王妃様は真実の愛を探す

雪乃

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番外編

番外編  アイザックの苦い過去  18

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「それからが地獄に御座いました。最初に奥方様が別室へと侯爵に連れて行かれました。それを見たクラウディア様は泣き叫んでおられましたがそれは本当に始まりに過ぎなかったのです。その部屋に残った私達に待っていたのは何人もの男達によって次々と……何度も何度も身体を犯されてしまいましたっっ!! 中でもクラウディア様は一番お若いので男達は面白がってまるで玩具の様にお嬢様をっ、それでもお嬢様はっ、何時もおっしゃってました。『きっと何時かあの人が私達を助けに来てくれる、だからっ、私はこんな理不尽な事に負けて等いられないっ……でも、でもね、如何どうして私達がこんな酷い扱いを受けなければいけないの?』と、お嬢様は気丈に振る舞いどんなに身体を犯され暴力を振われても何時も抵抗なさっておいででした。奥方様も侯爵による暴行が終わると私達の部屋へと、いえ正確には侯爵が王宮へ伺候しこうされる時だけ私共と会う事が出来たのです。そんな異常な世界の中で奥方様は日に日に誰よりも憔悴し切った表情かおをなされておられましたがそれでもクラウディア様とへフリー伯爵夫人、そして私共の事までお優しい奥方様は心配して下さったのです。でも、地獄は更に深い事を私共は思い知ったのです。男達に何度も犯されるようになったのが当たり前だと感じる様になった頃、それと同時に私共に薬を使われる様になったのです。薬は人の心をむしばみます、でも最初に蝕まれたのはヘフリー伯爵夫人でした。へフリー伯爵夫人は薬が効き過ぎて興奮状態となり、男の腰に帯剣していた短剣を奪い取り、嬉々としてご自分の首を掻き切って亡くなられました。その次は同じ侍女仲間のアンネがやはり薬の打ち過ぎによるショックで亡くなりました。そして最後に亡くなられたのは奥方様でした。奥方様のはらには侯爵との子が宿っていたのです。それを知った侯爵は大層喜びました、そして奥方様のお身体の為にシャロンへご静養に向かわせるというその日に奥方様は殆ど薬に溺れていらっしゃるクラウディア様をそっとお抱きになって『』とそう小さな声で囁かれてから出ていかれ間もなくご静養先の別邸の窓より飛び降りそのまま胎の子共々この世から消えて亡くなられました。きっとそれが奥方様の精いっぱいの抵抗だったのでしょう。ですがそれは私とクラウディア様の運命を更に狂わせたとも言います。私はクラウディア様同様……いえお嬢様よりは使われる量が少なかったのか、それともその薬に対して身体が適応していなかったのかは知りませんが、確かに身体はぐずぐずに薬に溺れていましたが頭は変に醒めていたと言うのか記憶はしっかりと残っていました。しかしおぞましい記憶等なければ良かったのです、私とお嬢様は何度も胎に子が宿りましたがその度に薬で胎の子を殺されていたのです。でも何処の誰かもわからない、数えきれない男達の精を胎の中に吐き出されたのです、出来ない筈等ないのです。私とお嬢様はルガートからシャロンへと連れて行かれそこでも同じ地獄が待っていたのです、ただ違うのは私達を穢す男の身体が違っだけです。それでもお互いが心の支えとなっていたのでどちらともなく死を選ぶ事が出来なかったのかもしれません。侯爵や私達の身体を通り過ぎてゆく男達も皆考えもしなかったでしょう、薬漬けになった女の頭が醒めていた事に……。ですから奴らは私達の前で平気でしたよ、という事を、特に侯爵はお嬢様へ当てつける様にお嬢様を犯しながら旦那様と伯爵様の最後をお聞かせになっていました。お嬢様もきっと心の中ではわかっていらっしゃったと思います、侯爵に犯され続けながらも涙を流しておいででしたから……。そして間もなくお嬢様は侯爵とのお子を宿されました。今回は薬で殺す事もなく侯爵の命令で私はお子が生まれるまでお嬢様のお世話をする事になりました。ですがお嬢様は出産する瞬間まで生まれてくる子は悪魔の子だと生かしてはいけないっ……とでも、日が経つと胎の子は育ちやがて陣痛がやってきてそれは元気な男の子をお産みになられました。本当にもう亡き奥方様によく似た面差しのお子様でした。そのお子を侯爵は問答無用にお嬢様より取り上げると何処かへ連れてゆき私達はやがて蒼弓国そうきゅうこくの奴隷市へと売られていったのです。でもそこでも待遇は何ら変わりません、主となった商人の命令のまま男に犯されるのですから……。お嬢様は助け出される少し前には薬の所為でお目醒めになる事がめっきりと少なくなり、時々目覚められたかと思えば男に犯されながら『待っています……』とただそれだけを口にされておられました。蒼弓国も表向きはシャロンと繋がりはない様な顔をしておりますが、闇の中では今もしっかりと繋がっております、助け出される前にシャロンからの密書をマリス侯爵の配下が持ってきましてね、何度も私達を抱いている所為かその男は私達が何も出来ないだろうと踏んでいたようだったので私は隙を見て部屋のある場所に隠してしまったのです。何も状況は変わらないことは十分にわかっておりましたが、それでも何か一矢を報いたいと思ったのです。勿論商人達はとして何の詮索もされませんでしたが、その密書にはシャロン王家の印章とマリス侯爵のサインと印章があったのを確認しております。そうして騒動が終わりかけた頃にヨルム……夫に私とお嬢様は助け出されたのです」

 そう話し終わるとカリナは涙を流しながら隣で手を握ってくれているヨルムを見つめた。
 ヨルムもまた妻である彼女へ慈愛の籠った熱い眼差しで見つめていたのだ。

「助け出すのに遅くなって済まない、本当に辛い思いばかりさせたね」

 アイザックは同じ男としてけだもの以下の行為に対し憤りが隠せないでいたが、勇気を出して辛い体験を語ってくれたカリナへ厚く礼を述べる。
 そして彼の愛したクラウディアの辛い体験とそしてどんな地獄の中でも諦める事なく自分を待っていてくれた事に深い愛情を感じずにはいられなかった。


 そう、彼女の為にもこのままにはしてはおけないっっ。

「旦那様、これがその――――」

 ローテーブルの上に出されたのはカリナが必死になって隠してくれた重要な証拠にもなる密書だった。

 これがあれば――――っっ!?

「彼女のうれいの元が何処にいるのか突き止めたのだろうな……ヨルム」

 そう、クラウディアがこの世に生み出す瞬間まで彼女が必死に抵抗していた者――――。

「はい、調

 ヨルムは怪しい光を瞳に宿して静かに返事をする。

「では――――仕上げにかかるとしよう」

 悪魔の子諸共全てをこの手で葬り去ってくれるっっ!!





*胸糞ほぼ終了です。
 これより……ざまあ展開に向けていきます!!


                 雪乃


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