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番外編
番外編 ラファエルの過去 禁断の果実と告白
しおりを挟む2人は他愛のない話をしながら池の畔でピクニックを楽しんだ。
時間はゆっくりと流れていく。
永遠にも等しい至福の時間……。
ラファエルは柄にもなくこのまま時が止まればいいのに……と思ってしまうくらいの優しい時間だが、彼は恋をした女性を手に入れる為、この至福の楽園に実る赤い果実をもぎ取りその禁断の果実を口にした。
「マリアーナ、俺はお前を愛している。お前の全てが愛しい、どうか俺と共に生きて欲しい」
「エル……」
「愛しているマリアーナ、どうか俺と共に生きてくれっっ」
熱く、熱を孕んだ蒼い双眸がマリアーナの紫に煌めく瞳を離さない。
マリアーナは躊躇しその絡みつく様な熱い視線から逃れようともがく。
だが最初から太い樹に凭れて座っていた彼女に逃げ場はない。
「お願いだマリアーナ、俺を愛してると言ってくれっっ」
「エル……!?」
右手で彼女の肩を掴みラファエルはマリアーナの柔らかい唇へ自分のそれをそっと重ねた。
触れ合うだけのキス――――だったが、彼女が何も抵抗せずに受け入れてくれた事で気を良くした彼は角度を変えながら何度も啄ばむ様にキスを重ね、回数を増す毎にゆっくりとそして深く激しいキスへと形を変えていく。
15歳の血気盛んな青年は中々ブレーキ等効かない。
マリアーナが吐息を漏らすそれさえも貪るように吸いつくし、彼女の唇を開き歯列をなぞり逃げようとする彼女の舌を捉えては絡みつき、口の端からどちらの唾液かわからないものが溢れて流れ落ちる事も厭わず彼女とのキスを堪能する。
「んっ、ふぁ……っっ、エ、ルっっ」
「あぁマリ、マリ愛しいマリっっ!!」
「エルっ、あたしも……あなたの事が好きっっ!! だけどあなたは貴族のお坊ちゃまでしょ? 平民のあたしなんかとは身分違いだ、きっとみんなに反対され――――っっ!?」
彼女の抗議もそのまま呑み込む様にラファエルはぷっくリと膨らんだ唇へ噛みつく様にキスをする。
そして心ゆくまで彼女の唇を堪能した時には彼女はトロンと蕩けきった顔と潤んだ瞳でラファエルを見上げていた。
「何も心配はいらない愛しいマリ、誰にも反対はさせないよ。それと黙っていて悪い、実は俺は貴族のお坊ちゃまじゃなくてこの国の王太子なんだ」
「王……太子殿下!?」
「うん、だから君には……」
照れくさそうに真実を告げるラファエルに対してマリアーナは見る見る顔色が悪くなり、紫の瞳からは涙が幾筋も流れていく。
「かっ、帰ってっっ!! エルなんて嫌いっっ、酷いっ、いくらあたしが平民だからって愛人くらいにしか考えてないんでしょっっ!! 王子様だからって何でも言う事なんてきかな――――っっ!?」
マリアーナは泣き叫びながらラファエルの身体より抜け出そうと必死にもがき暴れる。
その様子に驚いたラファエルだったが直ぐに彼女を自分の胸へと引き寄せ泣き喚く唇へ自分の唇を以って蓋をする。
何度もキスを繰り返すラファエルへ抗議の姿勢を貫いていたマリアーナだったが、彼女が大人しくなるまで彼はその唇を離さなかった。
そして静かになったマリアーナが顔を赤らめて上目遣いで一言「狡い……」と小さく文句を言った。
そんな可愛い顔をするマリアーナを見たラファエルは破顔させて柔らかな笑みを浮かべる。
「馬鹿だなマリは……」
「どうせ馬鹿よ、平民だもん王子様とは違うからっっ」
可愛く拗ねてみせるがその1つ1つの何気ない動作でさえラファエルにとってマリアーナという女性の存在は愛しいものだった。
そして彼女を抱きしめたまま背中を優しく撫でる。
「俺はお前を愛人にしたくて告白したのではない」
「じゃあどんなつもりで……」
ラファエルは抱きしめていた腕を放しマリアーナの涙で濡れた頬へ手を添えて啄ばむ様に優しいキスを落とす。
「マリアーナ、俺の正妃になって欲しい。これから先俺の隣で何時までも笑っていて欲しい」
「〰〰〰〰いっ、狡いよエルっ」
「何がだ?」
「そんな事っ、こんなに優しい声で言われたら嫌だって言えないじゃないっっ!!」
「俺は最初から拒否させるつもりなんかないさ、俺にはお前が必要なんだかからな」
そうしてまた優しいキスを彼女に落としていった。
思いが通じた翌日――――彼の思惑通り王宮より彼を迎えにやってきた。
ラファエルはマリアーナへ直ぐに迎えに来ると約束をして一旦長期不在にしていた王都へと帰還した。
マリアーナはそんな彼の姿が見えなくなるまで見送ってた。
涙をとめどなく流しながら……。
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