小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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「私、いろんなこと、そこそこ上手にしかできないんだよねー。器用貧乏ってやつ?」
「………………」

 その後、班員全員で必死になって作り上げた修学旅行課題は無事に期間内に完成し、クラス内での最優秀となった。ちなみに、優奈の箇所はほとんど門川が単独で作り上げてしまったらしい。有栖川が自分も手伝ってもらいたかったとぶーぶー文句を言っていたくらいにいい出来上がりだった。門川は、勉強だけでなくまとめるのも上手なようだ。

「さすがね。私のは拙いわ………」
「そんなことないよ。レイアウトが綺麗だし、専門用語とかの説明が入っていて分かりやすいよ」
「………ありがとうって、うわっ!!」

 門川と伸び伸び話していると、心菜の背中に軽い衝撃が走った。

「こら、メスゴリラ!そんな勢いで突進してったら、お嬢様が潰れんだろ!!デブなんだから、自重しろよな」
「なんだとー!!」

 優奈は今度は立花のことを追いかけ始めた。心菜はそんな2人の光景を苦笑しながら眺めていたが、やがて立花がこちらに向かって猛ダッシュしてくる。

(は?え?)

 そして、心菜の肩に手を置いて優奈に向かって挑発をし始めた。

(え、な!?ひゃっ、う、うええぇぇぇ)

 男子に一切の免疫がない心菜は、ベタベタと触られているという状況下によって脳がショートし、ふらふらとし始めてしまった。

「あ、こら!!ここなに何してんの!?」
「ん?久遠を盾にしてる?」
(ふひゃっ、く、くすぐったい………)

 耳元で話されて、心菜の顔に熱が集まってきてしまう。心菜は座り込みたい衝動を必死に押さえて、ぎゅーっと手を握り込んだ。

 ーーーキーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン、

(た、助かった………)

 チャイムが救いになるという体験を始めてした心菜は、半泣きになりながらゆらゆらと自分の席に着いた。この際もう、周りからの視線が痛かったというのは気にしないことにする。
 ロングホームルーム、先生の話が始まり心菜はふと、黒板の端にある日付を見た。

 7月、もう少しで夏休みだ。

 心菜は塾によって予定がいっぱいの夏休みを思い出して、ぐぐぐっと表情を歪めた後に大きなため息をついた。中学3年、受験生にとって夏休みは、勝負の期間だ。
 そして、夏休みに入る前に期末テストもあることを思い出した心菜は、胃薬と頭痛薬の追加を買いに行くことを決意した。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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