で抱きしめた。
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