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「ここに立っている彼が男性であることに違和感を覚える方も少なくはないでしょう。認知されてきたとはいえ、日本で同性愛は未だ隠れるもの。もっと言ってしまえば禁忌に近いと考えられている方もいらっしゃるかと思います。しかし実際に彼を愛している僕からすれば同性に向ける愛情も異性に向ける愛情も等しく同じ感情であるということを明言しておきます。僕は彼の愛情なしでは何一つ成し遂げられなかった。優、本当にいつもありがとう。心から感謝しているよ。」
怜雄がこちらを向いて微笑んだ。
そこまで話すと怜雄は司会の女性に「VТR」と耳打ちした。
呆然としていた司会の女性は急にはっとするとマイクを握った。
「はい、御剣さん。ありがとうございました。ではここでわが社の新しいCМのショートバージョンとロングバージョンをご覧ください。」
部屋が真っ暗になり、俺達を隠すように映像を映し出す白い幕が下りてきた。
俺は怜雄の耳元でぼそりと言った。
「おい、いきなりどうしたんだよ。」
「一昨日、結衣さんからようやく交際のオーケーをもらえてさ。けじめとしてこの場で発表しようと思ったんだ。」
「えっ、姉貴すげえ反対してたのに、本当か?」
俺は驚いて怜雄を見つめた。
「お前の実家に行った日からずっと結衣さんの帰宅時間狙って、彼女の会社の前で待ち伏せしてたんだ。足も止めてもらえなかったから、正直駄目かと思った。けど最後の手段で大声で名前呼びながら土下座したらようやく話聞いてくれてさ。」
怜雄がははっと笑いながら言う。
「二度と優を泣かせないことを条件に交際を認めるって。俺、もっと頑張って、お前のことずっと笑顔にするから。」
怜雄はにっこりと笑って俺を見た。
「でも勝手にこんなことして怜雄のお父さんは怒るんじゃ…。」
俺が不安でうつむくと、怜雄は俺の顔を覗きこみ言った。
「優、大丈夫だ。母さんが親父に俺達の仲を認めないなら離婚するって言ったんだ。そしたらすぐに親父の方から俺に連絡があった。来週末お前と二人で実家に来いって。」
「怜雄。」
「今日のことも親父から提案してきたんだぜ。いい機会だし、ちゃんとけじめ付けないと、優のご両親にも申し訳ないって。あっ、優のご両親にも結衣さんにも今日発表することは伝えてあるから。」
「っていうか、こういうことってまずは俺に相談するべきだろ。」
俺はぶすりとそう言ったが、怜雄はちっとも反省していないようだった。笑顔を浮かべリングの嵌った俺の左手を取って指を絡める。そうしている怜雄の薬指にもいつの間にか同じリングが輝いていた。
「だってお前の気持ちはもう分かってるから。」
怜雄の子供みたいな笑みに負けて、ついつい俺も笑ってしまう。
「病めるときも健やかなるときもだもんな。」
俺がそう言うと、怜雄が目を細めて微笑み、続けて言う。
「例え死が二人を分けてもなお…。」
映像が終わったのか俺たちの前にあった幕がゆっくり上がり始める。
そこで笑顔で口づける俺たちの姿に、一斉にフラッシュの嵐が散った。
瞼の裏に光の残像を描きながら、俺たちは馬鹿みたいに長いこと唇を合わせ続けた。
happy end
怜雄がこちらを向いて微笑んだ。
そこまで話すと怜雄は司会の女性に「VТR」と耳打ちした。
呆然としていた司会の女性は急にはっとするとマイクを握った。
「はい、御剣さん。ありがとうございました。ではここでわが社の新しいCМのショートバージョンとロングバージョンをご覧ください。」
部屋が真っ暗になり、俺達を隠すように映像を映し出す白い幕が下りてきた。
俺は怜雄の耳元でぼそりと言った。
「おい、いきなりどうしたんだよ。」
「一昨日、結衣さんからようやく交際のオーケーをもらえてさ。けじめとしてこの場で発表しようと思ったんだ。」
「えっ、姉貴すげえ反対してたのに、本当か?」
俺は驚いて怜雄を見つめた。
「お前の実家に行った日からずっと結衣さんの帰宅時間狙って、彼女の会社の前で待ち伏せしてたんだ。足も止めてもらえなかったから、正直駄目かと思った。けど最後の手段で大声で名前呼びながら土下座したらようやく話聞いてくれてさ。」
怜雄がははっと笑いながら言う。
「二度と優を泣かせないことを条件に交際を認めるって。俺、もっと頑張って、お前のことずっと笑顔にするから。」
怜雄はにっこりと笑って俺を見た。
「でも勝手にこんなことして怜雄のお父さんは怒るんじゃ…。」
俺が不安でうつむくと、怜雄は俺の顔を覗きこみ言った。
「優、大丈夫だ。母さんが親父に俺達の仲を認めないなら離婚するって言ったんだ。そしたらすぐに親父の方から俺に連絡があった。来週末お前と二人で実家に来いって。」
「怜雄。」
「今日のことも親父から提案してきたんだぜ。いい機会だし、ちゃんとけじめ付けないと、優のご両親にも申し訳ないって。あっ、優のご両親にも結衣さんにも今日発表することは伝えてあるから。」
「っていうか、こういうことってまずは俺に相談するべきだろ。」
俺はぶすりとそう言ったが、怜雄はちっとも反省していないようだった。笑顔を浮かべリングの嵌った俺の左手を取って指を絡める。そうしている怜雄の薬指にもいつの間にか同じリングが輝いていた。
「だってお前の気持ちはもう分かってるから。」
怜雄の子供みたいな笑みに負けて、ついつい俺も笑ってしまう。
「病めるときも健やかなるときもだもんな。」
俺がそう言うと、怜雄が目を細めて微笑み、続けて言う。
「例え死が二人を分けてもなお…。」
映像が終わったのか俺たちの前にあった幕がゆっくり上がり始める。
そこで笑顔で口づける俺たちの姿に、一斉にフラッシュの嵐が散った。
瞼の裏に光の残像を描きながら、俺たちは馬鹿みたいに長いこと唇を合わせ続けた。
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