スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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 実家に付くと昼を過ぎていて、スマホが震え、見ると母親からまたメールが入っていた。

 今日、両親は出かけることになって、結衣も仕事だから実家には誰もいないらしい。上司の方によろしくね。と文末にあった。

 俺が怜雄にそう伝えると、怜雄が表情を曇らせる。
「そうか。ご挨拶したかったのに残念だな。」
「だから、挨拶なんていらないって。」
 俺は肩を落とす怜雄に冬服が入っていると思われる段ボールを渡した。

 冬服は向こうでほとんど着なかったから、怜雄の部屋から出てきた時のままになっている。
 部屋に散らかるシャツなどは適当に紙袋に詰めた。

「本当にこれだけの荷物でいいのか?」
「うん。そんなに長居するわけじゃないし。」
 そう答えた俺に、怜雄が複雑そうな表情を浮かべたのに気付いたが何も言わなかった。

「じゃあ、夕飯食べに行こう。」
「えっ、まだ16時だぜ。早くねえか?」
 俺の荷物が少なかったせいで、思っていたより早く荷物の積み込みが終わってしまった。

「行きたい店がちょっと遠いんだ。」
 怜雄がそう言って運転席に乗り込む。
「怜雄、疲れてない?運転変わろうか?」
 マイアミでは移動はいつも車だったので、俺も運転には慣れている。

「いや、大丈夫だ。ありがとう。」
 怜雄はそう言うと、ナビも点けずに車をスタートさせた。
 目的地まで二時間ほどかかるという。

 俺たちは車内で色々な話をした。
「それで、勃起障害直すために結城の知り合いの医者んとこ行ったけど、全然ダメでさ。結城、会うたびに俺に聞くんだよ。勃つようになったのかって笑いながら。それがすげえ腹立ってな。」
「はは。あいつなら言いそう。」
「だろ。結城も努もお前が帰国したって言ったら会いたがってた。今度一緒に飲もう。」
「ああ、いいな。俺もこっち戻って来て、会いたい友達とかたくさんいるんだけど、仕事忙しくて、全然会えてないや。」

「海外事業部はできたばかりの部で暇な時期がないからな。でもあそこで働いた経験はどこに異動してもきっと役立つはずだから。」
「そうだといいけど。まあ、あの部に慣れて異動だなんて当分先の話だな。俺も早く先輩みたいに一人前に仕事こなしたいよ。」
「お前の先輩って?」
「清宮さんって知らない?」
「ああ、あの会社員のくせにちゃらい髪形してる野郎か。」
「見た目はチャラいけど、仕事はすごいよ。俺、清宮さんのこと尊敬してるもん。」
「尊敬?」
 怜雄がぎろりと俺を睨む。

「尊敬ってかっこいいと思ってるってことか?」
「かっこいい?まあ、働いてるとこみるとかっこいいかもな。俺もああなりたいって思うし。」
「つまり憧れていると。」
「そうそれ。」
 俺が大きく頷くと怜雄が、人差し指で自分の唇を撫でながら考え込み始めた。
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