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1章 急変地球~リアルブレイク~
第11話
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「おかえり~皆大変だったわね!」
ザラタンへ帰ると昨日と同じ会議室に呼ばれ、そこにはレイカさんが待っていた。事情はすでにティアから報告済みらしい。
「彼女が例のダークエルフさんね、お名前は?」
そういえば聞いてなかったなぁ。
「彼女はノール、ダークエルフ族の姫様の近衛だったそうです」
紹介されるとノールはお辞儀をして見せた。雰囲気でなんとなく状況を把握してるらしい。
「それにしてもいざという時のジャベリンとドローン役に立ってよかったわ~」
「物騒な保険に助けられました!」
「ティア、とりあえず彼女の目的と状況を説明してもらえる?」
レイカさん、急に話を切り替えてきてちょっと困る。
「ノールさん達は私達の時みたいに集団でこちらに転移してきたようでその際お姫様達はヨハネに連れていかれ、周囲の調査をしていた彼女だけが難を逃れたらしいです」
「じゃあ救出者にダークエルフ達も加える感じですか?」
「そうね、彼女達も被害者だし助けるなら一緒に助けましょうか」
「それは賛成なのですが拠点の場所や状況、作戦はもう準備できているのですか?」
「ある程度の場所は特定できてるわ。今詳細をコリブリとタランチュラで集めてる途中だから作戦とかはちょっと待ってね」
コリブリ、タランチュラ。これは情報収取に使われる小型ドローンの名称でコリブリは小型飛行モデル、タランチュラは多脚型陸上モデルで高性能である程度の自立稼働AIも搭載されている高級品だ。
「とりあえず、今は皆休んでて。作戦が決まったら改めて集まってもらうからそのつもりで居てね、じゃあ解散!」
俺達は買ってきた荷物を持ち自分の部屋へと戻った。正直、部屋に戻ったところで特にやることも無いのだが。
「いつもはゲームばっかだったもんなぁ」
荷物を置きそのままベッドに倒れ込む。いつも一日ゲーム世界で戦っていたからこう何もない環境は久しぶりだった。
「ちょっと探検してきますかね」
せっかくだしザラタンを回っていろいろ見てこようとふと思った。まずは甲板に上がってみる、広い甲板にはクレーンがあり複数のコンテナを降ろしたり積んだりを繰り返している。軍港でベトナム軍への搬入と物資補給を同時に行っているのだろう。
「あれをベトナム軍がつかうのね~」
港には十五機程のレクティスが並んでいる。どれもユニットはスタンダードだが緑色の迷彩色で塗装されていた。
「ベトナム軍の使用機はあの色にと指示があったんですよ」
声の方を見るとアオイさんが資料片手に立っていた。
「アオイさんは作業中ですか?」
「一段落着いたとこです。ちなみにスカイキャリアーとウォンバットも深緑のカラーリングなんですよ?」
「緑系で統一してるんですね」
「そうですね、密林地帯が多いですからそっちの方が都合がいいんだと思います」
極地対応というやつだろう。たぶん国の力を示したいなどいろいろな理由でカラーリングは変わるものだが、ここは実用的な考えらしい。
「お暇でしたら格納庫も見ていきます? 今皆さんの機体も整備中ですけど」
「あ、じゃあ暇だしいいですか?」
「はい!」
アオイさんは嬉しそうに微笑みながら返事をしてくれた。
「俺が乗ってたのは今フレーム状態なんですね」
格納庫にやってきて一番に気になったのはやはり自分の乗っていた現状の愛機の状況だ。その機体は今ユニットがすべて外され内部がむき出しのフレーム状態でフルメンテを受けていた。
「はい、スカイユニットは摩耗が早い欠点もありますし。滝田機を蹴り飛ばした時に足の装甲も歪んでしまいましたから」
「すみません」
俺はそっと目を反らした。絡んできたアイツが悪いのだ……
「バラットさんはゲームでもこの子に乗ってたんですか?」
「初期は乗ってましたよ、癖もないしいろんな装備が試せて楽しい機体でした」
「やっぱり熟練度が全然違うんですね、すごいです!」
実のところ愛機は全く別の機体ではあった。戦闘スタイルが固まってきてレクティスではついてこれなくなってしまったこと、そしてアイツと出会ったことが俺のすべてを変えていったのだ。
「スタンダードに戻すんですか?」
「いえ、一応次の作戦の概要は決まっておりまして。それに合わせて換装いたします」
「ゲームだと整備員に依頼してすぐに装備を換装してもらっていたのでこういうフルメンテは新鮮で見てて楽しいですね」
「ちなみに使える武器のリストありますけど見ます? あらかじめ言っていただけるとこちらもやりやすいですし」
「みたいです!」
そう言うとアオイはパッドを差し出してくれた。そこにはドロイド用の装備が詳細と共に記入されていた。
「アオイさん、これって?」
見ている時に一番下にゲームでも見たことの無い武器を見かけた。
「あ、これはですね。こっちです」
そう言うとアオイは手招きをしながら奥へと歩いて行った。
「竜すらも薙ぎ払う斬撃。そういう思いを込められて作られた斬撃武装、辰薙一式」
そう紹介された武器、それはドロイド用の大きさの刀であった。正直見惚れるほど綺麗な刀身で中に何か織り込まれているようで稲妻のようなサイバネティックな光が走っていた。
「この武器は試作品なんですが、科学技術、そして魔術と錬金術を組み合わせて鍛え上げたアルケミーアームズです」
「聞いたことない武器ですね。性能は?」
「刀匠の技術と魔術により強度、切断力を強化。そして錬金術により対マナ武装術式が施されています」
「対マナってなんだろう?」
「簡単に言うと魔法を切り裂き、撃ち消すという感じですね。マナによる身体強化などにも有効とのことです」
おそらくゲームによく出てくる敵の魔法を撃ち消す対抗魔法ディスペルのような力のある刀ということなのだろう。
「今後こういう武器が増えていくの?」
「武器以外にも今、機体に付与した新型やユニットも製造されています。ザラタンには現状これしかないですけど」
「製造に時間も手間もかかるでしょうしね。ちなみにこれは使っても?」
アオイはにっと笑ってみせた。
「もちろんです! これが必要と感じるのであればバラット機の装備編成に組み込みますよ?」
「ならば使いましょう!」
「了解いたしました!」
実際さっき魔法というものを目撃したばかりだ。さらにアニメやゲームみたいな理不尽なことができるなら対抗策は用意するべきだろう。
「では、私は機体の整備に戻りますね!」
「はい、ありがとうございました」
アオイは笑顔で敬礼して走って行った。
「タツナギかぁ」
俺はその刀の刀身を眺める、やはりゲーマーなのだろう。こういうレアな新装備を見ると欲しくなるし使いたくなってわくわくしてしまう自分が居る。
「バラットさん、ここに居たんですね」
声の方を見るとティアさんがエミリアと一緒にやってきた。
「さんは別に要らないですよ、同い年なんですし」
ニコッと微笑んだティアはエミリアを見る。俺も何だろうと思ってエミリアを見る、すると。
「バラット、サン! タスケテ、クレテ。アリガトゥゴザイマス!」
「エミリアさん言葉がわかるんですか?」
「いえ、バラットにお礼が言いたいって言ってたので簡単な言葉だけ教えてあげただけです」
「でもすぐに使えるのはすごいですね」
「元々エルフ族は知識欲が強く勉強熱心ですから」
「なるほど、でも俺の方こそさっき助けてもらいましたからね。魔法凄かったです」
ティアがそのことを通訳すると、エミリアは照れくさそうに微笑んでいた。
「せっかくですので少しお話ししましょう。エミリアに日本語を教えるのも兼ねて」
「いいですね、丁度暇してたとこです」
そうして俺達は場所を変えて雑談を楽しむのであった。
ザラタンへ帰ると昨日と同じ会議室に呼ばれ、そこにはレイカさんが待っていた。事情はすでにティアから報告済みらしい。
「彼女が例のダークエルフさんね、お名前は?」
そういえば聞いてなかったなぁ。
「彼女はノール、ダークエルフ族の姫様の近衛だったそうです」
紹介されるとノールはお辞儀をして見せた。雰囲気でなんとなく状況を把握してるらしい。
「それにしてもいざという時のジャベリンとドローン役に立ってよかったわ~」
「物騒な保険に助けられました!」
「ティア、とりあえず彼女の目的と状況を説明してもらえる?」
レイカさん、急に話を切り替えてきてちょっと困る。
「ノールさん達は私達の時みたいに集団でこちらに転移してきたようでその際お姫様達はヨハネに連れていかれ、周囲の調査をしていた彼女だけが難を逃れたらしいです」
「じゃあ救出者にダークエルフ達も加える感じですか?」
「そうね、彼女達も被害者だし助けるなら一緒に助けましょうか」
「それは賛成なのですが拠点の場所や状況、作戦はもう準備できているのですか?」
「ある程度の場所は特定できてるわ。今詳細をコリブリとタランチュラで集めてる途中だから作戦とかはちょっと待ってね」
コリブリ、タランチュラ。これは情報収取に使われる小型ドローンの名称でコリブリは小型飛行モデル、タランチュラは多脚型陸上モデルで高性能である程度の自立稼働AIも搭載されている高級品だ。
「とりあえず、今は皆休んでて。作戦が決まったら改めて集まってもらうからそのつもりで居てね、じゃあ解散!」
俺達は買ってきた荷物を持ち自分の部屋へと戻った。正直、部屋に戻ったところで特にやることも無いのだが。
「いつもはゲームばっかだったもんなぁ」
荷物を置きそのままベッドに倒れ込む。いつも一日ゲーム世界で戦っていたからこう何もない環境は久しぶりだった。
「ちょっと探検してきますかね」
せっかくだしザラタンを回っていろいろ見てこようとふと思った。まずは甲板に上がってみる、広い甲板にはクレーンがあり複数のコンテナを降ろしたり積んだりを繰り返している。軍港でベトナム軍への搬入と物資補給を同時に行っているのだろう。
「あれをベトナム軍がつかうのね~」
港には十五機程のレクティスが並んでいる。どれもユニットはスタンダードだが緑色の迷彩色で塗装されていた。
「ベトナム軍の使用機はあの色にと指示があったんですよ」
声の方を見るとアオイさんが資料片手に立っていた。
「アオイさんは作業中ですか?」
「一段落着いたとこです。ちなみにスカイキャリアーとウォンバットも深緑のカラーリングなんですよ?」
「緑系で統一してるんですね」
「そうですね、密林地帯が多いですからそっちの方が都合がいいんだと思います」
極地対応というやつだろう。たぶん国の力を示したいなどいろいろな理由でカラーリングは変わるものだが、ここは実用的な考えらしい。
「お暇でしたら格納庫も見ていきます? 今皆さんの機体も整備中ですけど」
「あ、じゃあ暇だしいいですか?」
「はい!」
アオイさんは嬉しそうに微笑みながら返事をしてくれた。
「俺が乗ってたのは今フレーム状態なんですね」
格納庫にやってきて一番に気になったのはやはり自分の乗っていた現状の愛機の状況だ。その機体は今ユニットがすべて外され内部がむき出しのフレーム状態でフルメンテを受けていた。
「はい、スカイユニットは摩耗が早い欠点もありますし。滝田機を蹴り飛ばした時に足の装甲も歪んでしまいましたから」
「すみません」
俺はそっと目を反らした。絡んできたアイツが悪いのだ……
「バラットさんはゲームでもこの子に乗ってたんですか?」
「初期は乗ってましたよ、癖もないしいろんな装備が試せて楽しい機体でした」
「やっぱり熟練度が全然違うんですね、すごいです!」
実のところ愛機は全く別の機体ではあった。戦闘スタイルが固まってきてレクティスではついてこれなくなってしまったこと、そしてアイツと出会ったことが俺のすべてを変えていったのだ。
「スタンダードに戻すんですか?」
「いえ、一応次の作戦の概要は決まっておりまして。それに合わせて換装いたします」
「ゲームだと整備員に依頼してすぐに装備を換装してもらっていたのでこういうフルメンテは新鮮で見てて楽しいですね」
「ちなみに使える武器のリストありますけど見ます? あらかじめ言っていただけるとこちらもやりやすいですし」
「みたいです!」
そう言うとアオイはパッドを差し出してくれた。そこにはドロイド用の装備が詳細と共に記入されていた。
「アオイさん、これって?」
見ている時に一番下にゲームでも見たことの無い武器を見かけた。
「あ、これはですね。こっちです」
そう言うとアオイは手招きをしながら奥へと歩いて行った。
「竜すらも薙ぎ払う斬撃。そういう思いを込められて作られた斬撃武装、辰薙一式」
そう紹介された武器、それはドロイド用の大きさの刀であった。正直見惚れるほど綺麗な刀身で中に何か織り込まれているようで稲妻のようなサイバネティックな光が走っていた。
「この武器は試作品なんですが、科学技術、そして魔術と錬金術を組み合わせて鍛え上げたアルケミーアームズです」
「聞いたことない武器ですね。性能は?」
「刀匠の技術と魔術により強度、切断力を強化。そして錬金術により対マナ武装術式が施されています」
「対マナってなんだろう?」
「簡単に言うと魔法を切り裂き、撃ち消すという感じですね。マナによる身体強化などにも有効とのことです」
おそらくゲームによく出てくる敵の魔法を撃ち消す対抗魔法ディスペルのような力のある刀ということなのだろう。
「今後こういう武器が増えていくの?」
「武器以外にも今、機体に付与した新型やユニットも製造されています。ザラタンには現状これしかないですけど」
「製造に時間も手間もかかるでしょうしね。ちなみにこれは使っても?」
アオイはにっと笑ってみせた。
「もちろんです! これが必要と感じるのであればバラット機の装備編成に組み込みますよ?」
「ならば使いましょう!」
「了解いたしました!」
実際さっき魔法というものを目撃したばかりだ。さらにアニメやゲームみたいな理不尽なことができるなら対抗策は用意するべきだろう。
「では、私は機体の整備に戻りますね!」
「はい、ありがとうございました」
アオイは笑顔で敬礼して走って行った。
「タツナギかぁ」
俺はその刀の刀身を眺める、やはりゲーマーなのだろう。こういうレアな新装備を見ると欲しくなるし使いたくなってわくわくしてしまう自分が居る。
「バラットさん、ここに居たんですね」
声の方を見るとティアさんがエミリアと一緒にやってきた。
「さんは別に要らないですよ、同い年なんですし」
ニコッと微笑んだティアはエミリアを見る。俺も何だろうと思ってエミリアを見る、すると。
「バラット、サン! タスケテ、クレテ。アリガトゥゴザイマス!」
「エミリアさん言葉がわかるんですか?」
「いえ、バラットにお礼が言いたいって言ってたので簡単な言葉だけ教えてあげただけです」
「でもすぐに使えるのはすごいですね」
「元々エルフ族は知識欲が強く勉強熱心ですから」
「なるほど、でも俺の方こそさっき助けてもらいましたからね。魔法凄かったです」
ティアがそのことを通訳すると、エミリアは照れくさそうに微笑んでいた。
「せっかくですので少しお話ししましょう。エミリアに日本語を教えるのも兼ねて」
「いいですね、丁度暇してたとこです」
そうして俺達は場所を変えて雑談を楽しむのであった。
応援ありがとうございます!
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